フォトセッションより。発表会に集まったコーエー、およびソフトバンクグループの関係者 |
(株)コーエーとソフトバンクBB(株)、ビー・ビー・サーブ(株)は13日、東京・虎ノ門のホテルオークラにプレス関係者やアナリストを集め、2006年春に販売・サービス開始を予定しているパソコン用多人数参加型オンラインアクションゲーム『真・三國無双BB(仮称)』に向けた業務提携を発表した。真・三國無双BBは、BBサーブがコーエーに技術提供を行なってコーエーが開発し、オンラインプレイはソフトバンクBBのISP(インターネットサービスプロバイダー)事業“Yahoo! BB”の会員限定で提供される(オフラインプレイも可能)。価格やオンラインプレイのサービス料金などは現時点で未定。
「もう言い訳はできない。どのオンラインゲームにも
勝るクオリティーのゲームを開発する」
発表会には、コーエーの代表取締役会長の襟川恵子氏、代表取締役社長の小松清志氏、ネットワークゲーム担当執行役員の松原健二氏、ソフトバンク・グループ代表の孫 正義氏、ビービー・サーブの代表取締役の孫 泰蔵(そんたいぞう)氏らが列席し、業務提携の背景やそれぞれの役割、メリットなどを説明した。
コーエーの代表取締役会長の襟川恵子氏 |
最初にコーエーの襟川氏が、「昔から孫ちゃんと呼んでいたが、ソフトバンクの孫氏とはいつも新しいビジネスにチャレンジしてきた。(孫氏とは)20年来の付き合いがあるが、その弟さんであるBBサーブの孫 泰蔵社長が“信長シリーズ”の大ファンで、ぜひ共同でオンラインゲーム事業を行ないたいという夢のある話をうかがっていた。アクションRPGのオンライン化には高い技術力が必要になるので、今回の話は大変ありがたい。また、(コーエーの)松原は孫 泰蔵氏の大学の先輩にも当たるので、先輩として恥ずかしくない仕事をしてもらいたい」と挨拶し、最後に「今回の提携をテストケース、ケーススタディーとして、全世界に向けた(ゲーム)ビジネスにしていきたい」と抱負を語った。
3社協業のスキーム |
ソフトバンク・グループ代表の孫 正義氏 |
襟川氏からマイクを渡された孫 正義氏は、「今回、世界初のオンラインアクションゲームを(Yahoo! BBで)独占的にサービスできるというのは、会社同士の人的なつながりもさることながら、技術的な裏づけがあるからこそ。従来のオンラインゲームはMMORPG(多人数参加型ロールプレイングゲーム)やテーブルゲームばかりで、ボタンをクリックしたら瞬間的に刀を振り下ろすようなアクションゲームとは程遠かった。こうしたすばやいリアクションを実現するためには、既存のインターネット環境では難しい。ナローバンド(アナログモデム接続などの低速回線)とブロードバンドが混ざっていたり、バックボーンをさまざまなISPに分配している雑多な回線では、どうしても150ms(ミリ秒)以上の計算できないディレイ(遅延)が生じてしまう。それに対して、アクションゲームの爽快感を出すには50ms程度まで、というのが技術的な要求スペック。Yahoo! BBは、バックボーンをすべてIP(インターネット・プロトコル)技術で構築し、他社への(回線の)卸売りも行なっていない。そのため、50msのディレイでユーザーのアクションに合わせて画面上で長刀が動くという環境を実現できる」「現在約450万のユーザーを持ち、従来から述べている“面を取って深掘りするという事業戦略にのっとったスキームだ。また、国内で1500店舗を突破したネットカフェ事業も、カフェでゲームを体験して自宅に帰って続きをするというオンラインゲームのスタイルを展開する強みとなっている。このメニューに真・三國無双が加わるのは大きい」と、今回の新事業が同社のインターネット事業の追い風になることをアピールした。
各社の役割 |
ビービー・サーブの代表取締役の孫 泰蔵氏 |
続いて孫 泰蔵氏がBBサーブの役割について、「企画参加と資本投資を行なう。DVD-ROMで供給し、単体(シングルプレイ)でも楽しめ、さらにオンラインでは多人数参加でさらに楽しいという要素を持たせて、シングルプレイからオンラインマルチプレイへと面白さをシームレスにつないでいくのが目標。今回のプロジェクトに向けて新チーム“#8(ナンバーエイト)”を発足した」と述べ、同社の支援体制を紹介した。
BBサーブのオンラインゲーム開発事業 | 本プロジェクトのために新たに結成された“#8”チームの役割 |
また、集まったアナリストに向けて同社のオンラインゲーム開発事業の戦略を
- 投資ターゲット
- Yahoo! BB独占/Yahoo! BB優先/BBサーブ独占のいずれかに該当することが参加の条件
- 企画参加
- ゲームの企画段階から積極的に参加する
- Yahoo! BB特典、BBサーブ特典を明確にゲーム仕様に反映する
- プロモーション/販売の両面から連携する
- 投資ポートフォリオ
- メジャータイトルのオンライン化/コアファンをカバーできるオンラインゲーム/まったく新しいコンセプトのオンラインゲームのいずれかに該当することが投資の条件
- タイトルポートフォリオを構成し、バランスのいい投資を行なう
- 事業シナジーの実現
- 同社が運営するゲーム情報サイト“4Gamer.net”/オンラインゲームポータルサイト“BB Games”との事業シナジー(協調効果)を実現する
と具体的に説明した。
コーエーのネットワークゲーム担当執行役員の松原健二氏 | コーエーの代表取締役社長の小松清志氏 |
最後にコーエーの小松社長が、「なぜ今提携なのか? なぜ今まで真・三國無双をパソコンに移植しなかったのか? という疑問が出てくるだろう。パソコンソフトは不正コピーや海賊版の横行で厳しい状況に立たされている。これに対抗する手段のひとつがオンラインゲームだ。アクションゲームのオンライン化は技術的に難しかったが、今回のソフトバンクとの提携で解決の糸口が見えた。インフラや技術面の支援も得られて、もはや言い訳はできない。3社が全力を持ってこのビジネスに当たっていくので、今すでに世界にあるどのオンラインゲームにも勝るクオリティーのゲームが実現できるだろう」と強い意気込み示して、締めくくった。
真・三國無双BBの開発コンセプト | ゲームシステム | キャラクターメイキング | ||
アイテムや武技の成長要素 | 軍団や都市の役割 | 少人数/多人数/大人数戦闘の規模と違い | ||
開発担当の松原氏が説明した“真・三國無双BB(仮称)の開発コンセプト |
説明会の後のQ&Aセッションでは、会場に集まったアナリストから経営/事業的な質問が多数飛んだが、ゲームの詳細や必要マシンのスペック、および投資規模や人員などの詳細については明らかにされなかった。唯一、「初年度の目標会員数は30万人、売上は40億円を想定している。これは従来の(コーエーの)オンラインゲームと比べても控えめな数字。ただし、2年後のリリースなので、状況に応じて変更するかもしれない」(コーエー・襟川氏)、「一般論として、オンラインゲームの開発には10億円程度あるいはそれ以上の資金が必要。開発の延べ人員は、1000人月かかるだろう」(松原氏)との回答が得られた。なお、同社広報担当者によると、プレイステーション2版の真・三國無双シリーズのオンライン対応については未定(現時点ではパソコン版としてのみ開発中)とのこと。