マイクロソフト、開発/設計/管理者向けカンファレンス“Microsoft Tech・Ed 2004 YOKOHAMA”を開催――ITの“複雑化”への対応を強化するマイクロソフト
2004年09月08日 23時24分更新
マイクロソフト(株)は7日、情報システム構築や開発プラットフォームの最新技術動向やシステムの運用、管理、展開の手法などに関するトピックスをソフトウェア開発者、システム管理者向けに提供するカンファレンス“Microsoft Tech・Ed 2004 YOKOHAMA”(以下Tech・Ed)を開幕、8日に基調講演を行なった。今回のTech・Ed初日となる7日は“Learning Day”と銘打たれ、既存技術、製品の基礎知識の強化やこれまでの流れのまとめなどを中心とした“復習”的な内容で、基調講演が行なわれた8日以降が“本編”といった構成。
マイクロソフト代表執行役社長兼米マイクロソフト社コーポレートバイスプレジデントのマイケル・ローディング氏 |
マイクロソフトの開発者向け製品とコミュニティー活動の連動 |
米マイクロソフト社コーポレートバイスプレジデントでサーバー&ツール・マーケティング担当のアンディ・リーズ氏 | 複雑化する情報システムに対応するためのマイクロソフトの解 |
次いで登壇した、基調講演のメインスピーカーである米マイクロソフト社コーポレートバイスプレジデントでサーバー&ツール・マーケティング担当のアンディ・リーズ(Andy Lees)氏が、“複雑化する情報システムへの挑戦”と題した講演を行なった。ここでは、実際に企業に求められるIT環境(アプリケーションやサービスの設計/開発、インフラ/サービス/セキュリティーの管理/運用)とそれに対する同社の解答という形で、今年から2005年にかけて登場する予定もしくは登場済みの最新製品や最新技術が、デモを交えて紹介された。
まず同氏は、問題に対応するための手法として、
- 問題を無視する(見なかったことにする、根本的な解決はなし)
- 新たに外部のサービスを使う、新たにリソースを投入する(コストがさらにかかる)
- ソフトウェアエンジニアリングで問題を取り除く
という極端な例を含む3つの方法を示した。同社としては、(1)や(2)のような手法ではなく、“ソフトウェアの複雑化を取り除いていく”ことに同社が取り組むことによって、(3)の手法が取れる環境を整えていくことを進めていくと述べた。そして、この“複雑化を取り除いた”環境の整備というのが、同社が繰り返し述べている“統合された技術革新”の向かうところであり、Windowsプラットフォームと.NET技術をベースとし、3本柱のインフラ技術からなる“Windows Server System”による運用や、“Microsoft Office System”やモバイルプラットフォーム“Windows Mobile”といったアプリケーション/クライアント、さらにはこれらを支える開発環境“Visual Studio”という一連の環境なのだという。
リーズ氏はまた、企業が改善を求めている情報システムの問題点として、
- コストの増大(特に既存システムの運用、管理)
- システムがダウンする可能性がある点
- ITバリューの低下(システム面の問題から活用できない、など)
の3点を挙げ、これらに対して同社は、
- “Dynamic Systems Initiative”の確立(分散システムの設計/展開/管理/運用を簡素化/自動化するソリューションを提供するための取り組み)
- “信頼できるコンピューティング”の提供(システムダウンのない環境、セキュリティー/プライバシーに対する対策)
- .NET技術の活用による新しいビジネスバリューの創出
といった解によって答えていくとした。
まず、(1)に関する取り組みとしては、運用/管理を考慮した設計/開発が可能な“Visual Studio”、運用管理に適したプラットフォーム“Windows Server”シリーズ、インテリジェントな運用管理が可能な『System Management Server』『Operation Manager』『System Center』といた管理/運用ツールの3つを核とした製品提供に取り組むという。また、(2)では、環境自体の抵抗力/更新性/品質/アクセスコントロールといった技術的な側面と、教育と普及/ポリシーに基づく運用/業界とのパートナーシップといった社会的な側面の両面に取り組むことでセキュリティーのレベルを向上させていくとした。
“Windows Server 2003 Service Pack 1”と64bit版Windows Server 2003の概要 |
IT管理者の頭を悩ませるもののひとつになってしまっている“迷惑メール”に対する取り組み |
このほか、セキュリティー対策製品としては、ファイアーウォールを含むネットワーク構造の構築/管理や、セキュリティーポリシーの適用/違反クライアントへの強制適用/隔離といった機能を統合したネットワークおよびセキュリティー管理サーバー『Internet Security&Acceleration Server 2004』、企業内からの機密漏えいを防ぐ『Windows Rights Management Services』などが紹介されている。
Visual Studio 2005。ウェブサービスの構築は従来バージョンに比べ大幅に作業が効率化されるという | チーム/グループによる開発を遠隔に勧めるためのツール群が強化されているのもVS2005の特徴 |
(3)に対する解のコアとなるポイントは、特に企業の情報システムにおける開発生産性の向上を促すという、次期統合開発環境『Visual Studio 2005』(開発コードネーム“Whidbay”、以下VS2005)と、次期データベース『SQL Server 2005』(開発コードネーム“Yukon”、以下SQL2005)の2製品と、.NET技術の拡大だとしている。VS2005とSQL2005の主な特徴として同氏は以下の点を挙げている。
- VS2005
- グループ開発のための統合化された開発環境
- シンプルかつセキュアーなサービス/アプリケーションの配置を実現
- モバイル向けの開発環境を整備
- SQL2005
- XMLネイティブサポート
- 高い可用性とセキュリティー能力、リアルタイムナビジネスインテリジェンス能力を持つ
- .NET、Visual Studioとのより密接な統合
.NET普及に向けた取り組み |
また、.NETの拡大に向けた取り組みとしては、W3CやIEEEなどの標準化団体、サンやIBMなどJAVAプラットフォーム陣営との強調による相互運用性の拡大にコミットしていくとしている。
2004年から“Longhorn”に至るまでの製品ロードマップ。大きな製品のリリース時期については特に変化がなく、“Longhorn”に関する言及はほぼ皆無という状況だった |
なお、講演の最後に紹介された今後の製品ロードマップについては、ここ最近同社が示してきているものから大きな変更はなく、次期Windows“Longhorn”の投入時期についても、これまで同様にスライド中では明確な時期の示されない“Future”のままとなっていた。講演の中でも“Longhorn”に関して言及はなく、来年2005年は、Windows Server 2003の64bit化、VS2005、SQL2005が大きな動きとなるようだ。