東京の上野公園内にある国立科学博物館において、特別展“テレビゲームとデジタル科学展”が17日から10月11日まで開催される。
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国立科学博物館(東京/上野公園) |
これは、テレビゲームを、情報処理技術の発展過程で科学者や技術者の遊び心から生まれた“楽しさ”の産物と位置付け、コンピューターとテレビゲームの歴史を中心として、デジタル科学技術の現在までの流れを追うとともに、未来への可能性を探るという試み。会場には世界初のプログラム内蔵式電子計算機『ENIAC』の主要パーツやパーソナルコンピューター『Apple I(アップルI)』などから最新のテレビゲームまで、国内外から貴重な“実物”が集められ多数展示されているのが特徴。テレビゲームが子供や社会に与える影響についての最新の研究なども紹介されている。
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米インテル社製CPU(i8080)を採用した1974年発売の『Altair 8800』(アルテア 8800) | | 展示されている『Apple I』の筐体には、開発者のスティーブ・ウォズニアック(Steve Wozniak)氏のサイン“Woz”が入っている |
また、会場全体をテレビゲーム空間に見立てた“ユビキタス・ゲーミング・プロジェクト”も公開する。これはユビキタスコンピューティング技術をエンタテイメント分野に応用した世界初の試みで、テレビ番組で知られている『デジタルモンスター』(デジモン)がプレイヤーをナビゲートする。
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アーケードゲーム機『PONG』のプロトタイプ |
開館時間は、7月17日から8月31日までが午前9時から午後6時まで、9月1日から10月11日までは、火/水/木曜日が午前9時から午後5時まで、金/土/日曜日と祝日が午前9時から午後6時まで。休館日は9月6日/13日/21日/27日、10月4日。入館料金は、一般/大学生が1300円、小/中/高校生が600円。
主催は、独立行政法人国立科学博物館、(株)東京放送、(株)読売広告社。特別協賛は、PlayStation2、東日本電信電話(株)。協賛は(株)バンダイ。後援は、文部科学省、総務省、経済産業省、(社)コンピュータエンターテインメント協会、特定非営利活動法人コンピュータエンターテインメントレーティング機構、(社)コンピュータソフトウェア著作権協会、TBSラジオ。特別協力は、独立行政法人情報通信研究機構、凸版印刷(株)。
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『Atari 2600』(VCS)の試作機 | | VCSの製品版。展示ケースのアクリル板に反射して逆さまに映っているのは米Atari(アタリ)社創設者でビデオゲームの父と呼ばれているノーラン・ブッシュネル(Nolan Bushnell)氏 |
9月22日には、シンポジウム“デジタルエンターテイメントの未来を語る ~もっと楽しい明日が見える~”が開催される予定。コンピューターゲームの最新の状況や取り組みをそれぞれの第一人者が紹介し、ゲームの未来から、ゲームの枠を超えた新しいインタラクティブメディアの可能性を展望する内容となっている。パネリストには、東京大学先端科学技術研究センター 特任教授の岩井俊雄氏、(株)ナムコ インキュベーションセンター コンダクターの岩谷徹氏、東京大学先端科学技術研究センター 教授の廣瀬通孝氏ほかが講師として招かれる。参加費は無料で、定員は150人(先着順)。ウェブサイトで受け付ける。
■コンピューターの歴史が分かる充実した展示内容
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産業技術史資料情報センター主幹の清水慶一氏。後ろにあるのは『ENIAC』のパーツの展示。本体は真空管を1万8000本を使い、全長約45m、重さ30トンにも達するという |
16日、開会に先駆けて行なわれたプレス向けの説明会では、今回の展示の監修などを手がけた産業技術史資料情報センター主幹の清水慶一氏が展示について解説した。
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日本の初期のアーケードゲーム機 | | これはアーケードに設置されたときの配色などをシミュレートするための実物の5分の1のサイズのモックアップ(模型) |
会場は、
- ZONE 1“電脳誕生~コンピュータの黎明期とテレビゲームの誕生”
- ZONE 2“テレビゲーム初めて物語”
- ZONE 3“テレビゲーム・クリエイティブ”
- ZONE 4“日本のテレビゲーム勃興期”
- ZONE 5“日本のテレビゲーム・ハード&ソフト”
- ZONE 6“テレビゲームの社会への影響”
- ZONE 7“エンターテインメント・ラボ”
- ZONE 8“パートナーズフィールド”
のようにゾーン(ZONE)別となっており、各ゾーンについて、歴史を学べるだけでなく、MITメディアラボで開発された“Ping Pong Plus(ピンポン・プラス)”や米CINEMATRIX Interactive Entertainment Systems社の集団でゲームが行なえるインタラクティブ・エンターテイメント・システムなど、最新技術を利用したエンタテイメントを体験して楽しめるようになっていることを紹介した。
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“Ping Pong Plus”は、センサーを備えた卓球台にプロジェクターで画像を投影し、状態に応じて面白い効果が表示されるもの | | CINEMATRIXの『DOG and CAT』は数十人が同時に参加できるインタラクティブゲーム。各自が片面が緑、もう片面が赤のバーを持ち、どちら側を見せるかで柵を上下させようとするが、数十人が協調しないと画面を左右に移動する犬から両端の猫を守れないようになっている |
| 東京大学先端科学技術研究センターの廣瀬通孝教授。手に持っているのは“ウォールストーン” |
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続いて“ユビキタス・ゲーミング・プロジェクト”について、東京大学先端科学技術研究センターの廣瀬通孝教授が説明を行なった。これはテレビゲームではなく、“ウォールストーン”と呼ばれる石のような形状のユビキタスコンピューターを利用する実世界ロールプレイングゲーム。ウォールストーンは“デジモン”の世界観に合わせて開発されたもので、傾けたり振ったりするインターフェースを採用しており、デジモンのイメージなどを表示するLEDディスプレーやイヤフォンなどコミュニケーションを行なうための機能を搭載する。情報通信研究機構(NICT)の駒場SVR(スケーラブル・バーチャル・リアリティ・プロジェクト)リサーチセンターと凸版印刷が、廣瀬教授を中心に開発したという。
■午後6時からの開会式には文部科学副大臣の小野晋也氏や総務大臣政務官の松本純氏も
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国立科学博物館長の佐々木正峰氏 |
16日の午後6時からは本館で開会式が開催された。主催者を代表して最初に挨拶に立った国立科学博物館長の佐々木正峰氏は、「テレビゲームはデジタル情報技術の研究過程で科学者や技術者の遊び心から生まれ、ITの開発と密接して発展し、世界中で最も身近な娯楽のひとつとして定着し、わが国の重要な産業として成長してきた」と説明し、今回の展覧会を「科学技術に対する興味や関心を高めることを目的として企画」したと紹介。「革新的な技術開発などが、利便性や経済性だけでなく、豊かな想像力と感性に支えられていることを改めて認識し、科学技術と社会、文化の関係などに考えていただく契機になれば」と述べた。
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文部科学副大臣の小野晋也氏 |
続いて文部科学副大臣の小野晋也氏が、目の前に展示されている恐竜の骨格標本を示しながら、映画『2001年宇宙の旅』を引き合いに出し、原始時代の類人猿が道具を手にし、投げ上げたこん棒が宇宙船に変わることに触れ、人類は使う道具によって進化してきたが、それだけではなく、道具をいかにより良く使うか、それを社会の中でどのように生かすかといったこととともに発展してきたと述べ、デジタル技術はまだ30年だが驚くほどの進化を遂げており、デジタル技術を人類の進歩の道具に使えるのか、それとも滅亡の道に進む道具として使われるのかが問われる時代となっており、目の前の恐竜の化石のようになるかならないかを問われているとした。
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総務大臣政務官の松本純氏 |
総務大臣政務官の松本純氏は、「わが国は世界で最も安いブロードバンド利用環境が実現されており、昨年12月には地上デジタル放送も開始した」ことから今後は「IT基盤を生かすことが重要となってくる」と述べ、具体的に目に見える形にするためにユビキタスネットワークの実現が重要であることから研究開発を開始していると紹介。研究開発の成果を応用したユビキタスゲームを例に挙げ、今後のゲームのあり方や、人とコンピューターの関係を考えるうえで大きな意味があると説明し、「ユビキタスネットワークとゲームのコラボレーションにより、高齢者などこれまでテレビゲームが苦手だった人でも楽しめる新しいゲームが日本から始まると期待している」と締めくくった。
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テープカットの様子 |
“テレビゲームとデジタル科学展”は、子供から大人までが十分楽しめる内容になっているが、コンピューター以前の計算機の歴史からパーソナルコンピューターの登場までの資料など、ふだんなかなか見られない貴重なものが多数展示されており、IT/ゲーム業界で仕事をしている人や、コンピューターの歴史に興味がある人には文句なしにお勧めできる展覧会と言っていいだろう。
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(株)ソニー・コンピュータエンタテインメントのオリジナルキャラクター“ピポサル”が“特別名誉博士”として、会場でパネラーやナビゲーターを務めるという |
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会場では展示に関連した各種の記念グッズなどを購入できる | | 真空管が並んでいるのが国立科学博物館らしいところ |