レッドハットがマイクロソフトの疑問に答える
まず、今回はマイクロソフトさんとの対談ということでお願いしたのですが、そもそもレッドハットさんにとって、マイクロソフトさんはライバルなのでしょうか。
我々としては、マイクロソフトさんを直接意識したマーケティング活動は行なっておりません。なぜかというと、まず、クライアントの世界からサーバの世界に上がっていったWindowsと、サーバの世界からクライアント機能を充実させてきたLinuxでは、素性が違いますし、操作性もだいぶ違うわけです。また、たとえば全社的に「Microsoft Exchange」を導入しているような場合、すぐにLinuxに移る方はいらっしゃらないと思います。そういう意味で、ライバルかどうかといいますと、お客様が求めるソリューション次第ですね。現在のところはむしろUNIXからの移行をターゲットにしています。
マイクロソフトさんは、Linuxにはいくつかの問題があることを指摘しています。まず1つ目に、Linuxは管理ツールが少ないため、運用コストが高くなり、結果としてTCOが高くなると、米IDCの調査をもとに主張されていますが、こういった指摘についてはどのようにお考えでしょうか。
(図1)Red Hat Enterprise Network Satelliteのイメージ。LAN内にパッチDBとシステム情報DBを持ち、インターネット側との通信を減らせるほか、システム情報を外部に出さないため高いセキュリティを保つことができる。 |
たとえばコンピュータ・アソシエイツの「Unicenter」や、BMCソフトウェアの「BMC PATROL」、ヒューレット・パッカードの「OpenView」など、UNIX上で実績があり、「Red Hat Linux」を監視対象にできる製品はすでにいくつもあります。マイクロソフトさんは次期製品で、OSプラットフォーム自体に管理機能を持たせることをお考えのようですが、データセンターには通常、WindowsだけでなくUNIXやLinuxもありまして、管理者の方はそれらを統一的に管理できるツールを利用されます。Windowsだけで完結した管理機能が受け入れられるのでしょうか。また、管理者の方は、まったく新しい技術をミッションクリティカルなシステムに導入しようとは通常あまりお考えにならないでしょう。我々の「Red Hat Enterprise Linux AS」も「Red Hat Linux 7.2」をベースに、IHV、ISVさんとも協力して信頼性のある状態で出荷しています。
管理機能としてはほかに、「Red Hat Enterprise Linux」に対するサービスとして、“Red Hat Enterprise Network”というパッチのダウンロードサービスがあります。先頃“Red Hat Enterprise Network Proxy/Satellite”というサービスを新たに開始しました。これは今までインターネット経由でレッドハットのサーバにシステム情報を送り、パッチをダウンロードしていたものを、LAN上で利用可能にするというものです。Proxyはパッチのデータベース(DB)をLAN内に設置するだけですが、Satelliteはシステム情報DBもLAN内に設置するというサービスです(図1)。これにより、インターネットに接続したくないサーバでもRed Hat Enterprise Networkのサービスを利用可能になりましたし、トラフィックも削減できます。
“Red Hat Enterprise Network”は、日本では今のところ、お客様のシステム情報をもとに必要なパッチをお届けするシステムがありますが、米国では簡単なコマンド実行機能やシステムのモニタリング機能を持つモジュールも提供されています(画面1、2)。Red Hat Enterprise Networkの管理機能は、500台のサーバを1人で管理できるというポリシーで開発しておりまして、こういった製品も今後提供したいと考えています。
画面1 Red Hat Enterprise Networkの管理ツールで表示したホスト情報 | 画面2 アプリケーションの稼働状況やレスポンスの遅延状況などを監視することもできる。 | |
Red Hat Enterprise Networkの管理ツール |
同じ調査では、Windowsのワークロードのほうが多いことを指摘していまして、これについてもマイクロソフトさんは、Linuxは必要十分な機能しか提供していないから、ROIが低いことの表われと指摘しています。これについてはどうお考えになりますか。
たとえば、Windows 2000の頃は、GUIなしでのインストールができなかったと記憶しています。Linuxでいえば、デーモンを立てれば立てるほど危険度は上がるわけですが、余計なプロセスを減らすのがWindowsの場合は逆に困難なわけです。結局、これもOSの設計思想がLinuxとは違うということでしょう。WindowsはGUIがあるおかげで簡単に設定できる人もいるわけですし、一方のLinuxは、自分で設定ファイルを書き換えるなど、ぎりぎりのリソースを最大限に活用できると考えることもできます。先ほどの管理ツールのお話にしても、管理をどのように行なうかという思想の違いや、OSの設計思想の違いがあると思います。