国際ユニヴァーサルデザイン協議会設立準備会(代表・山本卓眞氏、戸田一雄氏(※1))は30日、都内で記者会見を開催し、11月28日(予定)に“国際ユニヴァーサルデザイン協議会(International Association for Universal Design:IAUD)”を設立し、国内の企業(9月30日現在35社が参加)の業態を越えた“言語や年齢、不自由の有無に関わらず誰もが使いやすい製品や環境作り(=ユニヴァーサルデザイン、以下UD)”のためのガイドライン作りのための活動を開始することを発表した。協議会の総裁には寬仁親王殿下(ともひとしんのうでんか)が就任予定で、会見では設立の背景などを説明された。
※1 設立準備会 設立準備会 代表:富士通(株)名誉会長 山本卓眞氏、代表:松下電器産業(株)代表取締役副社長 戸田一雄氏、同 委員:積水ハウス(株)取締役常務執行役員 森本彰氏、委員:日産自動車(株)常務デザイン本部長 中村史郎氏、同 幹事:(株)日立製作所デザイン本部長 川口光男氏
「UDは障害者だけのものではない。
生まれてから死ぬまで、国籍や言語による不便をなく
誰もが快適に使えることを目指す」
総裁に就任予定の寬仁親王殿下と、山本卓眞氏(中央)、戸田一雄氏(右) |
国際ユニヴァーサルデザイン協議会は、1年前に横浜で開催された国際会議“国際ユニバーサルデザイン会議 2002”で、日本企業/日本人デザイナーの意識の高さや技術力などを受けて、より広く情報発信を行なうとともに、現在各社でばらばらに行なわれている取り組みの差異(例えば、蛇口のレバーを上げると水が出る/下げると水が出るなど)をなくしていくべく発足される任意団体。
活動内容は、
- テーマ研究
- UD技術やノウハウの蓄積、高度化、製品のUD評価、開発・設計・製造プロセスの指針作り、など
- 事業開発
- UD開発事業の推進、UDコンサルティング、住まいのトータルUDの研究、など
- 活動成果の発信
- ウェブサイト(http://www.iaud.net/)の運営、UDイベントの開催、出版、など
という3つを柱としている。具体的な活動内容は現在検討中とのことだが、11月28日に設立に伴う会合を行ない、2年に1回程度は国際会議/シンポジウムを開催したい、とのこと。
IAUDの組織図(案) |
会見で、森本氏は「従来は今の環境から“バリアをなくす、取り払う”という発想だったが、真のUDは最初からバリアを作らない、誰もが使いやすいデザインを最初から作っていく発想が重要。人が歳を重ねて、変わっていっても柔軟に対応できる必要がある。(森本氏が手がける)住宅はさまざまな部材を組み合わせて完成するが、ひとつひとつがばらばらのデザインでは、トータルでのUDが実現できない。これを統一化して組み合わせることが第一歩となるだろう」と述べた。
中村史郎氏(左)と、森本彰氏(右) |
寬仁親王殿下は、国際ユニヴァーサルデザイン協議会の総裁に就任するにあたって、「四半世紀前になるが、骨折した仲間のためにカナダからアウトリガー(補助具)付きのスキー板を輸入したことがある。これは制動(ブレーキ)の役目しかなかったが、日本のヤマハ(株)に依頼して、滑走も可能な日本独自のアウトリガーを作ってもらった。これは障害のある人だけでなく、初心者にも使いやすいだろうと思い作ってもらった。また、イギリスには『Touch Me』という、デザイン的にも優れた視覚障害者向けの目覚まし時計があり、今も使っている。UDというと、とかく障害者に使いやすく、という議論が出てくるがそうではない。我々が外国に放り出されて、文字も言葉もわからない状況になったとき、言葉や習慣の違いを越えて誰にでも使いやすいもの、幼児から高齢者まで、そして障害者にも快適に使えるものを考えることがUDである。ただ、何でもボタン1つで実現できるような便利さを追求するのは、また違うと思う。人が自立しようとする、その手助けになるべきだと考える。私自身は福祉とスポーツの立場から応援していくが、皆さんは自分自身のおかれた立場からUDを考えてほしい」とお話になった。
なお、協議会の表記について、“ユニバーサル”ではなく“ユニヴァーサル”としているのはなぜか、という記者からの質問に対して、寬仁親王殿下が「私が強く要望したもの。UDで言語の壁を越えたものを作ろうというのに、“ユニバーサル”と発音していたのでは外国人に通じない。少しでもネイティブの読みに近い表記として“ユニヴァーサル”を採用してもらった」とご説明された。