日本電気(株)(NEC)は30日、都内で記者会見を開催し、7月1日に営業開始するパソコンの開発/製造およびマーケティング/販売を行なう新会社“NECパーソナルプロダクツ株式会社”(NEC Personal Products,Ltd.)の役員、および会社概要について発表した。同時に、同社の掲げる経営理念と、それに基づくコンセプトモデルを多数展示し、それぞれ1~2年後の製品化を目指して開発していることを披露した。
代表取締役社長の片山 徹氏 | 取締役常務の高須英世氏と執行役員常務の増田博行氏 | マーケティング本部商品企画部長の小野寺忠司氏 |
発表された会社概要と役員一覧(敬称略)は以下のとおり。
- 商号
- NECパーソナルプロダクツ株式会社
- 本社
- 東京都大田区大森本町1丁目6番1号
- 資本金
- 150億円(NEC 100%出資)
- 売り上げ金額
- 4600億円(2003年度計画、ただし2003年4月~6月は2社の合計)
- 従業員数
- 2130人(2003年7月1日現在)
- 営業拠点数
- 35ヵ所
- 事業内容
- コンシューマー向けパソコンの企画・開発生産・販売・サポート
- ビジネス向けパソコンの開発生産
- ビジネス向け情報機器の販売
- ドットプリンター/テープストレージなど情報端末機器の開発生産
- および受託開発・生産
- 代表取締役社長
- 片山 徹(かたやまとおる)
- (NEC 執行役員常務兼任)
- 取締役常務
- 松本邦彦
- (経理財務関係担当)
- 取締役常務
- 高須英世
- (事業全般担当)
- 執行役員常務
- 由水憲治(よしみずけんじ)
- (コンシューマー向けパソコンのマーケティング/PC営業担当)
- 執行役員常務
- 増田博行
- (企業向けパソコンのマーケティング/パソコンの技術、開発、生産担当)
会見には、代表取締役社長の片山 徹氏、取締役常務の高須英世氏、執行役員常務の増田博行氏、マーケティング本部商品企画部長の小野寺忠司氏が出席し、従来パソコンの開発/製造を行なっていたエヌイーシーカスタムテクニカ(株)(NECカスタムテクニカ)と、販売/サポートを行なってきたエヌイーシーカスタマックス(株)(NECカスタマックス)の2社合併の背景などを説明した。
片山氏は、「2001年10月に、それまでの4社による開発/製造を統合してNECカスタムテクニカ、同じくマーケティングや販売を統合してNECカスタマックスを発足し、2社分業体制による事業責任の明確化と事業スピードの向上を図った。これがNECのパーソナル事業における“第一次構造改革”で、“カスタマ・イン(顧客至上主義)経営の実践”と位置づけられる。2002年4月からは、さらにこれを進めた“カスタマ・イン経営の強化”として、中国から完成品の調達を図る国際水平分業体制を確立し、2002年度下期には黒字化を果たした。2003年度は通期での黒字化、V字回復を目指して、市場の変化に迅速に対応するため、2社の合併を決めた。当初は2社分業の時点(2001年10月)で1社に集約する意見も出ていたが、まずは事業のスリム化による足場固めを優先し、黒字化のめどがついた時点で、今回の合併に至った」とNECパーソナルプロダクツ発足の背景を語った。
同社の経営理念は“人と社会に、最善の解を。(The Best Answer for the People & the Society)”で、ユーザーの立場/視点から、高い技術力に裏付けられた製品を、より使いやすくした形で商品やサービスとして提供する企業を目指す、としている。
L字型に開いて、片手で入力できる
新感覚のモバイルパソコン“マイクロPC”
超小型パソコン“マイクロPC”のモックアップ | マイクロPCの左側面 | |
折り畳んだ状態のマイクロPC。右側面を見ているところ | マイクロPCを構成する基板と液晶パネル。CPUや液晶サイズ、入力デバイスなどは今後変更される可能性がある |
その理念を具現化したコンセプトモデル(および開発中のパソコン用新技術/新素材)として、会見場では
- 超小型パソコン“マイクロPC”
- パソコン機能を取り込んだ液晶テレビ“Light PC TV”
- 立体映像&音場を実現するノートパソコン“3Dビュー&サウンドノート”
- リアルタイム音声翻訳機能を搭載した携帯端末“トラベル通訳端末”
- 1週間(40時間)の長寿命を目指す次世代バッテリー“燃料電池”
- 圧電ポンプにより薄型化を実現した水冷システム“薄型水冷モジュール”
- ケナフ繊維の添加により強度や耐熱性を向上した素材“強化バイオプラスチック”
およびNECが描く“近未来のパソコン環境”(模型)が参考出展された。
マイクロPCは、ノートパソコンをさらに縮小した本体にWindows XPを搭載し、パソコン用アプリケーションを持ち運べる小型パソコン。出展されたモデルは、10インチ程度の液晶ディスプレーと携帯電話のような片手操作可能な入力デバイス(90度回転して液晶ディスプレーの下に収納可能)を持つが、これはあくまでも組み合わせの一例であり、製品化の際には異なる場合もある。この製品の開発に当たっては、CPUコアとチップセットやグラフィックスアクセラレーターを1チップ化した統合型CPUの開発で現在協議しているという。製品化は今後1年以内を目標としている。
液晶テレビにパソコンの機能を取り込んだ“Light PC TV” | 立体映像&音場を実現するノートパソコン“3Dビュー&サウンドノート” |
Light PC TVは、電波環境による画質劣化を低減するゴーストリデューサー、デジタルノイズリダクション、3次元Y/C機能などを搭載、液晶ディスプレーに高輝度広視野角タイプを採用して、高画質を追求したテレビ機能付きパソコン。パソコンとしての機能は詳細が明らかにされていないが、同社では“液晶テレビの感覚で使える”“未開拓層にリーチ”とうたっており、パソコン初心者向け製品になると予想される。製品化目標時期は1年以内。
3Dビュー&サウンドノートは、液晶ディスプレーの前面に振動して音を発生するパネルを搭載した音響システム“SoundVu”をノートパソコン用に新開発し、3D立体音響と3D立体映像システムを組み合わせたもの。このために、ノート用にサイズを半分に縮小したエキサイター(駆動部)4基と、小型サブウーハーを新たに開発。展示機は、LaVie Cをベースに赤外線方式のワイヤレススピーカーシステムと裸眼立体視が可能な“3D液晶”を組み合わせていた。製品化目標時期は1年以内。
日本でマイクに話しかけるとリアルタイムに変換、英語で発音する“トラベル通訳端末”。写真は試作機だが、小型ノートパソコンより一回り以上小さい | “トラベル通訳端末”のデザインモックアップ。製品では首から提げられる程度の小さな本体になる |
トラベル通訳端末は、今回の展示の中で特に完成度が高いと思われるもので、キーボード付きの小型PDAに、音声認識/翻訳/音声合成(読み上げ)のエンジンを搭載し、ユーザーが内蔵マイクに向かってしゃべると、しゃべり終わった直後に翻訳結果を読み上げるリアルタイム性が特徴となっている。製品化に当たっては、単なる翻訳端末だけでなく、ホームサーバーにアクセスして、録画した映像などを外出先から閲覧できる機能も追加するとのこと。製品化の目標時期は今後1年以内。
近未来のパソコン環境では、「使いやすさを損なわず、最も小さいデバイスはペンサイズだろう」(開発担当者)というコンセプトで、携帯電話、プロジェクター、机にキートップを投写して指の動きをスキャンするバーチャルキーボードなどをペン立て状のベースユニットにまとめた“ペン型コンピュータ”などが展示された。こちらの製品化の時期は未定。
NECの考える近未来のパソコン環境のひとつ、“ペン型コンピュータ” | これも近未来パソコン環境。ブレスレットのような外観だが、撮像素子と記録媒体が内蔵されており、普段は手首にはめておき、旅先などで撮影して、家に帰ったら台座部分に乗せるとプレビューできるというもの |