マイクロソフト(株)は3日、長期ライセンス契約顧客およびプレスを対象としたイベント“Information Worker Day 2003”を開催し、今後の企業の生産性向上に向けた新コンセプト“インフォメーションワーカー”(※1)の説明、そしてこのコンセプトを実現するためのサービス内容として、Microsoft Officeの新バージョンである『Microsoft Office11』(開発コード名)の一部機能の紹介が行なわれた。
※1 マイクロソフトによると、“インフォメーションワーク”とは「人や情報、業務プロセスなどを相互につなげ、従業員の可能性を引き出し、企業の生産性と創造性を最大限に向上させる」ワークスタイルだという。
デモンストレーション前に壇上に上がるマイクロソフト代表取締役社長・阿多親市氏。プレス向けの質疑応答セッションでは、タブレットPCを使って熱心にメモを取っていた |
『Word 2003』で作成された届出書類のドキュメント。各項目にはXML Schemerが設定されている。入力した情報はXMLデータとして即時にデータベースに格納可能で、Word以外のアプリケーション上での再利用が非常に容易になる |
Excel、Word、Outlookについては、XML関連機能の強化が大きく進んでいる。たとえばExcelの場合、XML Schemer(をExcelのセルにドラッグ&ドロップすることで簡単に関連付けができるようになるなど、XMLプログラミングの手間が大幅に減じられている。マイクロソフトによると、これらのOfficeアプリケーションは「XMLデータベースのフロントエンドツールになる」ものと位置付けており、Officeアプリケーションで作成したドキュメントをXMLドキュメントとして扱うことにより、情報の共有や再利用、異なるアプリケーションやシステムから瞬時に必要な情報を取り出して活用するといった“情報の活用”が促進されるとしている。Outlookでは、グループ/部門内での情報共有機能が強化され、ファイルサーバー+グループ/部門ウェブサーバーを完全に統合し、XMLベースのデータをウェブ上で管理共有してグループ/部門の共有ワークスペースを瞬時に作る機能が加わるなど、情報の管理や共有の効率化とそれに伴う業務プロセスの効率化、生産性の向上などが図られている。
紙のノートの感覚でメモが取れる『One Note』。タブレットPCなどを利用した手書き入力の結果を即座にバックグラウンドでテキストデータ化する。そのため、手書き入力した部分を範囲選択してコピーし、他のアプリケーションにペーストすると、そこには通常のテキストデータがペーストされる。もちろん、通常のWordドキュメントに手書きでメモを挿入することも可能だ |
これらの情報を管理する上では、それぞれの情報の機密管理が重要となってくる。そこで、Office11には、機密情報の流出防止、情報へのアクセスや再利用を制限し、情報のセキュリティーを守る機能として、“Windows Rights Management Services”が実装される。従来のドキュメントファイルやファイルサーバーでは、ファイル自体またはディレクトリー自体にユーザー別にアクセス制限を設けるなどしてセキュリティーを保護していたが、“Windows Rights Management Services”では、「ファイルそのものへのロックという考え方から、ファイルに含まれる“情報”にロックを掛けるという考え方に」変わるという。具体的には、ユーザー認証にActive Directoryを用い、さらにWindows Server 2003に“Windows Rights Management Services”を組み込むことにより、Office11で作成したドキュメントに対して、メールによる転送、印刷やクリップボードへのコピー、スクリーンショットの禁止/許可、参照可能な有効期限の設定、ファイルの暗号化などが施される。
“Windows Rights Management Services”によるアクセス制限がかけられたドキュメントの閲覧や編集、情報の抽出にはOffice11の各アプリケーションが必須となり、これまでのバージョンのOfficeアプリケーションではアクセスできなくなるという。ただし、WindowsおよびInternet Explorerの追加コンポーネントとして“Windows Rights Management Services”クライアントが配布される予定となっており、アクセス権のあるドキュメントの閲覧はInternet Explorerを介して可能になる。他社製のRights Management Serviceとの信頼関係の樹立が可能で、“Windows Rights Management Services”アーキテクチャー以外との情報共有もできるようになる。また、.NET Passportの認証を利用したデータ共有機能も提供予定とのことだ。