9月18日から20日まで、『Linux Coference 2002』が開催され、Linuxのデスクトップ環境から組み込み、「コピーレフト」概念など、さまざまなセッションやスピーチが行なわれた。
かな漢字変換ソフト『Anthy』と、日本語入力モジュール『Utena(仮)』
まず、デスクトップ環境や業務アプリケーションに関するものをご紹介しよう。フリーのかな漢字変換システムや、医療事務を扱う『ORCAシステム』など、インターネットサーバ以外の用途でLinuxを利用するためのツールが紹介された。
デスクトップ環境のカンファレンスでは、独立行政法人 産業技術総合研究所が行なっている『未踏ソフトウェア創造事業』のプロジェクトとしてスタートした、かな漢字変換ソフト『Anthy』と、現在開発中の日本語入力モジュール『Utena(仮)』について、開発者の一人である田端悠介氏が紹介した。
『Anthy』デモのようす。右上にあるのがかな入力のフロントエンドアプリケーション。 |
『Anthy』がこれまでのかな漢字変換システムと大きく異なる点は、変換エンジンのコアがサーバではなくライブラリとして実装されている点にある。かな漢字変換サーバをほかのユーザー権限で動作させる必要がなく、各ユーザーの権限で動作するため、セキュリティやプライバシーに優れている。変換辞書はcannnadic。Emacs用のフロントエンドや各種アプリケーションから利用するためのライブラリなども用意されており、Linuxザウルスなどにも移植されている。
『Anthy』と『Utena』の開発は現在SourceForge.jpで行なわれている。現在の安定版は『Anthy-3200』。
KDEの新プロジェクト『Kroupware』
日本KDEユーザ会のM.Takeyama氏は、本業のシステム管理者という視点からLinuxのデスクトップ環境についての考えを述べ、KDEの新プロジェクトである『Kroupware』を紹介した。
Kroupwareプロジェクトの概要。メール送受信のプロトコルなどといった仕様が公開されている。 |
『Kroupware』は、クライアントサーバ型のグループウェア。サーバモジュールには『Kolab Server』という名称が与えられている。KDE側のクライアントはKmailとKorganizerを拡張したものを用意するほか、『Outlook』やPalmのHotSyncをサポートする予定だという。プロジェクトが開始されたのが9月10日ということで、現在のところArchitecuture paperが公開されているだけだが、将来が楽しみなプロジェクトのひとつである。
ORCAプロジェクト
日本医師会が中心になって進めているオープンソースの医療事務システム『ORCAシステム』については、(社)日本医師会総合政策研究機構の客員研究員である生越昌己氏がユーザー団体の立場から紹介した。
(社)日本医師会総合政策研究機構 客員研究員 生越昌己氏 |
『ORCAシステム』は『日医IT化宣言』に基づいてオープンソースプロジェクトとして開発されている。医療事務システムとしてこれまで利用されてきたシステムは、単純にデータ入力と印刷のためのシステムであり、データの互換性もなく、非常にコストのかかるものであった。『ORCAシステム』によって、ユーザーは低コストなシステムを利用可能になっただけでなく、マスターデータの更新の無料化、データ交換が容易になるといったメリットがある。一方、既存の医療業務システムベンダーにとっては、開発コストを削減することが可能になるというメリットがあるが、既存のバージョンアップによる需要が見込めなくなるなど、新しいビジネスモデルが求められることとなる。
OpenOffice.org日本ユーザー会
「.org Villege」には、『OpenOffice.org』に関するドキュメントの翻訳や普及活動を行なっている、OpenOffice.org日本ユーザー会が出展していた。現在『OpenOffice.org』で利用可能なテンプレートやクリップアートを募集、公開しており、より使いやすい環境のためにさまざまな活動を行なっているようだ。
OpenOffice.org日本ユーザー会の方々。『OpenOffice.org 1.0.1』のCD-ROM配布などを行なっていた。ちなみに、ユーザー会メーリングリストは、この5月に開設されたばかりだが、すでに参加者数は1800人を越えるという盛り上がりだ。 |
『和ジラ』
もじら組は、bugzilla-jpで報告されているバグなどに対処した独自ビルド『和ジラ』を展示していた。
もじら組のみなさん。 |
なお、もじら組は9月20日に『和ジラ 1.1』をリリースしている。『Mozilla 1.1』からの変更点は、DOM Inspectorの完全な国際化や、HTMLのA要素がURLの場合に、折り返されず横にスクロールしなければならなくなる問題の修正などのほか、サイドバーを別ウィンドウで表示する機能なども用意されているという。