日本エイ・エム・ディ(株)は31日、都内のホテルに技術者や報道関係者を集め“Developer Conference 2002 Summer”を開催した。“x86-64”と“HyperTransport”に関連したセッションが行なわれた。x86-64やHyperTransportに関しては、6月に台湾で開催された“Computex Taipei 2002”や7月に米国で開催された“Platform Conference”で明かした情報を踏襲したものだった。新しいものとしては、チップセットメーカー各社が紹介した自社のx86-64プロセッサー向けチップセットについての情報が目についた。
| “Developer Conference 2002 Summer”ロゴ |
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x86-64は32bitから64bitへの架け橋
午前中のセッションでは、日本AMDや米AMD社の講演者がx86-64プロセッサーの優位点やHyperTransport技術の概要を説明した。
日本AMD、CPGプロダクトマーケティング事業部の秋山氏は「64bitプロセッサーのパフォーマンスに対するデマンドは、これまでの予想よりも早くやってきそうな気配。AMDのx86-64プロセッサーなら、64bitのパフォーマンスが必要となったときすぐに利用できる」として、従来のx86(32bit)との互換性を持ちながら64bit命令を拡張して対応した、AMDのx86-64アーキテクチャーによるアプローチの“正しさ”をアピール。「AMDの64bitプロセッサーは32bitコンピューティングから64bitコンピューティングへの架け橋」と述べた。
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“Athlon based on Hammer Technology”の出荷量ロードマップ |
秋山氏によると、x86-64プロセッサーは、まず今年の第4四半期に“Athlon based on Hammer Technology”(※1)を出荷開始し、2003年前半にワークステーション/サーバー向けの『Opteron(オプティオン)』(※2)の出荷を開始する予定で、2004年末までに、Athlon based on Hammer Technology、Opteronを合わせて4000万個以上を出荷するとしている。
※1
x86-64アーキテクチャーを採用した、シングルプロセッシング向けプロセッサー。ブランド名は“Athlon”で、さらに“4”や“XP”といったようななんらかのサブブランドが付くのではないかと言われている。AMDの資料によっては“第8世代Athlon”と表記されている場合もある。“ClawHammer(クローハマー)”というコードネームで呼ばれていた。
※2
Opteronは最大8wayまでのマルチプロセッシングに対応したx86-64プロセッサー。“SledgeHammer(スレッジハマー)”というコードネームで呼ばれていた。
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“Athlon based on Hammer Technology” |
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『Opteron』 |
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米AMDのハワード・コーエン氏 |
x86-64プロセッサーの技術について解説した、米AMDのハワード・コーエン(Howard Cohen)氏によれば、x86-64アーキテクチャーにおいてメモリーコントローラーを外部(ノースブリッジ)でなく、プロセッサーコア内部に統合したことと、HyperTransportによるインターコネクト技術によって、マルチプロセッシングにおけるNUMA((Non-Uniform Memory Access)技術とSMP(Symmetric Multi Processor)技術のメリットを生かす“SUMO(Sufficiently Uniform Memory Organization)”を採用したという。
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x86-64プロセッサーの概要 |
NUMAは一部のハイエンドUNIXサーバーで利用されている技術で、拡張性とパフォーマンスに優れているが、OSやアプリケーションをNUMAシステム向けにカスタマイズする必要がある。一方のSMPでは、ソフトウェア側の負担は少ないが、共有するメモリーへのアクセスがボトルネックとなり、プロセッサーの数が増えるとパフォーマンスが上がりづらくなる。SUMOでは、ソフトウェア側からはSMPと同様で、フラットな物理メモリー空間を持つためNUMAのパフォーマンスをSMPの手軽さで得られるとしている。
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『Opteron』の4wayサーバーの概要。4つのOpteronを互いに接続しているのが毎秒6.4GBのバンド幅を持つHyperTransportだ |
さらにマルチプロセッシングの際に、プロセッサー同士がHyperTransportによって互いに直接(ノースブリッジを介さずに)接続する“Glueless Multiprocessing”によって、メモリーアクセスのバンド幅や容量、I/Oアクセスに関しても、プロセッサーが増えるにつれて増大するというメリットがあるという。
チップセットメーカー各社がx86-64への対応製品を披露
午後のセッションでは、独SuSE社やマイクロソフト アジア社がx86-64向け64bit OSへの取り組みを紹介したほか、チップセットメーカー5社が対応チップセットのロードマップなどを紹介した。
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デモスペースで日本AMDが展示していた、x86-64プロセッサーの動作デモ。SuSE Linux(64bit版)を動かしていた |
独SuSEでは『SuSE Linux』『SuSE Linux Enterprise』のポーティングを行なっており、Enterprise版については先頃発表したブラジルのConectiva社、米カルデラ社、ターボリナックス ジャパン(株)との4社協業によるビジネス向けLinux『United Linux』の64bit版をベースにしたものになるという。また64bit版でのアプリケーション検証も進めており、約2000のLinuxアプリケーションのポーティングし、ほぼ問題なく動作することを確認しているなどとしている。
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マイクロソフトの.NETサーバー製品の状況。大容量メモリーを要求するDatacenter ServerやEnterprise Serverの64bit版を用意する |
マイクロソフトは開発中のWindows .NET Server製品群の状況について説明した。現時点ではリリースのスケジュールや内容の詳細については明かせないということで、すでに製品版に近い“RC1”を24日にリリースしたことと、年内に最終出荷版をリリースする予定であることを示すにとどまった。
x86-64に意欲的なチップセットメーカー
カンファレンスの最後にはx86-64プロセッサー向けのチップセット戦略について、台湾VIA Technologies社、台湾Silicon Integrated Systems社(SiS)、台湾Acer Laboratories社(ALi)、カナダのATIテクノロジーズ社、米エヌヴィディア社がロードマップや製品の特徴について紹介した。それぞれの発表時間は短時間だったが、デスクトップ向け、モバイル向け、グラフィックスコア統合版など、積極的な製品展開が目立った。
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台湾VIA Technologiesのx86-64向けチップセット概要。『K8M400』はグラフィックスコア統合版 |
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台湾SiSのAthlon based on Hammer Technology向けチップセット概要。ノースブリッジ『SiS 760』は『SiS 301B』グラフィックスコアを内蔵する。2003年第1四半期に量産出荷予定 |
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台湾ALiのロードマップ。ALiもグラフィックスコア内蔵版と外付け版の2種類を予定している |
日本AMD広報部によると、同社のプロセッサーの機能を使ったソフトウェアの開発を行なう技術者や、パソコンメーカーのハードウェア技術者などを対象とした、今回のようなカンファレンスは、およそ四半期に1度の割合で開催(※3)しており、今回で11回目。定員は150人だったがそれを上回る多数の応募があったとしている。
※3
毎回テーマや対象が異なり、オープンな場合とクローズドな場合がある。今回は日本AMDのウェブサイトから申し込むことができる、オープンな開催だった。
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カナダのATIテクノロジーズはOpteron向けにグラフィックスコアを内蔵した『Radeon IGP 380』(デスクトップ)『Radeon IGP 380M』(モバイル)を投入するという |
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米NVIDIAもグラフィックスコア統合版と外付け版の2種類のチップセットを用意する。いずれも1チップの製品で、グラフィックスコアはGeForce4 MX相当になる |