“DVD+RWフォーマット”を策定・推進する業界団体“DVD+RWアライアンス”は10日、ドライブや家電製品、ソフトウェアメなどのメーカーを対象とした“DVD+RWアジアパシフィックセミナー”を開催、それに先立って、プレス向けのブリーフィングが実施された。今回のプレスブリーフィングでは、マイクロソフトの次期Windows“Longhorn”に標準搭載される“DVD+MRW”の技術解説、そして、DVD+RWフォーマットの発表時からうたわれていた“DVD+RWビデオレコーディングフォーマット(DVD+VR)”がパソコン環境でも使用できるようになることとそのデモンストレーションなどが行なわれている。
冒頭の挨拶とブリーフィングの司会進行を務めたソニー(株)の張間廣信氏。今回、ソニーからDVD+RW対応のビデオレコーダーに関する新たなアナウンスは特になかった |
冒頭の挨拶に続いて行なわれた技術解説では、これまでもたびたび紹介されてきたDVD+RW/+Rの基本的な技術の話に加えて、新たなトピックとして“DVD+MRW”についての紹介が行なわれた。DVD+MRWは、“Mt.Rainier(マウントレイニア)”と呼ばれる次世代パケットライト規格のDVD+RW版で、“CD-MRW”という名称でCD-RWドライブに搭載されてきている新機能だ。これまでのパケットライトとの大きな違いは、
- 従来のパケットライトでは、ライティングソフトが行なっていた欠陥管理(不良セクタの管理)をドライブ側が行なう
- 2KB単位でのデータやり取り
- バックグラウンドフォーマット
- 従来のDVD-ROMドライブでDVD+MRWのメディアを読む場合には、アドレス変換ドライバーが必要
となっているのだが、2および3についてはすでにDVD+RWフォーマットの中で実現されており、今回新たにドライブ側に実装されるのは1の部分ということになる。
“DVD+MRW”の技術解説を行うリコー(株)の高橋正悦氏(写真左)。次期Windowsでは“Mt.Rainier”のサポートが予定されており、DVD+MRWの動きもそれに連なるものである。写真右はDVD+MRWの互換性を示す表。DVD+MRW未対応のドライブで読むには別途デバイスドライバーが必要 |
ドライブ側が統一された規格の下でこれらの機能を内蔵することでOS側でのサポートが容易になり、これによって次期Windowsへのパケットライティング機能の組み込みが実現する、ということである。今回は規格の説明のみで実際のデモンストレーションは行なわれなかったが、従来、別途パケットライトソフトをインストールしなければ、CD-RWや書き換えタイプの記録型DVDはフロッピーやMOのような“ドラッグ&ドロップによる簡単なデータ記録”ができなかった。これがOS標準の機能としてサポートされるという意義は大きいだろう。
技術解説のセクションではこのほか、DVD+Rでの“マルチセッション記録(データ追記)”やDVD+VR(※1)の基本的な構造の解説が行なわれた。
※1 DVD+VRは、DVD-Videoの再生環境との再生互換性を保ったままでの追記や編集ができ、テープのビデオレコーダーのように“重ね書き録画”も可能となっているDVD+RWビデオレコーディングフォーマット(DVD+VR)については、ロイヤルフィリップスエレクトロニクスの藤本健文氏が解説。併せて、今後のDVD+RW市場の成長の数値目標も説明した(写真右)。パソコン市場では特に大きな成長を予測しているようだ |
デルコンピュータのトム・プラット氏。幹事会社中唯一の“パソコン本体専門”企業であるデルが、DVD+RWを選択した理由を説明 |
氏のスピーチをまとめると、記録型DVDが求められる理由については、
- ビデオ録画、HDDの大容量化やデータ自体の大型化など、大容量記録メディアへの要望がますます強くなっている
- パソコンと家電機器との融合(ビデオレコーダーなどの機器とパソコンの間でのデータの相互受け渡し)が進んでいる
という2点を挙げている。そこで、デルが考える“ユーザーが求める記録型DVD”像とは、
- 書き込み、書き換えともに、単一のフォーマットで扱える(ユーザーが使用するたびにフォーマットを選択する必要がなく、単純な操作性に結びつく)
- ビデオ録画とデータ記録に適した特徴を持っている(一般のDVDプレーヤーやDVD-ROMドライブで再生が可能な互換性を有している)
- パソコンで使用する際、フロッピーディスクのように簡単に扱える
とのことだ。そして、これらをの条件をすべて満たすのがDVD+RWであると述べ、次期Windowsが“DVD+MRW”を正式にサポートすることにより、DVD+RWを利用するパソコンユーザーのメリットはさらに高まり、パソコン本体メーカーであるデルにとっては最良の選択だとしている。
デモンストレーションでは
パソコン側の“DVD+VR”対応をアピール
ヤマハのDVD+RWビデオレコーダー『DRX-1』。1~6時間の録画モード、プログレッシブ・ビデオ出力を持つ。2002年9月より欧米にて発売を開始する予定だが、日本でのスケジュールは現在未定 |
DVD+VRに対応した初のDVD-Video作成ソフトとなるメディオストリーム『NeoDVD standerd v4.0』(日本での取り扱いは長瀬産業(株)) |
DVD+VRによるパソコン環境と民生用ビデオレコーダーの融合についてデモを行なったヤマハ(株)の近藤博氏。DVD+VRにより、異なる録画・編集環境間を行き来してもいつでも自由な録画や編集が可能で、DVDプレーヤーでの再生互換も保たれることを実演 |
プレスブリーフィング会場に隣接するホールには、DVD+RW関連のハードウェアやソフトウェア、メディアの展示スペースも設けられていた。こちらでは、ヤマハのDVD+RWドライブ(ピックアップなどの内部パーツを含め、すべて自社開発)、DVD+RWだけでなくDVD-RWの記録にも対応したソニー製のドライブ内部部品、プランネットによるDVD+RWレコーダーでの“タイムシフト再生”のデモンストレーション、デモにも使用されたメディオストリーム(日本でのローカライズ、販売は長瀬産業)やユーリードシステムズ、ロキシオ、インタービデオ、サイバーリンクのDVD+RWフォーマット対応製品の紹介などが行なわれた。
DVD+VRがパソコン環境で使用可能になるなど、DVD+RWアライアンスが目指すところはここに来てほぼ実現してきたわけだが、前述したように、今回デモに使用されたヤマハのレコーダーについても日本でのリリーススケジュールについては語られず、日本でのDVD+RWレコーダーのデビューはもう少し時間がかかりそうだ。デルのプラット氏が語ったように、ビデオ録画の分野ではパソコンと民生機の融合が注目されており、フォーマットの普及にはレコーダーの登場も不可欠だろう。パソコン側の環境が着々と整ってきているだけに、日本のユーザーとしては、今後の国内市場へのレコーダー投入の時期が気になるところだ。