日本アバイア(株)および伊藤忠テクノサイエンス(株)は28日、“2002 FIFA ワールドカップ”における世界最大級の音声/データ統合ネットワークについて報道関係者向けに説明を行なった。
左から、日本アバイア(株)代表取締役社長の鵜野正康氏、米アバイア社バイスプレジデントのPaul Myer(ポール・マイヤー)氏、同じく米アバイアのFIFA ワールドカップにおけるネットワーク構築プロジェクト責任者であるDoug Gardner(ダグ・ガードナー)氏、伊藤忠テクノサイエンス(株)e-ビジネス営業推進本部CRM営業推進部長の永田毅氏 |
米アバイア社は2001年6月7日付けで国際サッカー連盟(FIFA)と、2002 FIFA ワールドカップのオフィシャルパートナー契約を締結したと発表した。その後アバイアは“オフィシャル・コンバージェンス・コミュニケーション・プロバイダー”として、2002 FIFA ワールドカップにおける音声/データ統合ネットワークの設計、構築、導入を実施、24日付けでネットワーク構築が完了したと発表した。アバイアは大会期間中のネットワーク管理および運用も担当、伊藤忠テクノサイエンスはアバイアに協力し、日本側のネットワーク管理/運用をサポートするという。
2002 FIFA ワールドカップのために構築されたネットワークは、日韓両国のスタジアム20ヵ所、国際メディアセンター(IMC)2ヵ所、大会事務局本部2ヵ所を結び、試合のスケジューリングや各チームへの告知、選手および大会関係者の身分照会、試合結果の収集およびレポート、資材の在庫管理、宿泊や移動の予約確認、セキュリティーシステムのモニタリング管理などを提供する。日韓大会事務局や試合会場となる各スタジアムで働く関係者はもちろん、ボランティア4万人や報道関係者1万2000人も利用する世界最大規模の統合ネットワークとなっている。
2002 FIFA ワールドカップのネットワークで接続される拠点。大きく24拠点だが、日本国内のスタジアムのうち3ヵ所が、身分照会用の施設をスタジアムと別に設置しているため、正確には27ヵ所をネットワークで結んでいるという |
ネットワークには、FIFA ワールドカップとしては初めてVoIPを活用しており、ネットワーク機器1万台、アクセスポイントルーター200台、データネットワークスイッチ100台、IPコミュニケーションシステム20台、エンタープライズコミュニケーションサーバー22台などを利用、情報配線の距離は延べ5000kmに及ぶという。これらのネットワークインフラ上で、音声/データ統合通信アプリケーション『Avaya Enterprise Class IP Solutions』が動作し、身分照会&ボランティア管理、試合結果レポート、発券業務、資材在庫管理、コンテンツ管理といった各種ビジネスアプリケーションが稼動する仕組みとなっている。
ネットワーク概念図。この図は日本国内のものだが、韓国側も同様のネットワークが構築されている |
ネットワークの拠点となるIMCは、日本では横浜に、韓国ではソウルにそれぞれ設置されている。IMCにはそれぞれフェールオーバー機能を持たせており、一方のIMCで障害が起きた場合でも、もう一方のIMC側で2ヵ国分のネットワーク管理を行なえるようになっているという。また、IMCと各スタジアムはATMネットワークで接続されているが、ATMネットワークに障害が発生した場合のバックアップ用に公衆網とインターネット網も配備している。
さらに、今回の2002年大会では、FIFA ワールドカップ史上初めてワイヤレスLANを採用、これにより報道関係者は大会関連施設のどこにいてもノートパソコンなどを利用してインターネットへアクセスできる。例えば、スタジアムで試合を観戦しながら、テキストデータやデジタルカメラで撮影した画像データなどをインターネット経由で各地に送信できるようになっている。アバイアは、IMCや大会事務局などにワイヤレスLANアクセスポイントを設置するとともに、IMC内で関係者向けにワイヤレスLANカードを提供するという。
国際メディアセンターを紹介
説明会後には、横浜にある日本側のIMC“IMC YOKOHAMA”の施設見学会が行なわれた。IMCは、報道関係者が2002 FIFA ワールドカップを取材する際に利用するメインアクレディテーション(資格認定証)センター(MAC)、国際放送センター(IBC)、メインプレスセンター(MPC)の機能をすべて備えた統合型メディアセンター。前大会まではMPCとIBCは個別に設置されていたが、今大会では同施設内に隣接しており、プレス/放送関係者が自由に行き来できるようになっている。
2002 FIFA ワールドカップの国際メディアセンター(IMC)は、パシフィコ横浜の展示ホール内に設置されている。全ホールを使用しているので広い広い。なお、大会期間中の展示ホール周辺は、セキュリティーの関係上、一般入場が制限されるので気を付けましょう |
IMCに入るには、個別IDが振られた入館パスが必要 |
入館パスのIDをチェックしてもらい、ようやく施設ゲート内へ |
さらにIMC館内に入館する際、金属探知器およびX線荷物検査によるセキュリティーチェックを受ける |
いよいよIMC内に突入。こちらは席ごとにコンセントが用意されているプレス用ワーキングエリア。このような席が見渡す限り並んでいる。自由席で24時間いつでも利用可能。さらにこの奥には、席をリザーブできるプライベート作業ルームもある。なお、IMCは24日にオープンしており、写真に写っているのはお仕事中の各国プレスの皆さんだ |
IMC内はワイヤレスLAN完備。施設のいたるところにアバイアのワイヤレスLANアクセスポイントが設置されている |
こちらはコピー&FAXサービス。いずれもセルフサービスで、コピーは無料。FAXは有料で、ICカード対応の国内外用公衆電話を利用して送信する。IMC内にある公衆電話はすべてこのタイプ |
24時間利用できるインターネット閲覧用のノートパソコン。端末数は14台 |
日本各地のスタジアムにあるメディアセンター(SMC)と、韓国のIMCおよびSMCを高速ネットワークで結んだイントラネット端末。今大会用に開発されたシステムを塔載しており、各地の試合情報(チームオーダー表など)をリアルタイムで閲覧できる。端末数は46台 |
IMC内にあるアバイアのブース。ワイヤレスLANカードの販売やシステムサポートなどを行なう |
ネットワーク回線はIMCの床下を縦横無尽に這っている模様 |
FIFA ITチームによるサポートブース。まだ本番前なので、皆さん和やかにお仕事をされている |
Kioskではライセンシーグッズを販売。何だかうらやましいぞ |
IMC内に突如出現した癒し空間。この日本庭園は、2002年FIFAワールドカップ日本組織委員会(JAWOC)とホストブロードキャストサービセズ(HBS)の共同プロジェクトにより作られたリラクゼーションスペース。関係者の休憩エリアとしてのほか、放送中継ポイントとしても利用可能。日本らしい背景をバックに「はい、こちら日本から中継でお伝えします」とかやるわけでしょうか? |
庭園には茶室も用意されていて、実際に茶の湯を体験できるらしい |
なお総務省は、FIFA ワールドカップ期間中、高速衛星を利用した超大画面高精細画像のリアルタイム伝送実験“サテライトスタジアム”を6月1日~30日に実施する。同実験は、ワールドカップの試合のフィールド全体を、250インチの超大型スクリーン(横16×縦3m)に高精細ハイビジョン映像で映し出すというもので、決勝戦を含む11試合を中継する。映像はIMC内で報道関係者向けに公開するほか、総務省講堂やTEPIA(機械産業記念事業財団)にも同様に伝送し技術評価を行なうという。
サテライトスタジアムの概念図 |
IMC内に設置されたリアルタイム伝送実験“サテライトスタジアム”のデモ会場。巨大スクリーンが出番を待っている |