マイクロソフト(株)は22日、同社のナレッジマネージメントの現状や社内システムのインフラに関するポリシーについて説明するプレスブリーフィングを開催した。これは、各方面からの同社の社内システムに対する問い合わせに応えるため実施されたもの。
マイクロソフト社内のナレッジマネージメントについて説明した同社エンタープライズソリューション本部ナレッジソリューション部の小柳津篤部長 |
毎年6つの戦略を策定して実践
マイクロソフト社内では、ナレッジマネージメントの目標を、経営品質および企業価値を向上することとしている。企業の問題解決能力、商品開発能力、顧客対応能力を最大限に高めることが企業価値につながるとし、そのためのナレッジマネージメントの手段として、戦略、人/組織、業務プロセス、情報技術といった4点にフォーカスしているという。
具体的には、戦略として毎年6つの重点分野を策定し、人/組織面ではレビューに重点を置いて継続的な改善を指向している。業務プロセスはグローバル化/デジタル化を図り、紙ベースの作業を極力廃止することで人の仕事が変質するという。情報技術に関しては、Officeツールを統一し、メッセージングとデータベースの徹底活用を行なっている。
毎年策定されるという6つの戦略は、まずマイクロソフトのボードメンバーが方向性を決めた後、各戦略分野でさらに詳細な計画策定が行なわれる。'99年の戦略分野は“会社満足度の向上”“Windows in Business”“ナレッジマネジメント”“電子商取引”“ビジネスオペレーション”“著作権保護”で、これらに対し投資を行なったという。なお、2000年以降の戦略分野は社外秘のため未公表となっている。なお同社は、各戦略分野における成果を数値化するためスコアカードを採用、マーケット調査や戦術の進捗状況などをレビューしている。
同社の新会計年度は7月からスタートするため、毎年7月に世界中からマネージャークラスの社員など7000~8000人を集めてグローバルサミットを開催し、策定された6つの戦略分野の戦術に関する説明が行なわれる。社員はその後半年間は戦術を実践し、半年後に開かれるミッドイヤーレビューで、仕事の成果や問題点、改善点を報告/分析する。このミッドイヤーレビューを受けてトップ経営陣が翌年度の戦略方針を検討し、世界中のシニアマネージャーが全社的な方向性を具体化、翌年7月にグローバルサミットで戦術を社員に公開するというサイクルになっている。
社員個人の成果についても半年ごとにレビューが行なわれる。上司が部下を評価するだけでなく、部下も上司を評価し、その評価結果をさらに上の上司に提出する仕組みとなっている。これらのパフォーマンスレビューは、社員のモチベーションとパフォーマンスの最大化が狙いという。
弱いパスワードは強制リセット
マイクロソフト社内の情報管理は、インフォメーションテクノロジーグループ(ITG)が担当している。ITGのミッションのひとつとしてセキュリティーの管理強化があるが、ITGでは22のセキュリティー関連プロジェクトを実施しているという。全社的にRAS接続にSmartCardを導入するほか、ワイヤレスLANをすべて802.1xにするという。
また、ウイルス対策ツールを何にするか見直しを図っている。クライアントPC(社員のPC)用のウイルス対策ツールはコンピュータ・アソシエイツの『eTrust 6.0』を使用しているが、メールゲートウェイ用ツールを何にするか検討中という。
さらに、セキュリティー面で弱いパスワード(パスワードなし/スペース1個等)の排除も行なっている。ITGは社員のパスワードをチェックし、弱いパスワードの場合はリセットして強制的に難しいパスワードに変更するという。同社のパスワード規定には、最短で8文字、アルファベット大文字/小文字/数字/記号のうち3種類以上が入っていること、意味のある言葉が入っていないことといったさまざまな条件があり、さらに45日で有効期限が切れるため、社員はその都度新しいパスワードを設定しているという。
またITGは、同社主要製品のβ版をいち早く使用し、バグレポート作成を行なっている。β版の社内展開は“ドッグフード”と呼ばれ、現在Whistler Serverのβ版社内展開を実施しているという。
全世界の社内PCサーバーは、メーカーがコンパックコンピュータまたはデルコンピュータと決められているという。サーバーOSはWindows 2000(SP2)で、パッチがリリースされる場合、一般への公開と社内へのパッチ対応はほぼ同時期という。集中管理を徹底するため、ITGが規定したメーカー、機種、構成以外は認めず、規程に違反した場合はITGによる遠隔監視やバックアップサービスが受けられない。
クライアントPCについては、ITGのBest buy PCとして、デルコンピュータ、コンパックコンピュータ、東芝の3メーカーの製品を挙げている。この3社以外のメーカー製品を利用してもかまわないが、上記3社製品の場合は、マシントラブルが起きた場合、翌日に代わりのマシンまたは部品を持ってくるというサポートが受けられるようになっているという。
クライアントPCのソフトウェアは、OSがWindows XPで、OfficeツールがOffice XP、ウェブブラウザーがInternet Explorer 6.0、そしてウイルス対策ソフトがNorton AntiVirusかeTrustとなっている。ITGは社員がネットワークにログオンする際、ソフトウェア情報を取得しており、ウイルス対策ソフトがインストールされていない場合は警告、さらにはログオンを拒否する場合もあるという。
日本のマイクロソフト社内でのWindows XP使用率は、笹塚オフィスで30%、新宿オフィスで70%弱という。社員はメインマシンではWindows XPを利用しているが、1人で複数のマシンを利用している社員が多く、さらにサポート業務などでカスタマー環境を再現するためWindows XP以外のOSを使用しているマシンが数多く存在するので、マシン単位では100%にならないのだという。
ワールドワイドでハードやソフトの標準化と集中管理を行なうため、さまざまなものに規定があるマイクロソフトだが、例えばパスワード設定については、厳しい規定と共に“パスワードを覚えるコツ”なども提示されているらしい。