|
---|
“JGAS 2001” |
印刷機材団体協議会(※1)が主催する印刷機材の総合展示会“ジャパン グラフィック アーツショー(JGAS) 2001”が16日、東京・有明の東京国際展示場(東京ビッグサイト)で開幕した。JGAS2001では、国内・海外のメーカーおよび販売代理店500社が、3200小間の出展を行なう。開催期間は20日までの5日間。
※1 (社)日本印刷産業機械工業会、印刷機材輸入協議会、印刷インキ工業会、全日本印刷機材ディーラー協議会、製版機材協議会の5団体で構成する任意団体。
DTPの登場以降、印刷業全体にデジタル機器の導入なされてきた。CTP(※2)はその最たるものであり、この概念が印刷業界を大きく変えつつあるのは周知の通り。今回の展示会においても、各社のCTPに対する取り組みが注目された。
※2 Computer To Plate。PostScriptデータの原稿を、デジタルデータのまま直接アルミプレートに露光して、刷版を作成する。
CTPへの動き――ハイデルベルグ・ジャパン、三菱重工業
ハイデルベルグ・ジャパン(株)は、CTPレコーダー『Prosetter 74』および『Topsetter PF102』、カラーオンデマンド印刷機『Quickmaster DI Pro』などを展示した。これらは全て、日本では初公開だという。
|
---|
『Prosetter 74』黄色く見えるのは、感材への感光を防ぐためにイエローライトの下に置かれているから |
今回出展した『Prosetter 74』は、バイオレットレーザーによって刷版を行なうCTPレコーダー。405nm(ナノメートル)5nWのバイオレットレーザーダイオードによって、感材の露光を行なう。通常のサーマル方式(赤外線レーザーを使用)に比べてコストパフォーマンスが優れているという。ただし、バイオレットレーザー用の感材は、自然光では感光してしまうため、イエローライトの下で作業を行なわなければならない。
|
---|
現像した刷版 |
Prosetter 74では、1時間に最大16版の刷版を出力可能。ただし、プレート(刷版)の出し入れは手動で、また別途現像するための機器が必要になる。Prosetter 74の価格は1400万円で10月中に出荷を開始。
|
---|
『Topsetter PF102』最大100枚までのアルミプレートを自動供給できるカセットローダーとCTPレコーダー、現像工程を行なうオンラインプロセッサをセット |
Topsetter PF102は、サーマル方式のCTPレコーダー。Prosetter 74とは違って、システムを拡張すればアルミプレートの供給から露光、現像までを一括して行なえる。64チャンネルの赤外線レーザーを搭載しており、菊全判(720×1020mm)の刷版を1時間に20枚出力できる。また、主要な印刷機に対応したパンチングシステム(位置決め用の穴を空ける)も搭載する。Topsetter PF102のCTPレコーダー本体の価格は4500万円で11月に出荷を開始する。
|
---|
アルミプレートをカセットローダーにセット |
|
---|
完成した刷版はオフセット印刷機で印刷する。同社の『Speedmaster SM 102』は、菊全判を1時間に最大1万3000枚印刷可能 |
また、ハイデルベルグはカラーオンデマンド印刷機Quickmaster DI Proも出展した。
|
---|
『Quickmaster DI Pro』 |
Quickmaster DI Proは、パソコンからデータを入力するだけで印刷が行なえるカラーオンデマンド印刷機。操作は全て、装備するタッチパネル上で行なえるという。最大解像度1270dpiで、スクリーン線数200線までの印刷が可能。通常は4色印刷だが、5色、6色の追い刷りも行なえる。また、赤外線乾燥装置も装備する。
同製品はQuickmaster DIシリーズの第3世代。Quickmaster DIシリーズは1995年からこれまで、世界で1600台以上販売したという。
|
---|
ハイデルベルグのデジタルカメラバック『Colorcam』。『Hasselblad CW/EL』や『Mamiya 645/RZ』など、中判・大判カメラにフィルムマガジンの代わりとしてセットすることで、デジタルカメラとして使用する。最大解像度は3072×2048ピクセル(630万画素) |
|
---|
三菱重工業(株)の出展したオフセット印刷機『DAIYA 300』。搬送中および排紙時の用紙を吸引し、紙ずれやばたつきを防止する |
省スペース化と生産効率向上――東京機械製作所、小森コーポレーション
印刷機自体の省スペース化による紙の運搬作業の簡略化や、印刷の高速化による作業時間の短縮化によって、印刷にかかるトータルコストの削減に向かう動きもある。
|
---|
タワー型の輪転機『カラートップ 3100CMUD』。巨大な印刷機が並ぶ会場内においても、ひときわ巨大な展示物だった |
(株)東京機械製作所では、設置スペースの削減のためにタワー型の印刷ユニットを採用した、B縦半裁オフセット輪転機『カラートップ 3100CMUD』を展示、実演を行なっていた。本体サイズは奥行き17.3×高さ8.3mで、巻き取り紙幅の最大サイズは幅880mm。1分間に850枚、1時間に5万1000部の印刷・折丁が可能という。
一方、(株)小森コーポレーションでは、多品種・小ロット・リアルタイム生産向けの枚葉印刷機(※3)を数点展示していた。なお、印刷機に直接データを転送して印刷を行なえる、カラーオンデマンド印刷機も完成しているとのことだったが、未出品だった。
※3 特定のサイズに裁断してある紙を1枚ずつ印刷する印刷機。これに対してロール紙の状態から印刷・裁断・折丁までを一気に行なう印刷機のことを“輪転印刷機”(輪転機)という。枚葉印刷機は少部数印刷に、輪転印刷機は大部数印刷に向いている。
|
---|
汎用枚葉印刷機『LITHRONE 20』 |
『LITHRONE 20』は、菊4裁オフセット印刷機。2色機の『L-220』と4色機(6色まで対応)の『L-420』が用意されている。最小はハガキサイズ(100×148mm)から、最大菊4裁サイズ(360×520mm)まで対応しており、用紙は極薄紙からカートン紙、さらにプラスチックシートなどにも対応。パッケージ印刷、ラベル印刷、カード印刷、高級美術印刷、そのほか特殊印刷に最適化した汎用マシンだという。本体のサイズは幅1.9×奥行き5.5×高さ1.6mで、総重量は8トン。1時間に約1万3000枚の印刷が可能となっている。
|
---|
2階建ての『LITHRONE 40SP』。6色印刷が可能 |
また『LITHRONE 40SP』は、2階建てのデザインが特徴的な菊全判/四六全判多色両面オフセット印刷機。“輪転機に近い生産性と枚葉機の持つ高品質と柔軟性を兼ね備える”という。最大紙サイズは720×1030mm。約本体サイズは幅4.1×奥行き9.8×高さ2.9m、総重量は56.7トン。1時間に、約1万3000枚の印刷が可能となっている。
版材メーカーの動向――富士写真フイルム、コダック ポリクローム グラフィックス
すべての印刷にCTPが用いられるようになれば、これまで製版に用いていたフィルムは不要になる。では、これまで製版用フィルムなどの版材を提供していたメーカーはこの傾向をどう考えているのだろうか。
富士写真フイルム(株)では、入稿から印刷まで一環した色管理が行なえるという同社独自のシステム“FUJIFILM Color Management System”(FFCMS)に対応した機器を出展していた。フィルムレスの動向について尋ねたところ、「確かにCTPによってフィルムが用いられるケースは減少していくだろうが、完全になくなるまでには、まだ時間がある。富士フイルムでは、印刷の全行程におけるカラーマネジメントを行ない、生産効率の向上や高品質印刷を実現する。フィルムだけでなく品質の高いプレート版材を提供し、トータルな印刷環境におけるサポートを行なっていきたい」という答えが返ってきた。
コダック ポリクローム グラフィックス(株)では、PS版(※4)と同じ現像液で処理できるサーマルCTPプレート『コダック ポリクローム エクスサーモ プレート』を出展していた。
※4 現在のオフセット印刷で一般的に用いられているプレート(刷版)。CTPではレーザーを用いて版下を生成するのに対して、PS版は、原稿をフィルムに出力したものをプレートに重ねて、露光させることによって生成する
|
---|
『コダック ポリクローム エクスサーモ プレート』の現像の実演 |
担当者の話では、「日本でもCTPの占める割合は7%を超えた。これまで通りフィルムも提供していくが、全社的にもCTP用の版材へと移行しつつある。日本は非常に印刷技術のレベルが高く、版材の品質への要求もまた高い。そうした要求に応えられるような版材を提供していきたい」ということだった。
色再現性を追求するカラープリンター――日本ヒューレット・パッカード(株)
印刷機だけでなく、色校正などに用いられるカラープリンターなども、会場内で注目される製品となっていた。中でも日本ヒューレット・パッカード(株)のインクジェットプリンターは、会場内のあちこちで見かけることができた。
|
---|
『hp designjet 50ps』 |
日本ヒューレット・パッカードは、A3ノビサイズまでの出力が可能なインクジェットプリンタ『hp designjet』シリーズの新製品として、9月に発表した『hp designjet 50ps』を出品していた。2001年末に発売するという同製品は、CMYKに“ライトシアン”と“ライトマゼンタ”を加えた6色インクを採用し、解像度2400dpiの印刷が可能。ハイデルベルグ社製のハイエンドソフトウェアRIPを搭載しているほか、実際に印刷したカラーサンプルをカラーセンサーで測定して、内部のカラーマップを補正することによって、温度や湿度の変化、プリントヘッドの使用状況によるカラーの“ぶれ”を最小限に止める機能“オートカラーキャリブレーション”を備えている。さらにオフセット印刷用インクシミュレーションなどを装備しているため、オフセット印刷の色校正が可能だという。本体サイズは幅723×奥行き560×高さ280mmで、重さは17.5kg(用紙トレイ含む)。価格は39万8000円となっている。
会場内で見かけたもの
そのほか、会場で見かけたものなどを以下に列挙する。
カーディナル(株)
|
---|
カーディナル(株)は、プラスチックカードにカラー印刷できるカードプリンター『MSC513』を出品し、その場で撮ったデジカメの写真と名前を入れた“ご来場記念カード”を配布していた |
|
---|
作ってもらったもの。1枚刷り上がるのに、2分もかからない |
ミシマ(株)
|
---|
ミシマ(株)は、4色刷が可能な回転式の高速パッド印刷機『SPACE PAD SATAN 8』。パッド印刷機とは、シリコンパッドにインクを移し、それを被印刷物に転写する、オフセット印刷の一種。立体物に印刷が行なえる |
|
---|
4色印刷を施した木札を次々と作り出していた。柔らかいパッドの動きは、見ていて飽きない |
ローランド.ディー.ジー(株)
|
---|
ローランド.ディー.ジー(株)のサーマルプリンター『Color CAMM PC-12』。専用の粘着ロールシートに、インクリボンで印刷する。耐水・対光・対擦過性に優れた、レジンインクリボンも用意している |
|
---|
内蔵のカッターで、プリントと同時にシールの周囲をカッティングできる。またロールシートを、印刷した分だけ自動的にカットすることもできる |
イメーション(株)
|
---|
イメーション(株)のCD-Rレーベルプリンター『CLP-300』。カード型CD-Rや、8cmCD-Rにも対応している |
(株)ミマキエンジニアリング
|
---|
(株)ミマキエンジニアリングの業務用カッティングプロッター『CFR-1220』。厚みのある素材もカッティングできる実演例として、スポンジの型抜きを行なっていた |
|
---|
実演で使った型はアップルマーク! |
(株)トゥー
|
---|
(株)トゥーは、(株)クレシスの3D画像制作ソフト『3Dmall2000 MaxPanorama』および、(株)ニコンのデジタルカメラ『Nikon D1』や専用ターンテーブルなどを含めた、フルオート撮影システムを展示していた。人形を乗せたターンテーブルが回転し、カメラが自動的に撮影してパソコンにデータを転送。3分ほどで3D画像が出来上がる |
| 被写体の外周を360度撮影することによって、『QuickTime VR』のような3D画像が作成できる。ウェブブラウザー上で、プラグイン不要で表示可能な独自のフォーマットを採用しており、ファイルサイズも他の3D画像制作ソフトで作ったものの、約4割まで小さくできるという |
---|
| 高解像度で撮影した画像から作成した3D画像は、高精細な拡大表示も可能 |
---|