“So-net”を運営するソニーコミュニケーションネットワーク(SCN)(株)と(株)ジャストシステムは5日、SCNが“JustNet”を運営する(株)ウェブオンラインサービス(WON)(※1)の全株式を取得すると発表した。取得金額は約18億円で、株式譲渡期日は10月1日。
※1 WONはジャストシステムの100%子会社。ジャストシステムのISP部門を分社化する形で、2000年7月に設立された。握手する3社長。左から浮川和宣ジャストシステム代表取締役社長、山本泉二SCN代表取締役兼CEO、長井定一WON代表取締役社長 |
So-netの会員数は約171万人で、その内接続会員は124万人、コンテンツ提供のみの会員は47万人。JustNetは会員数約34万人で接続会員25万人、コンテンツ会員は9万人。買収によってSo-netは、会員数が200万人を超えるISPとなる。
浮川和宣ジャストシステム社長 |
同日開催した記者説明会で、浮川和宣ジャストシステム代表取締役社長は、「めでたい!」「ハッピーウェディングだ!」と円満な買収であることを強調した。浮川社長はこれまで、「中堅のISPがどのような形でサービスをやっていくのか、規模の大きさだけでない、何か道があると思ってがんばってきた」。しかし、ジャストシステムにとって、ISP事業を行なうことにどんな意味があるのかを検討した結果、従来から関係の良好なSo-net(SCN)と協力することを選択したという。
今後のジャストシステムとSCNの関係については、人的な交流は行ないたいが、資本提携などは考えていないという。浮川社長は、「30万より200万の方が魅力がある」とし、今回の買収がジャストシステムにとっても価値のあることだとしている。また、今後もインターネットを重視する姿勢に変化はないという。『一太郎』や『ATOK』などのユーザーが、インターネット上に自分専用のディスクスペースを持つことのできるサービス、“インターネットディスク”については、JustNetとは別のサービスであり、これまで通り利用できる。
山本泉二SCN代表取締役兼CEO |
山本泉二SCN代表取締役兼CEOは、今回の買収の背景について、SCNにとっては会員数の拡大およびコンテンツの充実が目的だとしている。ADSLなどのブロードバンドの拡大によってISP間の競争が激化しており、買収によって規模の拡大を図ると共に、ネットワークの共通化、オペレーションの効率化によってコストを削減する。
ISPは現在、通信インフラだけでは収益が上がらず、またコンテンツなど、その上のレイヤーでの競争が激しくなっているため、今後SCNはさまざまなコンテンツを提供する“メディアカンパニー”への転換を目指す。今回の買収はその第1歩だという。そして、山本CEOはジャストシステムのコンテンツの開発力に期待していると語った。
競争構造の変化 |
また、山本CEOの説明によると、ナローバンド時代には限られた通信インフラの上でISPが競争し、通信インフラが競争優位の源泉である“垂直統合モデル”が優位にあった。しかし、ブロードバンド時代になると、ISPの再編が進み、また価格やカバーする地域、速度などによってISPが通信インフラを選択する“水平統合モデル”が優位になるという。今回の買収も、ISP業界の再編の一環であるとすれば、今後中堅のISPの買収、合併が加速することが予想される。
長井定一WON代表取締役社長 |
長井定一WON代表取締役社長は、今回の買収を2つの点を満たすためのものだとしている。1つは強い価格競争力、もう1つは接続事業だけでない付加サービス、付加価値の高いコンテンツを中心としたサービスを強化することだという。
So-netとJustNetは、買収後も当面はそれぞれの接続料金やサービスを維持する。“www.justnet.ne.jp”というアドレスも引き続き使用可能。WONの役員構成については、長井氏が代表取締役社長を務めることと、SCNが役員を派遣すること以外は未定。山本CEOは、「いずれは統合」したいとしているが、その時期については明らかにしなかった。
記者説明会では、3社長とも、So-netとJustNetのサービス開始時期がほぼ同じであり、またサービス内容も似通っており、統合が自然なものであることを繰り返し説明した。また、WONが2000年度、2400万円の営業損失を計上していることについては、浮川社長は「それ以前(分社する以前)の2年前、3年前は年間3~4億円の利益を上げていた」とし、不採算部門を売却したわけではないことを強調した。
しかし、浮川社長は2000年7月にWONを分社化したことについては、「活動の柔軟さ」を得るためだったとし、その時点からJustNetを運営するWONの売却が、選択肢に入っていたことを認めた。