かねてからその登場が期待されていた“Tualatin”がPentium III-Sと命名され発売された。0.13μmのプロセスルールで製造されたコアにどれだけの実力が秘められているのか非常に興味深いところだが、こちらのレビュー記事を読んでみると従来のPentium IIIに比較して圧倒的にパフォーマンスが高い。我がオーバークロック研究室では、早速、このCPUをオーバークロックで動作させてテストを開始した。
●Pentium III-Sについて
既にこのCPUについては、いろいろなところで言いつくされているが、Intelのホームページから入手した従来のPentiumIIIとPentiumIII-Sのデーターシートを読むと(実際に販売されているかどうか不明だが)従来のPentiumIIIに1.13GHzの製品データーが記載されていたので一部のデーターを【表1】に抜粋して比較してみた。両者は、同じクロックで動作するCPUであるにもかかわらずPentiumIII-Sの方が明らかに低い電圧で動作する(プロセスルールが異なるので当たり前なのだが)。したがって、消費電力も少ないし発熱温度も下がっている。さらに、セカンドキャッシュの容量が256KBから倍の512KBに増加している点は、スピードを追求する側として大歓迎だ。
【表1】
PentiumIII-1.13GHz | PentiumIII-S-1.13GHz | |
---|---|---|
パッケージタイプ | FC-PGA2 | FC-PGA2 |
プロセスルール | 0.18μm | 0.13μm |
CPUID | 068A | 06B1 |
コア電圧 | 1.75V | 1.45V |
Thermal Design Power | 37.5W | 27.9W |
Thermal Spec | 72℃ | 69℃ |
セカンドキャッシュ | 256KB | 512KB |
「歓迎」できる点と言えば(PentiumIII-Sに限ったことではないのだが)パッケージがFC-PGA2となってコアにIHS(Integrated Heat Spreader)というヒートシンクスプレッダが装着されたことだ。コア欠け防止だけでなくヒートシンクとコアの密着性が安定しCPUを破壊してしまう事故も減少するだろう。それと冷却の仕掛けにも選択肢が増して冷やしやすい。例えば、ペルチェ冷却を実施するとしても、コアに密着したヒートシンクスプレッダがあるのとないのでは、大きな違いである。
ところが良いことばかりとは限らない。言うまでもなくこのPentiumIII-Sを動作させるには、対応するマザーボードが必要になってくる。それゆえCPUだけの予算にとどまらず、マザーボードをも新調する覚悟が必要でコストの面においては、財布を圧迫するかも知れないのだ。単純にCPUだけの価格をみてもこちらのレポートから実売5万円前後のPentiumIII-S-1.13GHzは、128MB RDRAM同梱のPentium 4-1.7GHz、あるいは256MB RDRAM同梱のPentium 4-1.5GHz+オツリと互角の価格帯に属してしまうのだから大変悩ましいところだ。