日本アイ・ビー・エム(株)の27日付けの報道資料によると、米IBM社は27日(現地時間)、カーボンナノチューブ(炭素原子で作られた直径数nmのチューブ)を用いたトランジスター技術を開発したと発表した。
“建設的破壊”で金属性ナノチューブだけを壊し(右上の図)、残った半導性ナノチューブを素子として利用(右下の図) |
同技術は、シリコントランジスターに比べ大きさが500分の1程度のカーボンナノチューブを、半導体素子(トランジスター)として利用するというもの。カーボンナノチューブは炭素原子で構成される円筒状の物質で、サイズや構造の違いにより金属性と半導性のどちらかの電気的性質を持つという。カーボンナノチューブを合成する際に、金属性のものと、半導性のものとが混在してしまうので、チップ素材としての利用に限界があった。同社は、“建設的破壊(Construcive Destruction)”と呼ばれる製造手法を開発し、半導性ナノチューブのみの高密度配列の作成に成功した。同手法は、合成したカーボンナノチューブをシリコンウエハー上に置くことで半導性ナノチューブを絶縁し、金属性ナノチューブだけに電圧を加えて破壊するというもの。個々のナノチューブを操作することなく、コンピューターで利用可能な論理回路を作成できるとしている。今回の開発に携わった同社のT・J・ワトソン研究所のフェードン・アブリス(Phaedon Avouris)ナノスケールリサーチ部門マネージャーは、「この技術は、分子規模の電子デバイス作成を前進させるもの。カーボンナノチューブは性能面でシリコンに匹敵し、トランジスターを大幅に小型化できるため、将来のナノエレクトロニックテクノロジーの有望な候補である」とコメントした。