米ジェネリック・メディア社CEOのピーター・ハディが、2月27日に開催されたイベント“DEMO Japan 2001/Spring”の講演のため来日した。長年QuickTimeの開発をリードしてきたハディ氏が、アップルを離れて起した会社で目指すものはなにかを聞いた。
米ジェネリック・メディア社CEOのピーター・ハディ氏 |
米ジェネリック・メディア社CEOのピーター・ハディ(Peter Hoddie)が、2月27日に開催された革新的な技術をもつ企業の発表イベント“DEMO Japan 2001/Spring”で講演するため来日した。
ハディ氏は2000年2月に米アップルコンピュータ社を辞めるまで、10年近くにわたりQuickTimeの開発に携わり、その方向性をリードしてきた。ハディ氏がアップルを離れてまもなく起こしたジェネリック・メディアは2月14日(米国時間)、ストリーミングメディア配信のための画期的なシステム“Generic Media Publishing Service”を発表している。これはAVIやQuickTime、MPEG-1、MP3といったさまざまな形式に対応し、そのうちどれか1つのオリジナルファイルを用意すれば、ユーザーからの要求に応じて、フォーマットやサイズ、ビットレートなどをリアルタイムに変換して送信することができるというものだ。
このシステムを使い、同社は米国でストリーミングコンテンツをさまざまな端末に向けて配信するサービスを開始している。
また、3月1日にはPalm OSハンドヘルド向けに、動画プレーヤーソフト『gMovie Player』と、そのコンテンツを制作するためのWindowsとMacintosh向けプログラム『gMovie Maker』を発表している。
ジェネリック・メディアは何をしようとしているのか、その目指すところについて聞いた。
以前はCD-ROMで映像ファイルを配っていたりもしましたが、いまはインターネットを通じて映像を配信する時代です。しかしながら多くの人が自分の持つ映像コンテンツを、いかに安くいかに簡単にいろいろな人に届けるかということで困っています。
問題はストリーミングのためのフォーマットにはまず、“QuickTime”、“Windows Media”、“Real”という3大フォーマットがあり、さらにほかにもたくさんあります。これからはPDAや携帯電話、ゲーム機、カーナビでも動画が見られるようになるでしょう。しかしこれらは残念ながらみんなフォーマットが異なっています。それにはそれぞれ理由があって、1つにはまとめられません。見る側の端末によっても制約を受けます。
元のコンテンツを提供するコンテンツプロバイダーとしては、なるべく安くいろんな人に見せたいわけですが、それが現在はほぼ不可能です。これがいまひとつビデオストリーミング市場で、利用者の数が増えない大きな問題の1つなのではないか、それを解決する方法はないのかというのが最初の発想でした。
コンテンツプロバイダーの具体的な悩みというのは、いったいどのフォーマットを選べばいいのか、ということです。例えばあるフォーマットにエンコードしたとして、そのフォーマットが来年、あるいは再来年もあるのか、不安に思っているのです。そこで、新しいものが出てきても、それに対応してあげられるようなシステムを提供することによって、将来に対する不安を取り除き、より多くのプロバイダーが映像コンテンツをインターネットに送れるようにすればと考えたわけです。
ではなぜこの5つなのかというと、最初の4つ、3大フォーマット+MP3というのは、パソコン上でストリーミングということを考えたときには必須です。動画に関しては3大フォーマットのサポートによって、パソコンでストリーミング映像を見ている人はほぼカバーできます。
あと、Palm OSに関しては、PDAの中では非常に大きなインストールベースがあるのですが、残念ながらCPUが少し弱い。もともとプレーヤーを作るというのはジェネリック・メディアとしては意図していなかったのですが、Palmのストリーミング市場、ビデオ市場を立ち上げるために実験的に作ったものです。最初はソニーのクリエ(※1)でやりましたが、そうすると、そんなことができるんだと注目する人が出てくる。コンペティターも出る。それは結構なことで、いろいろなコンテンツプロバイダーもそれではPalmに送ろうか、という風に広がっていくと考えています。
クリエ上で動作する『gMovie Player』 |
こちらはVisor Prismで動作するカラー版『gMovie Player』 |
ジェネリック・メディア・ジャパン(株)代表取締役の外村仁氏(手前) |
現状は、3大フォーマットが1つのコンテンツに対して、おれがとる! というふうに戦っています。だから、あるフォーマットでしか見られないとかいうコンテンツが存在することになるのです。コンテンツプロバイダーとしては、なるべく多くの人に見られたいと思っているはずなのに、おかしなことになっています。コンテンツプロバイダー側が見せたいもの、ユーザー側が見たいものが多種多様になってきていますから、1対1に対応させるのは不可能です。だから、これでいいやということでどれか1つのフォーマットに対応して終わってしまうのです。
そこをひっくり返して、コンテンツプロバイダーとユーザーの両方をハッピーにするために、ジェネリック・メディアがサービスを提供します。
日本でもCATVやADSLによるブロードバンドサービス普及に伴って、ビデオのストリーミング配信が大きなサービスになるという見方がある。しかし、ハディ氏によると、ブロードバンド先進国である米国でもそれほどの広がりを見せていないという。その理由はハディ氏の言うように、デファクトスタンダードとなる強力なフォーマットがまだないことと、それを受け取る端末が多様化する一方で、コンテンツプロバイダーが対応しきれないということだろう。そんな中でジェネリック・メディアが果たす役割は非常に大きい。日本でも早期にこのサービスが開始され、ブロードバンドに見合う良質なストリーミングコンテンツが安く大量に見ることができるよう期待したい。