金さえあれば、何でもできる。
金さえあれば、何でも手に入る。
では金のない者は何も出来ないのか? 何も手に入れられないのか? 地べたを這いずり回って生きろと言うのか? ……ならば結構、それも良し。先物取引で大金を稼いでモニタ画面でにやけるのが幸せならば、道端で100円玉を拾う幸せだってあるはずだ。
というわけで今回から始まったこの連載、大量消費万歳の世に背を向け、いかに小額で幸せになれるかをテーマに、セコくつつましく意地汚く進めていきたい。しばしおつき合いいただければ幸いである。
さて第1回、まずはと言うことで「1000円で何かイケてるモン買って来いや」とデスクよりお題が出された。ファミレスで軽く食事すれば終わり、PC関係ならケーブルかメディア程度の金額だ。今日び小学生だってもっと貰っている。ああもう、物価が高いったら。高コスト社会って嫌ねー。ではこの金額で「幸せになれる買い物」と言うと……あの官能の世界しかない。目標は決まった。
キーボード。しかも、しっかりコストをかけて作られていた、古きよき時代のIBMのキーボードである。
キーボードならIBMでしょ
とにかく、今時のキーボードはどれもコスト削減のために「入力できれば良し」程度になってしまっているものが多い。そんなキーボードを叩くたび、「違うッ!」と一喝して膝で真っ二つに叩き折りたい衝動にかられるのだ。
そこで古いキーボードに触れてみると、ハードなタイピングもがっちり受け止める頑丈さと、スムーズなタッチを生む精度とをきっちり考えて作られていることに驚く。なかでも、IBMは一貫してキーボードを大切に作ってきたという印象がある。
編集部の5576。左奥から002、B01、C01、B05。そして手前が001 |
一般にIBMの名作キーボードと言うと、いわゆる「Enhanced 101」のシリーズが有名だが、もう一つの名作「5576シリーズ」のことは意外と知られていない様だ。DOS/Vの規格が定まる以前の同社製PC・PS/55の標準キーボードとして生まれたのが始まり…ということなのだが、若輩の私にはピンとこない。ただ覚えているのは、いつ、どこでだったか「5576-A01」モデルを何気なく叩いた時体を貫いた無上の快感である。
こちらはお馴染みEnhanced 101 |
もちろん、長い歴史の中で生まれた各種モデルのほとんどは、すでに生産を終えている。ゆえに中古で見つけるしかないのだが、逆にこれなら素晴らしいタッチのキーボードを、現在の新品よりさらに安く手に入れられるというわけだ。
そして私は、秋葉原の裏通りに向かったのである。あの魅惑的なキータッチに出会うために!