メディアコミュニケーション最大級のトレードショーNAB99が、4月17日から22日まで、ラスベガスコンベンションセンターおよびサンズエキスポセンターで開催された。ascii24では、この催しについて、すでに、何本かのレポートで紹介している。今回は、CGソフトの販売を経験した後、CG制作に携わっている吉田三恵子氏が、CG関連のプロの立場で、目についた製品に関し解説する。
やはり気になるのはアップル
NAB99のうち、展示の部分は、19日から22日までだった。ここでは、テレビ、ラジオ、ビデオ、映画はもとより、エンタテインメント、インタラクティブメディアやインターネットといったデジタルメディア産業全般をカバーしている。ビデオ、HDTV、ウェブ、映画、放送、インタラクティブゲームでのデジタルコンテンツ制作に関連する製品の多くは、例年サンズエキスポセンターに展示される。このサンズエキスポセンターで目立った製品や企業をとり上げる。NAB99サンズエキスポセンター会場 |
アップルコンピュータ社は、19日に『QuickTime 4』のMacintosh対応およびWindows対応のベータ版をリリースした。『QuickTime4』は、インターネットでの、ライブおよび保存データのストリーミング機能を備え、さまざまなフォーマットのオーディオ、ビデオに対応している。『QuickTime4』のベータ版は、http://www.apple.com/quicktimeのサイトからダウンロードできる。
アップルコンピュータ社『Final Cut Pro』デモ |
また同日、プロ仕様のビデオオーサリングソフトウェア『Final Cut
Pro』(ファイナルカットプロ)を発表した。『Final Cut Pro』は、デスクトップでのビデオ編集、合成、エフェクト機能を統合したパッケージで、米国での価格は999ドルである。『Final
Cut Pro』は、パワーマックG3標準の“FireWire”に対応しており、デジタルビデオや音声データの転送や編集における、迅速な処理が可能である。
子会社統合や提携でパワー増強、オートデスク『3D Studio MAX』
オートデスク社は、PCベースのCADおよびマルチメディアソフトの開発、販売の最大手である。同社は、この3月に、子会社ディスクリートロジック社(Discreet
Logic)と、オートデスク社のマルチメディア部門、キネティクス(Kinetix)とを統合し、ディスクリート・エンターテインメント部門を新設している。今回、ディスクリートブースでは、デジタル映像制作プロセスを網羅するビジュアルエフェクト、3Dアニメーション、編集システムといった各種ソフトウェアを展示した。メジャーアップグレードとして注目されたのが、WindowsNT対応のリアルタイムのノンリニア編集システム『edit v5.0』と3DのCG/アニメーションパッケージ『3D Studio MAX Release3』である。『3D Studio MAX Release3』では、カスタマイズ可能なユーザーインターフェースや高品位レンダラー、スクリプト機能の拡張などの点が強化されている。
オートデスク社は15日に、ドイツのメンタルイメージ社(mental images、本社ベルリン)と、デジタルコンテンツ作成分野において共同開発することを発表している。『3D Studio MAX』においても Release3から、メンタルイメージ社のレイトレーシングレンダラー『mental ray』に対応することを発表した。『mental ray』は、フォトリアリスティックなレベルでプログラム可能なのを特徴とする。
19日には、『RenderMan』に対応するプラグイン『MaxMan』が、オーストラリアのAnimal Logic社から、7月にリリースされることが発表された。『RenderMan』は、米ピクサー社(Pixar Animation Studios)によって開発されたハイエンドレンダラーで、アニメーションや科学・技術部門でアカデミー賞を受賞した実績を持つ。
SGIのグループ力発揮か、『Maya2』
米SGI社は、14日に、シリコングラフィックス(Silicon Graphics Inc)から、社名およびロゴを変更したばかり。このSGI社の子会社、カナダのAlias
Wavefront社は、『Maya』の最新バージョン『Maya2』を公開した。『Maya』は、キャラクターアニメーションとビジュアルエフェクトの3Dソフトウェア。現在北米で興行成績第1位にあるSF映画
『The Matrix』のCG映像にも使用されている。最新バージョンの『Maya2』はインタラクティブフォトリアリスティックレンダラー(Interactive
Photorealistic Render、以下IPR)を搭載している。テクスチャーやライティングの設定を変更すると、IPR技術によって、インタラクティブにレンダリング画面にアップデートされる。SGI社ブース |
『MayaComplete』パッケージには、物理属性をシミュレーションするパーティクルシステム『Maya
F/X』モジュール、ペイントブラシによってモデリング表面をスムースに造形する『Maya
Artisan』モジュールが搭載される。また、『MayaComplete』の上位版である『MayaUnlimited』では、『Maya
Complete』に加え、3Dモーショントラッキングツール『MayaLive』、衣服のアニメーション生成ツール『Maya
Cloth』、そして『Maya Fur』が装備される。『MayaFur』は複数のNURBS(曲面表現の式の一種)モデル上にリアリスティックなファー(毛皮)や髪を生成するツールである。『MayaArtisan』のインターフェースと併用することで、オブジェクトの表面上に、直接多彩なファーの属性(色、太さ、長さ、密度、透明度、カール、方向)を自在に設定できる。
Alias Wavefront社メインシアター |
『MayaFusion』は、WindowsNT対応のノンリニア合成、エフェクトツールである。『Maya』をはじめ、『Softimage3D』、『Lightwave』、
『3D Studio MAX』などの画像フォーマットをダイレクトに取り込むことができ、また、Zバッファーでの実写合成、編集プロセスを、分散レンダリングで高速に処理できる。
また、新技術紹介として、ブラシで2Dおよび3Dエフェクトを生成させるペイントシステムを発表した。同社のメインブースでは、3Dの地形モデリングに、ブラシツールでペイントして3Dの植物や樹木を生成させるデモンストレーションを見せていた。
英Cambridge Animationや米Motion Analysisにも注目
英Cambridge Animation Systems社(本社ケンブリッジ)は2Dおよび3Dのアニメーションシステム『Animo2.5』を発表した。『Animo』はアニメーション映画『プリンスオブエジプト』や『王様と私』で使用されている。プレビュー版の『Animo2.5』では、ベクトル機能の強化、インクペイント処理の機能アップ、エフェクトフィルターの追加、3Dモデリングデータをノンフォトリアリスティックにレンダリングするアニメーション機能などが紹介された。Motion Analysis社モーションキャプチャーデモ |
光学式モーションキャプチャーシステム開発のリーディングカンパニー、米Motion
Analysis社(本社カリフォルニア州サンタロサ)は、テクスチャー付きハードウェアレンダリング表示を実行する機能の発表を、デモンストレーションで見せていた。同ソフトは、SGI社のOctane上で、アクターのモーションをリアルタイムにキャプチャーしつつ、テクスチャー付きハードウェアレンダリング表示を実行する機能を果たす。