中国国内有数の調査会社、慧聡技術市場信息研究所(Advanced
Forecasting HuiCong [AFHC])は昨年、一般消費者30万人を対象として“コンピュータメーカーのブランド意識調査”を実施した。'96年に1回目を実施して以来、3回目となる。これまで最大規模の調査となったため、調査結果は以前に比べると国内の現状をかなり反映しているとみてよい。
今回の調査では、まず“中華電脳展示会”に来場した参加者に対し、聞き取り形式のアンケートで調査した。この展示会は、昨年3月から8ヵ月かけて、国内30を超える省市(日本の都道府県に相当)で開催されたものである。また、国内有力のコンピューター専門雑誌、『計算機世界』、『中国計算機』、『電子&電脳』なども協力した。
分野別ランキング(上位ベスト5)
製品ジャンル |
寸評 |
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1位 |
2位 |
3位 |
4位 |
5位 |
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デスクトップPC |
国内トップメーカー聯想が首位獲得 |
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聯想(Legend) |
IBM |
方正(Founder) |
コンパック |
金長城(Golden Great Wall) |
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ノートPC |
中国でもノート東芝が優勢 |
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東芝 |
IBM |
方正(Founder) |
コンバック |
倫飛(Twinhead) |
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サーバー |
米国メーカー圧倒優位 |
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HP |
IBM |
コンパック |
デル |
DEC |
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レーザープリンター |
日本メーカー健闘 |
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HP |
エプソン |
キヤノン |
聯想(Legend) |
NEC |
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ディスプレイー |
国内メーカーは今後が期待 |
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フィリップス |
三星 |
ソニー |
EMC |
エーサー(Acer) |
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モデム |
中国ではトップブランドのモトローラが圧勝 |
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モトローラ |
ヘイズ |
実達(Starts) |
アイワ |
巨人 |
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企業イメージ |
知名度トップの聯想がトップ |
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聯想(Legend) |
方正(Founder) |
IBM |
同創(Tondru) |
長城(Great Wall) |
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技術開発企業イメージ |
開発力でも聯想がトップ |
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聯想(Legend) |
方正(Founder) |
同創(Tondru) |
海信(Hisense) |
IBM |
パソコンといえば聯想を連想<
中国国内の家庭におけるPC需要は急増している。デスクトップPC市場の規模は、昨年、出荷台数ベースで120万台に達し、前年比60パーセント増を記録した。国内メーカーとしてはトップブランド力を持つ聯想(Legend)は、中国市場では絶大な人気を博している。人気のPC『天琴959P』(天琴とは幸福の家という意味)で、マルチメディア対応しており、主に中高所得者層をターゲットに顧客獲得を図っている。'84年に創業した、中国国内19の支店、1000以上の販売店、総資産16億人民元、社員6000人を擁する国営企業である。国内の販売チャネル、企業知名度も強力だが、年間100万台以上の生産能力を備えた企業基盤はさらに侮りがたい。
ノートPC分野では、日米メーカーが優勢だ。東芝の販売戦略は実に巧みだ。'95年に東芝は、国内トップメーカーの聯想と総合代理店契約を結び、東芝製品はすべて両社の合弁会社、聯想東芝が扱うようにした。聯想の持つ全国の販売網を通じて短期間でブランド力を確立し、ユーザーが獲得できたというわけだ。'98年10月までで、既に累計1000万台(出荷台数ベース)を突破したという。専門家は「'98年はノートPCの年になるだろう」と予測したが、爆発的な伸びは現実にはならなかった。しかし、ノートPCの価格が下がり、1万元で入手可能になった。
サーバー分野では、米メーカーが圧倒的な強さを見せた。世界的な実績と信頼、そしてアフターサポートが主要因となった。HPは、先端的な技術開発力と、妥当な価格、そしてサービスの良さがユーザーに受けた。もともとHPは高価なイメージがあったが、実際には“思ったほど高くない”ことがユーザーを引き付けたといえる。
ヘイズのモデムを買うと郵電局のサービスが無料に
モデム分野では、中国国内では抜群の知名度のモトローラが圧倒的な強さを見せた。ポケベルや携帯電話に始まり、ハイテク電子機器では改革、開放を掲げて以来、積極的に中国市場に投資し、ユーザーの信頼を獲得してきた唯一の外資企業だ。また、競合の米ヘイズや実達(Start)も追い上げている。特に、インターネットの普及にともなってモデムの需要が急激に高まっている。ヘイズは、全国の地方郵電局(郵電局は日本の郵政省に相当)との提携という手法で、新規ユーザー獲得に拍車をかけている。同社モデムの購入者には、郵電局が提供するインターネットサービス(ChinaNet)を一定期間無料で利用できる特典が与えられるのである。また『鴻騰』と呼ばれるインターネットユーティリティーソフトが標準装備され、新着メールの自動受信機能、最新の時事ニュース無料配信も提供されている。
今回の調査全体をみると、中国国内メーカーの健闘ぶりが如実にあらわれている。今後外国メーカーとの争いに注目していきたい。台湾が“パソコン王国の台湾”と呼ばれるまでに至った経緯は、ちょうど今の中国の現状と符合する。とはいえ、違いもある。台湾と中国(あえて大陸と呼ぶ)とを比べれば、巨大な自国市場が存在するか否かが最大の相違である。
聯想、方正(トウ小平の子息が創業した巨大国営企業)、長城など、中国全土に豊富な経営資源(ヒト、モノ、カネ)を有する企業がすでに多く存在する。それでも、市場の大きさは起業家を呼ぶ。チャイニーズドリームを叶えようと本国に戻ってビジネスチャンスを模索するベンチャー企業群もこれから台頭してくるだろう。今後のドラゴン(龍の伝説)の行方に期待したい。