スティーブ・ジョブズ暫定CEOの基調講演には、日本でのオンラインストア“AppleStore”サービスが開始されること以外、目新しい発表はなかった。“P1”というコードネームが会期前に噂されていたiMac風のコンシューマーノートや、PowerBook
G3の後継機とされる“Lombard”などが、アップルのブースに並ぶことは残念ながらなかった。
18日の基調講演終了後には、アップルのブースは展示物を見ることはもちろん身動きすら難しいほどの混雑を極めた。決してブースが狭かったわけではない。このExpoで最大の展示スペースを用意し、ゆったりしたレイアウトで展示されていたが、基調講演に集まった6500人の聴衆が一気にアップルブースに殺到したためとあればムリもない。ブース内の混雑は朝の通勤ラッシュさながらであった。
USBとFireWireの展示は来場者に好評
展示の内容は、1月に米サンフランシスコで開催されたExpoとほぼ同じもので、5色の新型iMacとPowerMac
G3が中心だった。iMacの試用コーナーには老若男女を問わず多くの人が群がり、その光景はサンフランシスコのEXPOそのまま。既存ユーザー、そしてこれからのMacユーザーがiMacに対して強い関心を持っていることが伺われる。コンシューマー向けとなるiMacコーナーの隣には、プロシューマー向けのPowerMac
G3が展示されていた。アップルブース内に設けられたPowerMac G3コーナー |
本体以外の展示に目を転じると、USBとFireWireに対応した周辺機器を体験できるコーナーが設けられていた。USBのコーナーにはトランスルーセントカラーのFDDやZipドライブがiMacやPowerMac
G3に接続されており、ブース来場者が手に取って操作する光景が見られた。FireWireコーナーにはデジタルビデオやプロ向けデジタルスチルカメラが並べられ、HDDやMOドライブも展示されていた。
5色の周辺機器、出荷しますか?
5色の新型iMacがユーザーに与えた衝撃は大きかったが、ハードウェアメーカーに与えた衝撃のほうが大きかったようだ。あるプリンターメーカーの営業マンは、「5色のiMacにも人気の差があるので、5色のプリンターを投入しても、どれかが売れ残ってしまったら困る……」と困惑を隠しきれない様子。日本ヒューレット・パッカード(株)の説明員は、「参考出品ですから、それ以上は……」と言葉を濁していた。各メーカーの企画担当者は戦々恐々としているのではないだろうか?ヤノ電器(株)のブースでは5色のMOドライブを展示。ドライブ自体はATAPIインターフェースだが、USB-ATAPI変換アダプターを添付しているのがミソ。3月に発売を予定しているという。当初はUSBでの接続だが、FireWire-ATAPI変換アダプターの投入も予定されている。また、ヤノ電器ではFDDやPCカードリーダーでも5色のバリエーションを展示していた。いずれも近日発売予定とのこと。
ストロベリーカラーの周辺機器はなかなかに強烈だ |
フォーカルポイントコンピュータ(株)のブースでは、USB接続のジョイスティックとゲームパッドを展示。iMacでアクションゲームを楽しむには必要不可欠か?
半透明でないところが惜しまれるが、色合いは鮮烈だ |
FireWire対応周辺機器が続々と登場
USB機器ほどにはまだ数は多くないが、FireWire対応デバイスも各ブースで見受けられた。試作段階のものから発売直前までとメーカーにより対応はさまざまだが、SCSIに代わる高速インターフェースとして、ユーザーはもちろんデベロッパーの関心も高い。
ヤノ電器
ヤノ電器ではFireWireで接続するHDDとMOドライブを展示した。HDDは『SERIUS』(シリウス)、640MBのMOドライブは『PROMINENCE』(プロミネンス)という仮称がついているが、製品名として採用されるかどうかは未定。SERIUSは4GB、6GB、9GBの各容量を持つHDDで、幅120mm、厚さ30mm、奥行き140mm。電源はFireWire経由でホストから供給される。PROMINENCEは128MBから640MBまでの全メディアを読み書き可能で、オーバーライト方式にも対応。大きさはSERIUSよりもやや大きい。
FireWire対応HDDの『SERIUS』、デザインはやはりG3 Macを意識したもの |
アップルコンピュータのブース
アップルブースのFireWireコーナーに展示されていたもの。一番上に乗っている赤と黄色に塗られたデバイスは、米VST
Technologiesの4GB HDD『VST Blase』。そのすぐ下にはヤノ電器のSERIUS、一番下はフォーカルポイントコンピュータが発売する予定のFireWire対応ディスクドライブ。『VST Blase』は、ジョブズ氏が基調講演のデモに利用したディスクドライブだ |
米Castlewood Systems
月刊アスキー3月号に掲載したMACWORLD Expo/San Franciscoレポートでお伝えした、米Castlewood
Systems社のリムーバブルディスクドライブ『ORB』(オーブ)。日本での発売元は新日エレクトロニクス(株)。ご覧のようにメディアの大きさはタバコの箱2個分以下の大きさであるが、これで2.2GBの容量を持つ。見た感じはMOに似ているが、データ転送速度は毎秒12.2MBとはるかに速い。FireWire対応モデルは今回のExpoには間にあわなかったが、Ultra SCSIモデルとUSBモデルが展示された。
2.2GBの容量を持つ『ORB』、価格はディスク1枚付属で199.95ドル(約2万3000円)の予定 |
フォーカルポイントコンピュータ
フォーカルポイントコンピュータ(株)のブースでは、同社が国内総代理店を務める海外メーカーの製品を展示していた。なかでも先日提携が発表された仏Lacie社と、独Formac社の製品が注目を集めていた。Lacie社のFireWire対応HDDは3月発売予定。スペックと価格は3月になってから発表するとのことだ。
Mezzanineスロット用カードで知られるFormac社は、iMac対応のSCSIカード『iProRAID』を展示。最大で15台のSCSI機器を接続できるという代物。価格はオープンプライス。
フォーカルポイントコンピュータの恩田フランシス英樹代表取締役社長はブース内で会見を行ない、「提携各社の周辺機器用ドライバーソフトは、できるだけ早い時期に、なるべく無償で提供していきたい」と語った。
Lacie社のFireWire対応HDD、斬新なデザインはさすがおフランス製 |
松下電器産業
松下電器産業では、FireWire接続のDVD-RAMドライブを参考出展。ハードウェア自体は発売中の『LF-D101J』(SCSI-2対応)と同様のもの。背面を見るとSCSI端子とFireWire端子が並んでおり、まだまだ試作の段階だ。本来は平置きのデザインだが、縦置きの状態でも使用できる |