15日、千葉大学で“インターネットと教育フォーラム”が開催された。聴講者のほとんどは、教師をはじめとする教育関係者。千葉大学教授の土屋俊氏、川崎総合科学高校の宮澤賀津雄氏、スマート・バレージャパンの伊東正明氏の3人。2003年、インターネット教育の導入を前に、インターネット教育の先駆者である米国などの実状を報告した。米国の情報教育では、役割分担が明確だという指摘があった。
インターネットの倫理は一般と同じ
まず壇上に立ったのは千葉大学教授・土屋俊氏。テーマは“情報倫理と教育”。インターネットの世界には特別な倫理があるわけではなく、一般常識と変わりはないと指摘した。例えば、インターネットを利用する上で大切なことは「他人に危害を加えない、他人の権利を侵害しない」という一般常識に基づいている。それは郵便を出す時に差出人の名前を書くとか、他人の手紙を勝手に見ないとかそういったことと何ら変わりはないというのだ。
千葉大学教授 土屋俊氏 |
役割分担が明確な米国の情報教育
次に“最新の米国の情報教育事情”というテーマで宮澤賀津雄氏が講演。米国全土の情報教育について説明。日本との教育目的などの違いを語った。米国では情報教育に対する明確な目的が示され、役割や運営に関してもしっかりとしたマニュアルや分担が定められていることを強調した。つまり、ハードウェアはハードウェア会社に、ソフトウェアはソフトウェア会社に任せているという。運営をプロバイダーに任せるアウトソーシングの考えが一般的。それは教師が教育面と運営面という2つの負担を背負いきれないという考えからである。
実際の情報教育では“電子メール”を子供に触らせるということはほとんどないという。例えば自動車の運転の仕方を学ぶように、インターネットの使い方を知識として教育することに徹底している。
川崎総合科学高校 宮澤賀津雄氏 |
米国ではカリキュラム作成と教師トレーニングを専門家に
米国では各学校にコーディネーターとして企業と学校とを結ぶ人が1人いる。コーディネーターは教師に、インターネットに関して180時間、トレーニングするという。また情報教育のカリキュラムの作成が、教師には難しいことから、そのスペシャリストが存在する。教師はそのカリキュラムに従って教鞭をとる。米国の情報教育では、誰がどの役割を担うのかということが徹底しており、すべてがマニュアルできちんと決定されていると繰り返した。
難点は、米国では州単位で教育方針が決定されているので、格差が激しい点。 そして同氏は日本の現状に関し、運営面や教育面(カリキュラムなど)、操作面でも、教師への教育方針すら立っていないことを挙げ、大きな課題が残されているとまとめた。
シリコンバレーの学校の94%にインターネット
最後にスマートバレー・ジャパン実行委員代表の伊東正明氏が講演。テーマは“スマート・スクール”である。同氏はシリコンバレーで起こった“スマート・スクール”事業について報告した。同氏はシリコンバレーのNPOであるスマートバレー・インクが'95年9月に始めた“スマート・スクール NetDay”から現在に至るまでの情報教育の広がりを語った。
NetDayは、ハイテク企業がボランティアとして参加した全米の学校を対象にインターネット環境を整えるという運動。スマートバレー・インクでは地元であるシリコンバレーの学校を対象に地元の企業や住民、行政が一体となってインターネット環境を整えた。この運動により第3回“スマート・スクール NetDay”('97年)には インターネットがシリコンバレーの94%の学校に普及したという。
同氏は、コミュニティーの中のすべての人々が子供たちの教育に協力することが大切だと語った。
スマートバレー・ジャパン実行委員代表 伊東正明氏 |