日本におけるデジタルパブリッシングの普及を目指す民間団体、Japan
Publishing Consortium(JPC)は、10日、アップルコンピュータ(株)本社セミナールームにて、定例セミナーを開催した。今回のテーマは、“Seybold
Seminars S.F. 98速報!”、“オンライン・パブリッシングの実例”、“動くWEBサイト-表現-”“動くWEBサイト-手段-”など。
“Seybold Seminars S.F. 98速報!”では、日本写真印刷(株)の田邊忠氏により、8月31日~9月3日まで米サンフランシスコで開催されたデジタルパブリッシングの展示会およびコンファレンス“Seybold”の報告が行なわれた。“Seybold”の模様については、ASCII24でも報告してきており、ここでの掲載は割愛する(文末のURL参照)。
次の“オンライン・パブリッシングの実例”は、(株)リクルート電子メディア事業部総合編集グループの千葉功太郎氏と、HotWired
Japan Committee編集長の江坂健氏とをプレゼンターに迎えて行なわれた。両氏から、オンラインパブリッシングを実践している現場から、実際の運営方法、それにまつわるさまざまな実情が紹介された。
左から千葉功太郎氏、江坂健氏 |
リクルートの千葉氏は、同社のホームページ“MixJuice”の運営を手掛けている。月間ヒット数が3億という“MixJuice”は、同社が発行する紙媒体をオンライン化したサイト、検索エンジンなどオンライン独自のサイト、そして紙媒体とオンラインの独自運営が一緒になったサイトの3つに分類されている。
1週間で8000件の情報が掲載されるという『フロムエー』では、完全オンライン化が図られている。「原稿の入稿からレイアウトまで、すべて自動で行なっている。また雑誌ごとに異なる、地域コードや原稿コードを統一させることで、各雑誌で連動した情報検索ができる」と、“MixJuice”の充実した検索システムを誇った。
こうしたデータベース構築に力を入れる理由を、「最もビジネスとしての将来性を見出せるから。例えば、あるユーザーがサイトを巡った履歴を記録し、どのような情報がその人に有益かを判断する。それに見合った情報をユーザーに対して、常にこちらから配信する。また、こうした情報を、FAXや携帯電話のメールサービスを利用して配信もできる。将来、こういったシステムにビジネスチャンスが見出せるはず」とした。
“MixJuice”(http://www.recruit.co.jp/)
HotWiredの江坂氏は、米国で発行されるWebマガジンHotWiredの翻訳に加え、日本オリジナルの情報を合わせてホームページで毎日掲載している。同氏はオンラインパブリッシングに対して、「いろんな楽しみを見出せるサイトづくり」を目指しているという。
例えば、同ホームページのある企画ではレイアウトに、ブラウザーのネットスケープナビゲーターとそっくりなグラフィックスを取り入れている。「どんな意味があるの?と言われればそれまでだが、どんなところに面白みを見出せるか、ビジュアル的に“かっこよい”もの、ユーザーに熱い感覚をもって迎えられるものをいかに提供できるか、試してみたい」と、不特定多数ではなく、一定のコミュニティーに対して情報を提供している例を紹介した。
“HotWired Japan”(http://www.hotwired.co.jp/)
続いて、“動くWEBサイト”について、(株)電通の総合デジタルセンターデジタルビジネス開発室の内山光司氏が説明。現状のインターネットの利用法は、趣味やエンタテイメントが“ダントツ”。その上で、インターネットがテレビという娯楽と対等になれるか否かは、いかに面白いWebを作るかに掛かっていると訴えた。そして“動いているものに目がいきやすい”という広告心理の観点から、動くWebサイト作りが有効的であると述べ、「言葉より絵、絵より映像、だからこそ動くWeb」と強調した。
内山光司氏 |
次に、電子メディアサービス(株)の上野亨氏が、(株)マクロメディアの『Shockwave
Flash』および、“DHTML”の技術や事例のデモンストレーションを実施した。上野氏は面白さを与えることが、Webサイトの作り手の第一の使命だと力説した。そのために独自のプラグインが必要となってユーザーに負荷に掛かるのもやむなしだという。また、次に壇上に立った(有)サンズの遠藤太郎氏は“Java”を使ったデモンストレーションを行ない、プラグインがなくても楽しめるWebサイト作りについて、その利点を述べた。
上野亨氏、遠藤太郎氏
オンラインパブリッシングを、広告収入だけで運営するのは苦しい現状という。ユーザーにとって有益な情報をどのように提供するか、また、ユーザーが考えるコンテンツに対する価値をどこまで理解できるか、模索が続きそうだ。