イースト(株)取締役コミュニケーション事業部長の下川和男氏に、同社の外字ソフト開発の現状を中心にインタビューした。イーストは、'85年の設立当初から日本語に関連するソフトを多数手がけており、現在、外字ソフトについてはターゲットの異なる2種類の製品群をリリースしている。
・ビジネス向け外字ソフト
『KanjiLink』シリーズ。人名用、地名用の外字を必要とする公官庁や金融機関などが主なターゲット。Windows対応。クライアント/サーバー環境で、外字フォントが共有できるのが特徴。JIS第1/第2水準および非漢字を含めた約7000字以外に、UnicodeのPUA(Private
User Area:ユーザーが自由に利用できる文字コード領域)を使用することで、6400字の外字が扱える。・コンシューマー向け外字ソフト
毛筆フォントを含む約1500字の外字を収録する『毛筆外字1500』(4万8000円)、人名用の俗字、異体字を約1500字収録する『人名外字1500』(同)など。Windows対応。1台のパソコンのみで使用できる。外字は、シフトJISコードの未定義領域に収録されている。
----外字ソフトを広範に展開されていますね。
「もともと、日本企業がパソコンの分野で生き残るには、日本の文化に絡んだものを開発するしかないと考えたのが始まりなんです」
----といいますと。
「私がパソコンに興味を持ったのは、約20年前。カリフォルニアで行なわれた“West
Coast Computer Fair”(略称ウェスコン)で、登場したばかりのパソコンを見て、非常に衝撃を受けたのです。私は当時、大型コンピューターメーカーの関連ソフトハウスで、各種のOSを開発していたのですが、OSはとにかく人手がかかる。1個のOSを作るのにも1000人以上が携わっていたため、自分がどの部分を担当しているのかさえ分からないような状況でした。それが、パソコンというものはひとりでプログラミングして、ひとりで動かせるらしい。これは面白いということで、'81年に同僚約10人と新しい会社を立ち上げ、パソコン用ソフトの開発を始めたのです」
----どのようなソフトを開発していたのですか。
「当時、OSはすべてアメリカが作っていたし、情報もアメリカに集中していました。それで、OSは無理だ、日本文化に絡んだものを、ということになり、'82年に日本語ワープロソフトを作ったのが最初です。DOS上で動く日本初の日本語ワープロソフトで、けっこう売れました」
「その後、私はイーストの設立にも携わり現在にいたるわけですが、イーストでもまず、“MSX”(米マイクロソフトとアスキーが制定したコンシューマー向けパソコン規格)に対応したワープロソフトやかな漢字変換ソフトを開発しました」
----以来、イーストにおいて日本語関連ソフトはどのような進化を遂げてきたのでしょうか。
「大まかには、第1世代がDOSをプラットフォームとする“DOSアプリ(ケーション)”、第2世代がWindowsをプラットフォームとする現在の“Windowsアプリ”というように進化してきたといえます。そして現在イーストで力を注いでいるのが、第3世代に当たる“ブラウザーアプリ”です。これはブラウザー上で動くアプリケーションのことで、各ユーザーがアプリケーションをサーバーからダウンロードできるだけでなく、ブラウザーさえあればWindows、Macなどの区別なく利用できます。実際にイーストでは、ブラウザーアプリに関するプロジェクトをいくつか進めています」
----外字ソフトもブラウザーアプリになっていくと。
「現在、(株)ピーデー(http://www.piedey.co.jp/)と共同で、ブラウザー上で動く外字ソフトを開発中です。これによって、OSに関わらず外字フォントが利用できるようになります。KanjiLinkシリーズと同様、Unicodeをサポートしたビジネス用途のラインアップとして位置づけています。企業をターゲットとしているため、パッケージソフトとしては販売しないかもしれません」
「Windowsアプリとして設計がしっかりしていれば、ブラウザーアプリへの移行はさほど困難ではありません。イーストでは、ブラウザーアプリの開発をはじめとしたインターネット関連事業を強化しており、あと2、3年で主力事業になるだろうと見ています」
(報道局 浅野広明)
http://www.est.co.jp/