米Be社*、ソフトウェアエンジニア日本語環境担当Hiroshi
Lockheimer(ヒロシ・ロックハイマー)氏に、『BeOS R4』の日本語環境について伺った。
----BeOS** R4のリリーススケジュールに変更は?
「リリーススケジュールの変更はなし。予定どおりリリースできるように開発を進めている」
----Intel版R3の出荷を4月に開始したが、売れ行きは?
「おかげさまで好調。今まではMacintosh版だけだったけど、Macintoshの絶対数とIntelの絶対数を比較するとIntelのほうが多い。賭けだと思っている。ほかにWindowsとかLinuxとかが出揃っている市場に敢えて出て行くわけだから。ただ、PCの世界のほうが可能性が大きいとも思っている」
----日本の反応は?
「日本では、用意していた本数が発売日当日に売り切れた。今でも、製品を入荷するとすぐに売れ切れてしまう状態が続いていると聞く。Intel版R3の出荷本数のうち、約4割が日本で販売している」
「ただ、日本はR4にならないと日本語入力ができないので、今は特別強く押していない。買ってインストールしてみて、“なんだ日本語が使えない”と逆効果の可能性もあるので、R4を待って、無難に市場を狙いたいと思っている。いずれは大きな販売チャンネルをさがして、製品を販売していきたいと思っている。日本に現地法人を設立して、サポートをしていかなくてはならないと思っている」
----Intel版でのSCSIのサポートはいつになるか?
「IntelのSCSIはサポートする。たまたま、今回のバージョンR3に間に合わなかったが、R4に向けての開発は進んでいる」
----R4のデジタルビデオ・オーディオについては?
「デジタルビデオ・オーディオは、今までどおりサポートする。R4ではメディアキットと言って、プログラマー用のAPIを用意して公開する。あと、開発者に役にたつようなサンプルコードも出す。サンプルコードの例として、開発中だが、CDプレーヤーとか、TVチューナーとか、ビデオのコントロールとかができるアプリケーション“メディアラック”を用意する予定」
----R4で日本語環境が充実すると聞いているが、詳細は?
「今まで、R3では日本語を使いたい人は自分でTrueTypeフォントを買って、インストールして、使っていた。次のバージョンR4では、日本語IMEをサポートするほか、日本語フォントの装備、ユーザーズガイドも日本語に訳す。おそらくパッケージも日本語化すると思う。日本語フォントはアンチエイリアスをかけているので、大きなサイズでも見やすい。BeOSのローカライズというレベルまでは行かないが、とりあえずR4では日本のみなさまに使えるレベルまで持っていこうと思っている」
----日本語入力の開発はどの程度進んでいる?
「今はボトムラインといって、別のウインドーでの日本語入力は可能。これで、日本語でメールを送ったり、ワープロの文書を書いたりすることができる。もちろん、日本語のファイル名を付けたり、日本語のファイルを検索することもできる。これから日本語IMEを組み込んで、R4ではインライン入力ができるようになる予定」
----日本語入力ソフトのスペックは?
「日本語入力ソフトには、ジャストシステムの『ATOK』、バックスの『VJE』、エルゴソフトの『EGBRIDGE』とか色々ある。Beは、何十万語の辞書とか再解析など、そういったサードパーティーの領域までは考えていない。どちらかというと日本語を使えるようにするというレベル。これだったら、BeOSを使ってみようかな、と思える程度の仕様を考えている」
「BeOSは、ミニマルなOSで、速くて、軽いというのが売りだから、日本語入力ソフトを大きくするのはBeのビジネス領域ではないと考える。Beでアプリケーションを全部作ってしまったら、サードパーティーの存在理由がなくなる。だから、ある程度使えて、立証してあげて、あとは“お願い”というスタンスをとっている」
「言ってみれば、アップルの『ことえり』と似たようなレベルを考えている。スペックとしては、そこそこ恥ずかしくない程度に。変換効率はもちろん大事だが、キーバインディングがすべてアサイン可能とか、そういった細かいところまで9月のリリースまで時間もないので、今後、サードパーティーにがんばっていただこうと思っている」
「今の時点では公表できないが、日本語入力のスペックを要約して言うと、10万語程度の辞書と、方向性としては軽くて速いということ。インタフェースは普通のIMEと同じですね。IMEは素人が作るわけにはいかないので、いずれ発表するが、日本の有名企業***にエンジンを作ってもらっている。結構自信ありますよ」
おお、期待しよう。最後に、BeOSの開発環境について伺った。
「私が入った1年半前は、スタッフ45名、その内エンジニアが16名いた。今は、だいぶ増えてきて、スタッフが60名、そのうちエンジニアは20名ぐらい。ここでは、仕事の役割がはっきりしていて、私は日本語環境を担当している。全体的な雰囲気は楽しいですよ。1ヵ月に1回ぐらい、ネットワークテストと称して、BeOS版『Quake』をしたりしてますよ」
(報道局 西川ゆずこ)
(左上)Be社CEOのジャン・ルイ・ガゼー氏とロックハイマー氏。ガゼー氏は、大の日本びいきとか。日本に来ると必ず、赤坂見付にある“ろばた焼き”の店に行くらしい。いつも迷って、わたしのせいになるって、ロックハイマー氏はつぶやいてました。 (右上)ロックハイマー氏、彼のオフィスで。 (左下)Be社の名物ソファー。 (右下)NetPositive担当のエンジニア、Scott Barta氏。 1年ほど日本に住んだことがあるので、日本語が少しわかるらしい(実際にしゃべっていないので、確認できなかった)。植物に囲まれたオフィスでパチリ。エンジニアは、個々の部屋を割り当てられているみたい。 |
・Be社
http://www.be.com/index.html
・販売代理店
http://www.plathome.co.jp/new/index.html#beos
*米Be社
元Appleの製品開発責任者だったジャン・ルイ・ガセー氏がAppleを退社した後に’90年に設立した会社。
**BeOS
シンメトリックなマルチプロセッシング、全面的なマルチスレッディング、64bitファイルシステム、完全なメモリー保護などをフィーチャーする。メーカー自らデジタルビデオ、デジタルオーディオなどを取り扱う“メディアOS”と位置づけている。
***(株)エルゴソフト(http://www.ergo.co.jp/)
5月28日、(株)エルゴソフトがBeOSに対応した日本語入力システムの開発に着手し、9月リリース予定のBeOS
R4にバンドル出荷すると発表した。
http://www.be.com/aboutbe/pressreleases/98-05-28_be_ergosoft.html(プレスリリース)