ケーブルインターネット、ADSLといった常時接続環境が普及するにつれ、にわかに脚光を浴びるようになったCATV/xDSL接続用のルーター。通常、インターネットに接続可能な端末はケーブルモデムに直結された1台のPCに限られるのだが、このタイプのルーター(と必要に応じてハブ)を経由することによって、複数台からの同時接続が可能になる。
この度、(株)プラネックスから、実売価格2万円台の格安ルーター『bROAD
Lanner』(ブロードランナー、以下BRL-01)が発売された。ASCII24編集部で、実機を入手することができたので、早速、接続体験レポートをお届けする。
今回の試用レポートは、首都圏下の某ケーブルインターネットで行っている。使用OSはWindows
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『BRL-01』(上)と接続概念図。下が導入後。ケーブルモデムとハブの間に挟みこむことで、複数のPCからのインターネットアクセスを可能にする。外部(WAN側)からは1台のPCとしてしか認識されない |
コンパクトなボディーとシンプルなレイアウト
パッケージを開くと、まずボディーの小ささが目を引く。写真で見ると中央の円形部がCD-ROMドライブを連想させるかもしれないが、実際は8cmサイズ程度。片手で持てるくらい小さく軽いので、置き場所にも困らない。ステータス表示部は上面の3つのLED。背面の端子部も、LAN(PC/ハブ)、WAN(モデム)接続用の10base-Tポートが各1と、ACアダプタ端子とLED、リセットボタンという、いたってシンプルな構成だ。
同梱品一覧(上)と、手に持ってみたところ(下)。大きさは、だいたいこんな感じ |
上面部のステータス表示用のLED(上)。上から順に“Status”“WAN Link”“LAN Link”。背面部のレイアウト(下) |
さぁ、つないでみよう!
早速、マニュアルにしたがって、配線開始。10base-Tの*ストレートケーブルで、BRL-01背面のWAN側ポートをケーブルモデムへ。LAN側ポートをハブに接続。電源を投入し、WAN、LANのLEDの点灯を確認する。ハードのセットアップは5分程度で完了。*モデムによっては、クロスケーブルでつなぐ必要がある。
セットアップしたところ。手前がBRL-01で、後ろに8ポートのスイッチングハブ。左手奥に縦置きしてあるのがTERAYON製のケーブルモデム。ちなみにハブを通して、WindowsとMacintosh、計2台のPCを接続してある |
“簡単設定”にやや落とし穴アリ?
次にマニュアルの“簡単設定”に従って、コントロールパネルからネットワークを選択。TCP/IPの各項目を設定*1し、再起動。マニュアルによれば、これだけでインターネットに接続できるはずだが…失敗*2。DOS窓からPINGを打ってみると、ルーター(BRL-01)は応答する。ルーターのDHCPサーバー機能も動作しており、LAN内のIP割り当ては正常に行われている。が、外部へのPINGは通じていない。どうやら、ルーターがグローバルIPアドレスをケーブル局側から取得できないでいるらしい。*1 TCP/IPが“ネットワーク”コントロールパネルの“プロトコル”タブ内に無い場合は、同パネルから“追加”する必要がある。このあたりも添付のマニュアルに、ひととおり説明が記載されている
*2 筆者の加入しているプロバイダは、固定IPではなく、DHCPによる動的なIP発行である。BRL-01は、ケーブル局側からWAN用のIPアドレスを取得し(DHCPクライアント機能)、LAN側ではハブに接続された各PCに、自動的に適当なIPを割り振る(DHCPサーバー機能)
PINGにルーターは応答するが(上)、インターネットは見られない…(下) |
ここで初心に帰り、PC単体での接続時の設定を振り返ってみた。プロバイダから指定されたコンピュータ名を、PCに付けなければならなかったのを思い出す。ということは、BRL-01に、そのコンピュータ名を付けてやればうまくいきそうだ。
マニュアルの付録項目を見ると、telnetのHostName設定で、BRL-01に端末名を割り当てることができるようだ。設定をして、BRL-01を再起動。ブラウザーを起動すると…見事にアクセス成功!
結局、30分程度でセットアップからインターネット接続までが終了した。この結果にはおおむね満足している。
アクセス成功! (上)Macからもアクセスできました(下) |
マニュアルにこういったケースについての説明がないところを見ると、接続PCのコンピュータ名までプロバイダーが指定してくるのはまれなのかもしれない。ともあれ、接続プロバイダーによって少なからず例外的な状況に陥る可能性があることは判明した。ルーターの導入を検討されている方は、ある程度のリスクを覚悟しておくべきだろう。
考えてみれば、接続PCの名前にまでプロバイダーが介入してくるのは、加入者の家のLAN構成にまで影響を与えるわけだから、かなり迷惑な話だ。(筆者のプロバイダーは、ワークグループ名まで指定してきた!)
ルーターの導入で、このような不愉快な状況を解消し、以前と同じLAN構成でインターネットに接続できる。まさに一石二鳥といったところだろう。
telnetでルーターにログインし、各種設定項目を変更できる。ブラウザーからも同様の設定が可能だが、telnetでの設定の方がコマンド入力方式で堅実な感じだ。(ブラウザー上での設定では、一部設定値が正しく反映されない現象が確認された) |
ブラウザーでの設定画面。URLにhttp://192.168.10.10(デフォルト設定値。好みのアドレスに変更可能)と打ちこむと、設定画面にアクセスできる。ずべて日本語化されており、各種パラメータ設定の他、WAN、LAN各ポートの通信状況をモニターできる(クリックで拡大表示します)
bRoadLannerは買いか?
BRL-01は、基本であるNAT/IPマスカレードを始め、ファイアウォール、DHCPクライアント/サーバー機能と、ルーターとして必要な機能は充分に揃っている。DHCPサーバー機能は、LAN内の個々のマシンにIPを割り振る必要がないため、かなり楽(もちろん、個別に固定IPを割る振ることもできる)。ケーブルインターネットやxDSL接続サービスに加入したものの、1台からのアクセスだけでは満足できない方。筆者と同様、プロバイダーから押し付けられたコンピュータ名に気持ち悪い思いをしている方。並行輸入品のルーターでは安心できないという方。そんな方々に、おすすめしたい製品だ。
BRL-01は、ハブを外部にして“コンパクト”“低価格”“フレキシビリティ”を確保した分、ハブは別途に用意する必要がある。他社製品では、4ポートハブ機能が付加されたルーター(LINKSYS BEFSR41 実売価格3万円台)や、基本機能は同等(ハブなし)だがLinuxカーネルを使用し、より詳細な設定とカスタマイズが行えるルーター(COOLGREEN Flex Router オンライン価格3万9800円)などが存在する。BRL-01との価格差、接続台数などを考慮して、自分にあった機種を選んでみるといいだろう。
ケーブルインターネット、xDSL用ルーターというのは、今が黎明期。ここでもまた、ネットワーク分野での価格破壊の先駆者、プラネックスが仕掛けてきた。bRoadLannerをきっかけに各社からさまざまな商品が発表されユーザーの選択肢が広がることを期待したい。
BRL-01の主な仕様は以下のとおり。
型番 | BRL-01 | |
ネットワーク ポート構成 |
WANポート | 10BASE-Tポート(RJ-45)×1 (半二重) |
LANポート | 10BASE-T / 100BASE-TX自動認識ポート(RJ-45)×1 (全二重) | |
アドレス変換 | NAT / IPマスカレード (最高253台) | |
DHCPサーバ機能 | LANポート側に接続されたクライアントに対してIPアドレスを自動割り当て | |
DHCPクライアント機能 | WANポート側のDHCPサーバよりBRL-01のIPアドレスを自動取得 | |
フィルタリング | TCP/IPポート番号ごとのフィルタリング (LAN側からインターネットへの接続制限のみ) |
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ルーティング機能 | ルーティングテーブルへのスタティックルートの追加設定 | |
DNSアドレス伝達機能 | WANポート側のDNSサーバアドレスを、LANポート側のクライアントに伝達 | |
PPPoE | 対応 | |
ローカルサーバ機能 | TCP/IPポート番号ごとにLANポート側の指定したホストに転送 | |
バーチャルコンピュータ機能 | WANポート側からのパケットをLANポート側の特定のホストに転送 | |
設定 | Webブラウザ / telnet (パスワード保護可) | |
アップグレード | TFTPクライアントを使用 | |
電源 | ACアダプタ | |
消費電力 | 800mA (6V) | |
外形寸法(W×D×H) | 169×115×35mm | |
重量(本体のみ) | 240g | |
パッケージ内容 | BRL-01本体, ショートコード付ACアダプタ,
RJ-45 UTPケーブル(1m), マニュアル |