世界最大の放送機器展示会“NAB2000”が、米ラスベガスのコンベンションセンターにおいて、8日からの6日間(現地時間)にわたり開催された。
NAB2000の会場となった、米ラスベガスのコンベンションセンター。COMDEX FALLでもおなじみの会場だ |
NAB2000とは、米国の放送業界団体である“NAB”(National Association of
Broadcasters)が年に一度主催する、放送業界のいわばB2B(企業対企業)のコンベンションである。
今回のNAB2000の特徴は、放送業界全体がDTV(デジタル放送)化とHDTV(ハイディフィニッションTV=高詳細TV)化へと動く流れに加え、新しいインターネット放送への本格的な取り組みを感じさせるコンベンションとなった。
米連邦通信委員会の会長を務めるビル・ケナード(William E. Kennard)氏が講演。デジタルテレビの推進者として広く知られている |
ソニーと松下が繰り広げる熱い闘い
まず、大きな流れとしては、昨年の米国でのデジタル放送開始以降、放送局のデジタル化が急速に進んでおり、それらの放送ハード機器の展示が例年よりもさらに大きなスペースを占めていた。毎年、ソニーと松下電器産業=パナソニックが繰り広げる放送機器の壮絶なバトルは、見物のひとつでもある。今回の見所は、ソニーではMPEGフォーマットのIMXを発表したことであり、そしてパナソニックはDVC-PROの新しいラインナップやSDメモリー、プラズマディスプレーなどをアピールした。
ソニーは、従来のデジタルベータカムのラインにMPEGフォーマットを加えた“IMXフォーマット”を発表することにより、コンピューターなどとの親和性を高めた編集環境を提供することとなった。従来のベータカムSPの資産を活かしながらも、新たなフォーマットへの緩やかなる移行を推奨している。それと同時にデジタル化については、1080i方式でHDTVに対応しながら、各フォーマットへはダウンコンバートする方向で今回は展示に望んでいた。
一方パナソニックは、可搬性とDV圧縮にすぐれたDVC-PROのラインナップを強化し、DVフォーマットの特性を強くアピールしている。さらに、SDメモリーカードの将来的な展望や、プラズマディスプレーなどを展示し、総合的なデジタル処理のできる放送環境をアピールする。
パナソニックのブースに展示されていた、ウェアラブルディスプレー。左側にはペンダント型のデジタル携帯型プレーヤーも見える |
インターネットとの融合が大きなトレンド
今年のNAB2000では、それらのDTVやHDTVの流れ以外に、大きな特徴として、インターネット放送を取り組もうとする動きが随所に見られるようになった。マルチメディアセッションでは、インターネット放送やポータルサイトなど、テレビ・放送業界がどのようにインターネット業界と関わるべきなのか? という問いに答えるようなセッションが多く開催された。特にハード面だけではなく、テレビとインターネットとの差別化や、収益面でのビジネスモデル、著作権の問題などが各セッションで話題となっていた。
10日には、米アドビシステムズのジョン・ワーノック(John Warnock)会長兼CEOが、インターネット放送をテーマにした基調講演を行なった |
展示会の傾向としては、数年前まで、クロマキー技術を基礎としたバーチャルスタジオが目立っていたのが、現在は、インターネット放送技術に移り変わったような印象を受けた。ただ、リアルネットワークスやマイクロソフト、アップルコンピュータなどがストリーミングテクノロジーをセールスポイントとしているのと違い、ストリーミングテクノロジーとハードウェア・コンポーネットをセットでシステム販売するところが、NAB的なセールスの在り方だったかもしれない。
そのようなシステムを展示した様々なブースでは、従来の放送システムにアドオンするだけで、インターネット放送に対応できることを強くアピールしていた。
NABといえども、その約3分の1が、インターネットやコンピューターによるオペレーションに変革してきている。ノンリニア編集、データサーバー、そしてインターネット。テレビ放送業界のこれからをハードウェアとソフトコンテンツの両方向から見ていきたいと思う。