米アドバンスド・マイクロ・デバイセズ(AMD)社の会長兼CEO、ジェリー・サンダース(W.Jerry
Sanders)氏が来日し、5日、都内で会見を開いた。サンダース氏は「AMDはGHz時代のリーダー。来年には世界シェア30パーセントを達成する」と語り、世界で初めて1GHz動作のx86互換プロセッサーを発表したメーカーとしての自信をアピールした。6月には現行Athlonより高性能な“Thunderbird”と低価格パソコン市場向けの“Spitfire”を出荷、インテル追撃の態勢をさらに強化する方針だ。
サンダース氏は、日本AMD(株)が今年2月で設立20周年を迎えたのを機に来日した。会見にはAMD社上席副社長(マーケティング担当)のロブ・ハーブ(Robert
Herb)氏や日本AMD社長の堺和夫氏、同取締役の吉沢俊介氏も出席した。
左から、日本AMD取締役吉沢俊介氏、 サンダース氏、AMD社上席副社長のロブ・ハーブ氏、 日本AMD社長の堺和夫氏 |
サンダース氏はまず、「日本は米国に続く世界第2位のパソコン市場。日本での成功は欠かすことができない」と日本市場を重視する姿勢を示した。その上で、同社製プロセッサーを日本電気(株)や(株)富士通ら大手パソコンメーカーが採用したため、「日本のデスクトップマシン市場では、AMDのシェアは'99年7月に15.8パーセントだったのが今年2月現在では35.3パーセントに上昇した。ノートパソコンでは今年2月現在で17パーセントと約6倍に伸びている」と語り、国内市場で業績が好調に伸びていると強調した。
世界全体では、昨年の売上高は29億ドル(約3045億円)と過去最高を記録。特に昨年第4四半期の売上は9億6700万ドル(約1015億円)と「驚異的な伸びを示した」という。今年第1四半期の売上は10億6000万ドル(約1113億円)と過去最高を更新。第1四半期中にAthlonプロセッサーを120万ユニット以上出荷するという目標も達成できたという。今年は売上高で前年比50パーセント増を目標にしているが、「目標達成に向け、業績は順調に推移している」と自信を見せた。
さらに今年3月6日に1GHz動作のAthlonプロセッサーを発表したことに触れ、「AMDは、1GHz動作のx86互換プロセッサーを世界で初めて発表した企業となった。我々はGHz時代のリーダーシップをとっていく」と宣言。'99年のプロセッサー出荷量は1800万ユニットだったが、今年は2500万ユニットを達成し、来年には世界シェアを10パーセント引き上げ30パーセントを目指すと語った。
この目標を実現する製品として、年内のプロセッサーロードマップを公開した。それによると、キャッシュメモリーをオンダイにしたAthlon後継コア“Thunderbird”が6月にも出荷を開始。これは従来のAthlonと同様にSlot
Aに対応するが、7月にはPGAパッケージを採用して“Socket A”に対応するThunderbirdも出荷を開始する。
年内のロードマップ |
また6月にはAthlonコアを採用してキャッシュメモリーをオンダイにした“Spitfire”の出荷も予定され、低価格パソコン市場向け製品としてインテルのCeleronに対抗する。SpitfireはSocket
Aのみで、“Athlon”とは異なる新しいブランドネームを4月中にも決定するという。第4四半期にはノートパソコン向けの“Mustang”を出荷する。
さらに来年の発表を予定する64bitプロセッサー“Sledgehammer”についても触れた。同プロセッサーは32bitプロセッサーとの完全互換で、優れた浮動小数点演算性能が特徴という。
続いて質疑応答が行なわれた。米デルコンピュータ社がAMD製品の採用を検討中との海外報道については、「パソコンメーカーのトップ10社のうち、デルだけがAMD製品を採用していない。我々はあらゆる顧客に対して製品を提供できるよう努力している。だが噂に対してはコメントを控えたい。自然な成り行きを見守りたい」と述べ、否定はしなかった。
また米マイクロソフト社のゲームマシン『X-Box』に搭載されるCPUが当初AMD製とされたにも関わらず、土壇場でインテル製品に変更された経緯については、「業界の競争はし烈で、勝つこともあれば負けることもある。ただ我々は勝ち星を多くしたい」と述べるに留まった。
質問に答えるサンダース氏 |
またマイクロソフト社が独占禁止法違反で敗訴した件についてコメントを求められると、「マイクロソフトはウェブブラウザーで65パーセントのシェアを獲得して独占だと指摘された。MPU市場ではインテルが80パーセントのシェアを持っているわけで、司法省はこちらにも配慮してほしい」と苦笑混じりに語った。
またパソコン市場の今後については、「パソコンはデジタル機器のHubになるとAMDは信じている。パソコン市場は今でもこれからも大きな市場であり、いわゆるインターネットアプライアンスを上回り続けるだろう。AMDのターゲットはパソコンであり、さらに今年はサーバー市場にも参入する」と述べ、パソコンがコンピューティングの中心として今後も大きな位置を占めるとの認識を示し、今後もパソコン市場へのフォーカスを続ける意向を示した。