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業界をリードする若手クリエーターからベンチャースピリットを学ぶ――産業復興 NEXT STAGE 阪神淡路大震災5周年記念事業より(中編)

2000年03月06日 00時00分更新

文● 天野憲一 

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2月18日、19日の両日、神戸クリスタルタワーにおいて“ベンチャースピリットで挑む新たなステージ”と題し、産業復興 NEXT STAGE 阪神・淡路大震災5周年記念事業が開催された。本稿では19日午後のクリエーターズサミットの模様を報告する。

“NOT THERE BEFORE”と題したクリエーターズサミットでは、ジャパンマーケットセンターの高田恵太郎部長をコーディネーターに、モデルのANN氏、建築家の加藤正憲氏、ルシェルブルーの社長、高下浩明氏、CGアーティストの松浦季里氏を迎え、パネルディスカッションが行なわれた。

「業界の流通形態が変わりつつある現在、新しい切り口でビジネスが求められている。このサミットでは各業界をリードする各氏に、学生時代から現代、未来について語り合っていただきたい」という高田氏の言葉でサミットは始まった。

ジャパンマーケットセンターの高田氏
ジャパンマーケットセンターの高田氏



会場の様子
会場の様子



就業のきっかけ――やる気、自信、信念が大切

まず、パネリストが今の職業に就くきっかけを語った。ANN氏は自分の子供時代について、背も低く太っていてずっとコンプレックスを持っていた。しかし、母親の「明るくて手足が長いからきっとモデルになれる」という言葉に自信を持って、モデルを目指そうとしたという。

モデルのANN氏
モデルのANN氏



高下氏は学生時代からずっと音楽が好きで、自分でライブハウスを持つ資金を稼ぐためファッション業界へ。ファッションが好きなわけではなかったが、やる気があればなんとかなると話す。

ルシェルブルー社長の高下氏
ルシェルブルー社長の高下氏



松浦氏は何かを作る仕事がしたいと思い、絵がうまいと言われて美大に入った。しかし、自分よりうまい人がたくさんいた。自分にしかできない何かを捜している時にCGと出会ったと、学生時代について回想した。同様に何かを作る仕事をしたいと考えていた加藤氏。建築の現場にはいろんな役割の人がいるが、その中で設計する仕事に就きたいと考え、建築家を目指したという。  

CGアーティストの松浦氏
CGアーティストの松浦氏



建築家の加藤正憲氏
建築家の加藤正憲氏



自分自信の価値を高めるためには? 他人の考えを積極的に吸収

自分の価値を高めるためには、という高田氏の問い掛けに、ANN氏は「たとえばいい服をたくさん着て、自分がいいと思う価値観を持つこと。ショーでもいろいろな人と話をして、自分自身と同時にデザイナーの考えも表現するようにしている」と答えた。

また松浦氏は「自分をこういう人間だとカテゴライズせず、ほかの人がいいと思うものにも興味を持つ。それが自分のものをどう見られるのか考える判断材料になっていく」と話した。

高下氏が、海外と日本との違いについて「海外にはいろんなセレクトショップがあるが、日本にはブランド直営店しかない。これからは逆に、日本やアジアのブランドを日本人が経営するショップとして進出したい」とし、加藤氏は「スイスで、ある建築家の木造建築に日本の様式が取り入れられているのを見て感動した。我々は日本人として国や町のことを、海外の人にもっと自信を持って伝えられることが大事ではないか」と語った。

パネルディスカッションの様子
パネルディスカッションの様子



自己実現のために目標を設定し、果敢にトライせよ

次に、会場の学生へアドバイスを、という高田氏の言葉に、松浦氏は「ものを創るなら自分の中から何かを出し続けなければいけない。ジャンルにこだわらずいろんなものに触れて、自分の引き出しをたくさん持つようにしよう。また自己満足ではなく、創ったものを人がいいと思ってくれるかが重要だ」とコメント。

質問する参加者
質問する参加者



高下氏は、「自分で何をいつまでにやるのかという目標を設定をすること。今は時代のスピードが速いので、考えていることを人に言うのも大切だ。そうするとやらざるを得なくなる」と話した。

加藤氏は、「一般的に日本人はプレゼンテーションが下手だと思う。自分の考えをもっと強く印象づけて伝えることが重要だ。そのためには、もっとクライアントやオーナーとのコミュニケーションをとる必要がある」とも。

また、ANN氏は「自分がやりたいことが今分からなくても、好きなことを一生懸命、長く続けるのが大切。やりたいことは人に話すとチャンスが増える。若い時は失敗も許されるので、パワフルにチャンスをつかんでトライして欲しい」と語った。

学生たちによる手作りのファッションショーも

最後の締めくくりにコーディネーター役の高田氏は「今回の参加者で一番年寄りだが、まだまだ若いつもりでいる。歳を取っても遊べるパワーを持ち続けたい」と自らの抱負を語った。「ベンチャーというとITばかりが取り上げられるが、今回クリエーターやファッション、建築業界を取り上げられたことに、開催者へ敬意を表わしたい」とクリエーターズサミットを締めくくった。

また同会場で開催されたファッションショーでは、神戸芸術工科大学、神戸文化短期大学、神戸ファッション専門学校の学生による服飾デザイン、約40点が披露された。



出品された作品の一部
出品された作品の一部



  神戸芸術工科大学は“神戸らしさ/触れる”をテーマにした作品が、また神戸文化短期大学、神戸ファッション専門学校からは学内のコンテスト作品が出品された。モデルのANN氏、ルシェルブルー社長の高下氏もショーを興味深げに鑑賞していた。

“ベンチャースピリットで挑む新たなステージ”をテーマとした今回のイベントでは、自分でなにかをやりたいと思う学生や社会人の熱い情熱を感じられた。

記事では触れなかったが、研究発表、ブース展示会も行なわれ、学生の真剣な考えや、 新しいアイデアに触れることができた。 このイベントをきっかけに、神戸が新しい時代の情報発信源となっていくことを期待したい。

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