Mac World Expo/Tokyo 2000が16日、開幕した。本稿ではデザイン&パブリッシングの視点から、本展示会をリポートする。
Mac OS Xにスクリーンのヒラギノが標準搭載
16日、印刷・デザイン業界に大きな衝撃が走った。そう、震源地はApple Computer社CEOのスティーブ・ジョブス氏だ。本日、開幕したMac World/Expo Tokyo 2000の基調講演において、ジョブス氏は、同社の次期オペレーティングシステム“Mac OS X”を紹介し、その日本語フォントとして、大日本スクリーン製造(株)の提供により『ヒラギノ・フォント』をOpenTypeフォーマットで標準搭載する、と発表した。
基調講演で紹介された『ヒラギノ』をベースにしたOpenTypeフォーマットのフォント |
Mac OS Xが標準で搭載するこの日本語フォントは、ヒラギノ明朝W3、ヒラギノ明朝W6、ヒラギノ角ゴW3、ヒラギノ角ゴW6、ヒラギノ角ゴW8、ヒラギノ丸ゴW4の6書体で、Unicode(ユニコード)に準拠している。さらに、文字数は外字も含む最大1万7000文字と写植機に匹敵する文字数に拡張されている。
ヒラギノは、プロフェッショナル・パブリッシングの世界において、大変評価の高いフォントで、同社のオリジナルフォント『千都フォントライブラリー』の1つ。
Macintosh用のPostScriptフォントの他に、Windows上ではTrueTypeで提供されており、プロフェッショナルDTPの世界における人気フォントとして定着をしている。
そのプロが認める『ヒラギノ』をMac OS Xでは標準で搭載するので、オフィスでの利用からプロフェッショナルの使用までの一貫したデザインを行なえる、というわけだ。
出力には解像度制限なし!
さらにそれだけではない。フォントの表示や出力において、解像度や出力機器の制限を設けない、というのだ。これまでDTPの世界では、印刷向けに高解像度フォントをイメージセッターなどの出力機器で出力する場合に、印刷会社や出力センターは高価な高解像度用フォントを購入しなければならず、デザインやパブリッシングの自由度に制限を加えてきた。今回のMac OS Xの対応は、フォントの呪縛に苦しんできた日本のパブリッシングを大きく前進させることになるだろう。
しかし、現状ではここまでの情報が明らかになっているのみで、これまでのPostScriptフォントとの兼ね合い、出力実績のないOpen Typeフォントで確実に高解像度出力が実現するのか、といったいくつかの疑問点や不安も残る。また、同時にMac OS Xは、新たにPDFをベースとしたグラフィックス機能である『Quartz』を採用しており、PDFをハンドリングすることができるとしているが、日本語部分のハンドリングが自由にできるのかは不安が残るところだ。
今後はアップルコンピュータをはじめ、Mac OS Xのグラフィック環境に関わっているアドビシステムズや大日本スクリーンの動向に注目したい。さらには日本語フォントの状況に大きな影響を及ぼしてきたモリサワがどういった展開を図っていくのかも興味深いところだ。