富士通とコンピューター・アソシエイツ(CA)は昨年12月、ニューヨークで行なわれた“Fall
Internet World”の会場にてオブジェクト指向データベースを核としたマルチメディアデータベースソリューション『Jasmine』を発表した。両社が共同開発したJasmineの特徴、適用分野について話をきいた。出席者は以下の4氏。
甲田一也氏
富士通(株) ソフトウェア事業本部 ミドルウェア事業部
第5開発部 課長
牧野賢二氏
コンピュータ・アソシエイツ(株) 製品企画部
ジャスミングループ 課長
太田佳伸氏
コンピュータ・アソシエイツ(株) 製品企画部
ジャスミングループ 次長
木下 聡氏
コンピュータ・アソシエイツ(株) 製品企画部
ジャスミングループ 主任
netPC Jasmine開発の経緯を教えてください。
甲田 富士通研究所では10年以上前からオブジェクト指向の技術を研究してきました。ちょうどObjectStoreやGemStoneといったオブジェクト指向データベース(OODB)が登場し始めたころです。その富士通の技術と、CAの商品化技術をもって、新しいOODBを開発しようとパートナーシップを結んだのが約2年前です。やっと発表までこぎつけました。
netPC ほかのOODBとの違いは?
太田 生産性の高いマルチメディアアプリケーション開発環境JADS(Jasmine
Application Development System)を備えている点です。たとえば、OODBの中では高いシェアを誇るオブジェクトデザインのObjectStoreは、製品そのものがC++のクラスライブラリであり、開発にはある程度のプログラミングの知識が必須でした。その点JasmineはJADSを使うことで、ノンプログラミングでコーディングができます。
牧野 JADSでは、リレーショナルデータベース(RDB)ではフォームに当たるものを“シーン(Scene)”と呼びます。エクスプローラを模したJADSの画面からオブジェクト(AVIファイルなど)を選択し、シーン上にドラッグ&ドロップするだけで、アプリケーションが構築できます。
甲田 JavaやActiveXにも対応しています。
木下 Jasmine組み込みのもののほかに、多くのサードパーティが提供する、マルチメディア、テキスト検索などのクラスライブラリも魅力のひとつです。これはRDBでいえば、データブレード(インフォミックス)、データカートリッジ(オラクル)に当たるものだと考えれば理解しやすいと思います。クラスライブラリのメソッドをサーバー内で実行することも、ほかのOODBとの違いといえます。これはRDBがストアドプロシージャという形でサーバーサイドにロジックをもつのと似ています。たとえばデータマッチングについて考えてみましょう。100枚の画像のうち、検索条件に合う5枚を表示させる場合、メソッドをクライアントで実行する場合には100枚の画像をクライアント側に持ってくるため、ネットワークに負荷がかかります。しかし、サーバー側で実行する場合は検索結果の5枚だけをもってくればいいわけです。
netPC どのような分野に向いていますか?
甲田 インターネット/イントラネット向けのソリューションに向いています。Webアプリケーションに動きをつけることも容易です。海外ではトヨタ(オーストラリア)の自動車カタログのアプリケーションを含む、8社以上の事例があります。
牧野 株価の表示などのアプリケーションにも向いていますね。RDBではすべてのデータを表としてもつ必要があるため、データ量は膨大なものになります。時系列データを扱うクラスライブラリを使うことによって、データ量はかなり圧縮できるはずです。
netPC RDBベンダもマルチメディアデータを扱えるORDBというアプローチをとっていますが。
太田 さまざまなデータをひとつのデータベースで扱うことにはやはり無理があるように思います。SQL3で拡張された機能などは大変に難しくなっています。RDBとOODB、それぞれに適した分野で使い分けることがいいのではないでしょうか。
netPC 米国ではすでに出荷が開始されていますが、日本でのリリース予定は?
甲田 今年の第2四半期を予定しています。富士通とCA、両社から提供する予定です。価格は未定ですが、米国では5クライアントライセンス付きの『Jasmine
Workgroup Edition』が800ドルから。中・大規模システム向けの『Jasmine
Enterprise Edition』は3500ドルからです。対応OSはJasmine Workgroup EditionがWindows
NT 4.0、Jasmine Enterprise EditionがUNIX(Solaris)とWindows NT 4.0です。
木下 今は米国の当社サイトから体験版が無償ダウンロードできますので、是非試していただきたいと思います。
(netPC編集部 加藤恭子)
http://www.fujitsu.co.jp/
http://www.cai.com/
※『netPC』4月号(2月24日発売)に関連記事を掲載の予定