日本電信電話(株)は、電子1個で電流を2方向に切り替えられる“シリコン単電子機能素子”の試作および動作実験に成功したと発表した。この素子は、同社が'94年に開発したシリコン単電子トランジスタを3個ぶん、同じ基板上に集積したもので、電子1個で動作する。
シリコン単電子トランジスタは、ドレーン電極とソース電極の間をトンネル障壁で絶縁し、微小な島状の導体(シリコン島)を挟んだ構造を基本とする。この構造の形成には、まず同社が開発したSIMOX(Separation
by IMplanted OXygen)技術によりシリコン薄膜を作り、LSIの加工技術でシリコン細線として切り出したのち、その線にくびれをつけるというプロセスを踏む。今回はこの技術を応用して、電気的に結合された3個のシリコン島を同時に形成し、3個ぶんのシリコ
ン単電子トランジスタを集積することに成功した。室温に近い温度環境下でも動作するという。
素子の消費電力は動作に必要な電子数にほぼ比例するため、理論的には、消費電力が現在の数万分の1のLSIを開発できるという。逆に消費電力を現在のレベルに設定すると、数万倍の集積が可能となり、コンピューターの処理能力も飛躍的にアップすることになる。
同社はまた、電子1個単位で制御できる回路の研究開発を進めたいとしており、これが実現すると生物の神経網を模した情報処理回路の構築も夢ではなくなる。(報道局 浅野広明)
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