2009年1月29日、KDDIとソフトバンクモバイルがそれぞれ2009年春モデルの発表会を開催した。前回の発表会は2008年10月末。約3ヵ月でKDDIが12機種、ソフトバンクが8機種をそれぞれ市場に送り出した。一方で、昨年のケータイ端末の出荷台数は4300万台程度、2009年は「3000万台に乗るかどうかのラインまで落ち込む」と予想するアナリストもいる。ケータイが売れない時代に負けない、魅力を放つ端末はあるのだろうか?
「ソニーブランド」フル活用するauの狙い
auは2008年秋冬モデルに12機種、今回の2009年春モデルで10機種を揃えた。このラインアップでは、より新しい提案性を持ったケータイを世の中に送り出すことで、ケータイの魅力を訴求しようとしている。特にそのキャラクターを打ち出していたのが、Cyber-shotケータイ 「S001」とWalkman Phone「Premier3(プレミアキューブ)」の、2台のソニー・エリクソン製端末だった。
サイバーショットはソニーのデジタルカメラのブランド。ウォークマンはソニーのオーディオプレイヤーのブランド。あえて言うのもはばかられるほど浸透している名前だ。これまでもそれぞれの名前を冠したケータイをリリースしてきたが、今回は端末そのものが持つデザインや機能も、そのブランド性をより追求した端末に仕上げてきた。
Cyber-shotケータイは、近頃話題のノートPC「VAIO type P」のような表面にツヤのある上質な仕上がり。そして端末自体がスライド形状、カメラのレンズカバーもスライド式(スライドして開くとカメラが起動する)、イヤホンジャックのカバーまでスライド式と、凝った作りになっている。
またWalkman Phoneでは、CDやMDなどのヘッドフォンジャックから端末付属のイヤホンマイクリモコンのジャックにライン入力すると、ケータイに着うたフル形式でCDなどの音源から録音することができる仕組みをデモしていた。
このように、ブランドが持っている歴史をうまくケータイの端末で表出させるカタチで、特徴的な、そしてどっぷり浸れる世界観をケータイ1台ずつに持たせようとする取り組みに見える。
一方で、新しいサービスはFlash対応のデコレーションメール作成機能「デコレーションアニメ」と「LISMO Video」の拡張サービス、スライドショービデオ作成の「MYスライドビデオ」。そして「au SmartSports」のエコキャンペーン、「EZナビウォーク」や「じぶん銀行」のアップデートだった。これらのサービスは既に発売されているケータイでも、アプリをインストールするなどして利用できるサービスである。auは既にたくさんの独自サービスを展開しており、その多くは最新の端末を使っていなくても利用できる。
デザインや機能、ブランドなどで訴求してauユーザーになってもらったら、次々に送り出す新しいサービスを、今使ってもらっている端末で楽しんでもらう。これが、auの基本姿勢のように映った。だから新規加入が伸びなくてもよい、今いるユーザーの満足度を高めて、長く使ってもらう。そのためにはどうするか?
ある種守りのように見えるが、KDDIが示したユビキタス社会からアンビエント社会、つまりユーザー一人一人にしなやかにフィットするモバイルサービスの世界観を実現するアプローチとして評価できる。
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