ブログやSNSがある現在、インターネットを使えば誰でも情報を公開できる。当然ながら、その目的や内容もほぼ自由だ。
得意分野の情報を書き連ねて自己顕示欲を満たす人もいれば、広告を多数貼って副業にいそしむ人もいる。エンターテインメントを目指すもの、目に付きにくい社会の問題にスポットを当てるジャーナリスティックなものなど、その内容は様々だ。
その中に、HIVに感染した人による体験記録ブログがあることは何の不自然もないだろう。しかし、膨大な情報が放り込まれるインターネットでは、特別に感動的(または扇情的)なストーリーでもない限り、そうしたサイトが脚光を浴びることはまれだ。
今回話を伺った「遺言」氏は、自身のブログ「ぼくの命はあとどれくらい」で、HIV検査から感染発覚後の治療状況にいたるまでを淡々と書き綴り、そこに関わる社会的な問題も指摘している。
そこには読者の感情を煽って盛り上げる仕掛けや、紋切り型の主張はない。書かれているのは、ひとりの青年が自身に降りかかったHIVという病気に対して考え、記録し、ときに悩むという、飾りのない感情そのものだ。
だが、インターネット上で「事実をさらす」ことは匿名性の暴力に身をさらすことでもある。顔の見えるインターネット 第41回は、そんな遺言氏が今なおブログを続けている理由、そしてブログを通じて得られたものについて聞いた。
ぼくの命はあとどれくらい
遺言氏のHIV感染が発覚した2ヵ月後の2006年9月にスタートしたブログ。2007年末までは、通院の現状や費用などをまとめた記録簿的な日記が中心だったが、2008年は関連する社会的な問題をテーマにしたジャーナリスティックなシリーズ記事がメインとなった。
現在は900PV/日前後の日が続くが、一時期数十万PV/日を超えたこともある。
(次のページ:そもそもブログを始めようと思った理由は)
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