半減した携帯電話端末の売り上げ
携帯端末業界が、深刻な不況に見舞われている。今年8月の国内出荷台数は216万台と、前年同月比マイナス49%の大幅減になった。
この原因は、携帯電話キャリアが販売店に出していた販売奨励金を止め、端末を買い切りにしたことだ。「1円端末」は姿を消し、平均1~2万円だった端末は4~6万円の定価で売られるようになった。おまけに割賦販売で2年間は拘束されるため、買い替えサイクルが伸びたのだ。
他方、携帯電話キャリアは軒並み増益だ。特にNTTドコモの2008年3月期決算は、売り上げは4兆7118億円と1.6%減ったが、営業利益は8083億円と4.5%増だ。この原因は、販売奨励金が減って営業費用が1111億円も下がったためだ。端末メーカーが泣いて、キャリアが笑ったわけだ。
総務省のつくった「官製不況」?
こうした変化が起こった原因は昨年、総務省が「販売奨励金は不透明で、端末に競争原理が働かない」として、廃止を求めたためだ。これは法的な規制ではないが、もともと販売奨励金がキャリアの重荷になっていたので、彼らは行政指導を大義名分にして販売奨励金を廃止した。販売店とメーカーからは「これは総務省の作り出した官製不況だ」と怨嗟の声が上がっている。
果たして、そうだろうか。日本のようにキャリアが端末の仕様を決め、生産された端末を全量買い取って販売店に多額のリベートを出し、開発から販売まで垂直統合する産業構造は、世界に例を見ない。端末メーカーは、キャリアが全量買い取ってくれるのでリスクはゼロ。そのため、コストを考えないで高価な端末を開発するが、奨励金で安くなるため、消費者も価格を意識しないで豪華な端末を買う。
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