まだまだ一般にはなじみの少ない「燃料電池」。この燃料電池を手軽に体験できるキットが発売となった。
お酒で発電できるってホント?
ホントなのである。お酒といってもエタノール(エチルアルコール)のことだが。
植物や微生物から作りだせるバイオエネルギー。もともと大気中の二酸化炭素が固定されたものなので、燃やしても二酸化炭素を増やさないクリーンなエネルギーとして注目される。現在は、自動車などのエンジン向け燃料として生産が拡大されている。
一方で、燃料を燃やす(急激な酸化反応を起こす)のではなく、ゆるやかに酸素と化学反応させて電気(エネルギー)を直接取り出すのが燃料電池だ。エタノールを使うものは「直接エタノール形燃料電池(DEFC)」と呼ばれる。
前置きはこれぐらいにしよう。今回紹介するのはホライゾン フュエルセル テクノロジーズが発売した「バイオエネルギーキット(FCJJ-22)」(価格1万8000円)だ。直接エタノール形燃料電池で発電し、その電力によって羽根の付いたモーターを回すことができるという。どうしても触りたくなり、無理を言って国内に入ってきたばかりのサンプル品をお借りすることにした。
キットの中には、タンクが一体形成された本体があり、そこに燃料電池セルと小型モーターが取り付けられている。
同梱物は、説明書(出荷時は日本語版)と羽根(プロペラ)、計量カップ、リトマス試験紙である。準備といっても、本体を取り出して、モーターの回転軸に羽根を取り付けるだけだ。続いて燃料を用意する。
なお、この製品は本来、理科教育関連製品(いわゆる教材)として作られているのだが、お酒を飲んで仕事をする(羽根を回す)というのは大人の雰囲気も漂う。また、小規模ながら実用になるDEFCでは、世界初の技術でもある。試してみたくなったとしても不思議ではないだろう。
日本酒(純米酒)を用意してみた
本キットのDEFCに適した燃料は、5~15%濃度のエチルアルコール水溶液となっている(推奨濃度は10%)。性能を損なわずに使い続けるためには、95%程度の濃度で売られている消毒用エタノールを付属の計量カップに少し(6ml)だけ入れて、アルコール濃度が10%になるように60mlの目盛りまで水(蒸留水)で薄める。どちらも薬局で販売されているので、入手性はよいだろう。
このエチルアルコール濃度を「度数」と言い換えれば、ワインや日本酒など、軽めのお酒といったところだ。それを知ったら、お酒で発電してみたくなるのがサガである。燃料が残ったら私が舐めることも考えて、純米酒を用意した。
度数も15(15%)でDEFCでの発電にちょうどいい。なお、本来なら前記のように正しく調合した燃料を用いるべきである。そのほうが不純物が少なく、DEFCを劣化させてしまうこともない。説明書にも、エチルアルコール+蒸留水で一通りの実験を行なった後に、お酒などで試すように記されている。その場合も、糖分などを多く含む醸造酒(日本酒、ワイン)ではなく、蒸留酒(焼酎、ウォッカなど)を使い、さらにアルコール度数を20%以下になるように薄める必要がある。