富士山頂なみの低気圧、開発の秘訣はメーカーの「総合力」にあり!
「これくらい低気圧にすればいい」という結果は分かったものの、それを冷蔵庫に組み込むためにはさまざまな難関があったと話すのは、冷蔵庫設計部の技師・石塚正展さん。
はじめの難題は、完全な密閉状態をつくるパッキンだ。1mmの隙間も空いてはならず、それでいて清潔感を保つために二重のパッキンを採用した。
パッキンのノウハウは、炊飯器や食器洗浄器などを手がける茨城県日立市の多賀事業所で教わってきたという。大手家電メーカーならではの「総合力」が開発に生かされているのだ。
だが、密閉性よりもはるかに苦労したのは「開けやすさ」の追求だった。ここでついに生まれたのが「シュー」構造だ。
気圧の下がった部屋は、外側から100kgf以上の力がかかっている。どこかに圧力を逃がすためのスイッチをつけなければ、開くことはできない。だが、ユーザーが一回ごとにスイッチを押して空気を抜くという面倒はかけたくなかった。
「軽い力で引くだけで、圧力が抜けるような仕組みはできないか」。この難題に半年間悩まされ、ついに引き出しハンドルの裏側に栓をつけることで「引き出すと同時に、シューッと音がして圧が抜ける」仕組みを完成させた。
また「シューッ」音も試行錯誤をくりかえしてできたものだという。笛のような構造を持たせ、音の調子や大きさ、長さを何度となく試し、インフォメーションとして聞きたくなる音を目指したのだとか。
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