イー・モバイル(株)は、「モバイルブロードバンド」をキャッチフレーズにして、大都市圏を中心にデータ通信サービスを提供してきた企業だ。同社は28日、いよいよ電話サービスという新しい領域に踏み出す(関連記事)。
携帯電話/PHSサービスといえば、NTTドコモ、au、ソフトバンク、ウィルコムといった強大な先駆者が存在する分野になる。最後発のケータイ会社としてこの市場に「殴り込み」をかけるイー・モバイルは、果たして何を武器に戦おうとしているのだろうか。
今回は企画や技術の担当者を取材し、開発時に何を目指したのか、端末やサービスに対してどんな思い入れがあるのか、その胸中を語ってもらった。前編では、イー・モバイル内で、台湾HTCや(株)東芝と協力して電話端末を企画した、ハードウェア担当者の話をまとめていこう。
苦労して実現したローミングサービス
── 電話端末の開発をスタートしたのはいつからですか?
イー・モバイル担当者(以下、EM) 1年半以上前の話になります。総務省から携帯電話事業の免許が認可された2005年11月頃から、協力していただける企業を探し始めました。
端末の開発に取りかかったのはその後で、そこから1年半から2年近くかかりました。これは普通の携帯電話を作る場合に比べて、1.5倍ほどの開発期間になります。この長い期間、弊社グループで移動機開発を担当するイー・アクセス㈱とともに音声サービスに向けてがんばってきました。
── その1年半を振り返って、苦労した点はなんでしょう?
EM 一言で言えば、すべてが初めてだったことでしょうか。音声サービスへの新規参入ということで社内のあらゆる部門と仕様レベルから構築することが多々ありました。ただし、1年間データサービスを提供してきたことがステップにあったのは助かりました。
中でもいちばん苦労したのは、国内初の3Gにおけるキャリア間ローミングになります。通常のイー・モバイルのネットワークでのテストに加え、ローミング提携先となるNTTドコモさんのネットワークでの試験も必要になりますので、開発の負荷としては通常の端末開発よりその分高くなりました。弊社は1.7GHz、NTTドコモさんは2.1GHzと、使っている電波の周波数帯が違うため、大変だったのは端末の作り込みとそのテストですね。
── ローミングはどうやって実現していますか?
EM 東芝端末に搭載されている、複数の周波数に対応できるクアルコムのチップセットにより実現しています。
── ちなみにNTTドコモも東名阪エリアで1.7GHz帯のサービスを提供していますが、そこもつながりますか?
EM 東名阪はローミングエリアに入っていません。また、弊社とNTTドコモさんのローミングエリアがかぶる場合、弊社のネットワークに優先的につながるようになります。
SIMロックフリー
編集部の調べによれば、S11HTは、日本の携帯電話事業者としては珍しく、他社のSIMカードを差し替えて使える「SIMロックフリー」の状態で出荷される。イーモバイルの保証対象外の行為となるが、端末自体は3G/HSDPAのほか、GSM/GPRS/EDGEに対応しているので、海外でSIMカードを購入して現地で使うことが可能だ。