ウルトラマンで有名な(株)円谷プロ。同社と資本関係、人的関係、取引関係などはないが、アジア諸国を中心にウルトラマンのキャラクタービジネスを展開していた(株)円谷チャイヨーという会社があるのをご存知だろうか?
チャイヨーの代表取締役社長であるソムポーテ・センドゥアンチャイ氏は、1976年に当時円谷プロの代表取締役社長だった故円谷皐氏(円谷英二氏の次男)とウルトラマンに関する著作権譲渡契約を結んだと主張。これまで海外でウルトラマンキャラクタービジネスを展開してきた。
円谷プロは、訴訟に踏み切ったが、日本においては敗訴。日本の最高裁は2004年4月にこのソムポーテ氏の主張を認める判決を下した。逆に2006年5月には、このソムポーテ氏から「日本以外のウルトラマンの独占的利用権を侵害した」と12億5000万円の損害賠償請求を求める裁判を起こされてしまうなど、同社はヒーローでも乗り切れない逆風に頭を悩ませてきたのだ。
一審と一転して逆転勝訴──ウルトラマンの底力?
そんな円谷プロに光明が見えた。
1997年からタイで争ってきたチャイヨーとの裁判で、タイの最高裁が一審の内容をしりぞけ、円谷プロの訴えを全面的に認めたのだ。
2000年4月に出された一審の判決では「円谷プロこそが唯一のウルトラマン作品の著作権者である」点については認められたものの、「初期ウルトラマン9作品については本契約に定められている通りチャイヨーに譲渡されたものであり、当該9作品についてのタイにおける著作権はチャイヨーに帰属する」とされていた。
円谷プロはこれを不服として2000年7月に上告していたが、今回の判決では円谷プロこそが「ウルトラマンシリーズ」などの唯一の著作権者であり、ソムポーテ氏が根拠としてきた契約書も偽造されたものであり無効だとされている。
今回の勝訴で円谷プロが海外でのビジネスを展開していく上での最大の障壁が取り除かれた形となる。また、同地で係争中の数十件の訴訟に関しても解決に向かうと見られている。円谷プロの親会社である(株)ティー・ワイ・オーの担当者によると、タイ以外の地域でのビジネスに関しては、地域ごとに法律が異なるといった事情があり、依然「悩ましい状況もある」というが、今回の判決でウルトラマンの生みの親である「円谷プロ」が、世界各国にウルトラマンを発信していく上で大きな追い風になるのは確かだろう。