幻の国産RPN電卓
一方、世界の電卓市場で大きなシェアを獲得したはずの「電卓王国」の日本では、なぜかRPN電卓が作られなかった。なぜ日本で、このタイプの電卓が作られなかったのか? HPの電卓は輸入されていたから、私のまわりにもRPN電卓ユーザー(いまもコレしか使えないという人も含めて)がいるのだが、日本メーカー製というのは聞いたことがなかった。
ところが、ひょんなことから日本メーカーでおそらく唯一のRPN電卓というのを作って売っている会社があることを知った。それは、かつて「オムロン・ショック」によって電卓戦争の火ぶたを切って落とした立石電機の「12SR」というモデルである。海外向けのOEMモデルでは、他にもRPN電卓を作っていたメーカーはあるが、自社ブランドで日本メーカーが、RPN電卓を作ったのはこれだけなんではないか? さっそく、立石電機(現オムロン)の広報に問い合わせてみると、このモデル自体についての資料も残っていないという。どうやら、12SRは輸出専用だったようなのだ。
それで、ネットの中を探しまくっていると1時間くらいかけてありました。オランダのクラシファイドアドサイトで見付かった。翻訳サイトを駆使しながらそのサイトに会員登録もして、さっそく「買いたし」とやってみた。オークションのようにガチガチのシステムではないので、出品者からゆるりとメールが届くのを待っていたのだが、なんと、その日、家に帰るとオランダから留守電が入っていた。それから簡単なメールのやりとりをして、1週間ほどで12SRをゲットできたのだった。
OMRON 12SRは、1977年製の単三乾電池3本またはACアダプタで動作する関数電卓で、大きさは16.2×8.5×3.5cm、重量は278g(電池込み=実測)。マニュアルが英語とドイツ語で書かれているということは、オランダ以外でも販売されていたに違いない。
スタックの構造は、HPの電卓と同じように機能する。つまり、あのX、Y、Z、Tの4つのスタックもそのままに使えるということだ。オムロンの当時の担当者が分かるわけではないので、何とも言えないが、RPN電卓の市場性を理解して製品に盛り込もうと考えて作られたことだけは確かである。