今回のテーマは、回転式のセレクターである「ジョグダイヤル」だ。
これは僕が気に入っている、ケータイのインターフェースの1つであるが、「ジョグダイヤルの代名詞」とも言えるソニーエリクソンの沈黙によって、最近ではあまり取りざたされることがなかった。
しかしこの冬、数年の時を経て、ジョグダイヤルがついに復活ののろしを上げた。
まずは2007年10月にauから「W53S」がリリースされた。そして11月下旬以降、ドコモから「SO905i」「SO905iCS」が順次出荷される予定だ。これらの3つの端末には「+JOG」というブランド名でジョグダイヤルが搭載される。
操作で一番使うのは「選択キー」
ジョグダイヤルを使った操作がいかに快適か。それはほかのインターフェースと比べてみるとよくわかる。
ケータイでメニューを移動したり、画面をスクロールしたりするためのインターフェースと言えば、カーソルキーやスティックなどがオーソドックスなものだろう。
改めて意識しなければ「そんなこともしていたね」と気付かないほど日常的なことだが、これらの選択キーは、普段ケータイを使っている中で、押しっぱなしと連打の繰り返しである。
例えば電話帳を検索するとき。1文字目こそダイヤルキーから頭文字や「あかさたな」の行頭を入力するが、あとは目的の人の名前が現れるまで、下キーを押し続けるか、下キーを連打して探して、中央の決定キーを押す。
もちろん端末によっては、左右の矢印キーでページ送りが出来たり、リストに番号が振られていて、ダイヤルキーを押せば選択が出来るが、それは直感的ではないし、矢印キーとダイヤルボタン両方に指を運ぶのも面倒くさい。
機種ごとの「慣れ」が必要になる
そして、この押しっぱなしと連打の操作には、どうしても慣れが必要になる。
押しっぱなしにしたときに連続入力が始まるタイミングや、加速感を設定できるケータイはほとんどなく、目当ての項目にピタッと止めるのが至難の業なのだ。たいていは見つけた瞬間に指を離してしまって数回追加で押すか、通り過ぎてしまって上キーで戻る必要がある。
連打では通り過ぎることはまずないが、矢印キーのクリック感や端末の上での場所によっては連打がしにくく、そもそもあまりエレガントな動きではない。
メニューを選択するとき、漢字変換や予測変換の候補を探すとき、ケータイウェブのページを閲覧するとき、ワンセグのボリュームを上げるとき。あらゆる場面で押しっぱなしと連打を必要とする操作が隠されているのだ。
もちろんメーカー側も、押しっぱなしと連打をさせない工夫を投入してきている。
最もメジャーなのは端末側面に配置されたページ送りのシーソーキー。1回押すと次のページに表示内容が入れ替わるため、連打回数は減る。しかし内容が入れ替わってしまって、自分がどこを見ていたのか見失うことも多い。
NEC製端末にある「ニューロポインター」(関連記事)、シャープ製端末に見られる「タッチクルーザー」(関連記事)は、それぞれPCのトラックポイントやタッチパッドのように自由にカーソルを操作できるため、押しっぱなしと連打を減らしている(これらはいずれ採り上げようと思う)。
そんな中で最もよくできたケータイのスクロールデバイスが、ジョグダイヤルなのだ。
(次ページに続く)
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