「ビジネス・インテリジェンス(BI)」という用語については改めて説明するまでもないだろう。
エンドユーザーがシステムと直接的に対話をすることで、データのさまざまな分析を行なうためのテクノロジーだ。BIにおいて分析対象となるデータは、通常のRDBMSあるいは特殊な多次元データベースに保管された数値データなど、いわゆる定型データが中心だ。
これに対して、サーチが対象とするデータは非定型データ、すなわち、WordやPDFなどのさまざまな形式の文書データ、PowerPointのスライド、電子メールなどだ。また、イメージ、動画、音声などのマルチメディア(これらは本質的に非定型データだ)に対するサーチの活用も進んでいる。
BIとサーチの棲み分けは常識?
このような「BIは定型データ、サーチは非定型データ」という住み分けは、IT関係者にとっては常識的なものであり、議論の余地はないようにも思える。
しかし、「エンドユーザーにとってどうなのか」という点は、十分検討に値するだろう。
当たり前のように考えられているBIとサーチの区分は、現在のテクノロジー上の制限による人為的なものなのではないだろうか? すなわち、従来型のRDBMSが定型データの管理にフォーカスしており、XML対応などのイノベーションはあるものの非定型データの管理についてはまだまだ課題を残しているという技術的制限がもたらした区分なのではないかということだ。
実際この区分は、エンドユーザーにとっては「あまり本質的とは思えない」こともあるだろう。エンドユーザーの要求が「製品xyzにある社内情報をすべて知りたい」というものである時に、「定型データについてはBIを使ってください、非定型データについてはサーチを使ってください」というのはシステムの都合であって、エンドユーザーの利便性を追求したものとは言えないだろう。
今まで以上に定型データの処理と、非定型データの処理の融合、すなわち、BIとサーチの融合が必要とされている。
また、BIベンダーのマーケティング戦略上の立場から言っても、「Google」を中心とするサーチ・テクノロジーに対して、市場の注目が高まっている点を無視することはできない。この点もBIとサーチの融合を後押しする結果になっている。
すでに進行中のBIとサーチの融合
実は、BIとサーチの融合の動きはすでに始まっている。
コグノスやビジネス・オブジェクツなどの大手BIベンダーはグーグルやFASTなどの大手サーチ・ベンダーとパートナーシップを結んでおり、BIアプリケーション内に保管されたさまざまな要素(例えば、グラフ、レポート、クエリー)をサーチ・エンジンで検索可能にしている。
エンドユーザーが「製品xyzにある社内情報をすべて探せ」と要求すれば、xyzに関する文書、スライド、メールなどだけではなく、xyzを含むBIレポートやグラフも一括して表示されるということだ。これは、エンドユーザーの利便性を大きく向上するだろう。
このような「BIとサーチの融合」を実現することは、テクノロジー的にはさほど難しくない。BIのシステムが持つ内部的なメタデータ(グラフのタイトル、項目名など)をサーチが提供するクローラー(検索ロボット)が、インデックスできるように公開すればいい(あるいはアクセスのためのAPIを提供する)。
実現の容易性の割に得られる効果は高いと言えよう。
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