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バーチャルワールドサミットを終えて

【レポート】「口コミの力」を知るメタバースの仕掛け人

2007年10月23日 16時13分更新

文● チジー・ディリー、撮影●萩原 淳(パシャ)

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ドラマ公開に合わせて初のビューアー「OnRez」をリリース


 視聴者が謎解きに参加するにはもちろん、Second Lifeに入らなければならないのだが、エレクトリックシープカンパニーはこれに合わせて、新しいSecond Lifeビューア「OnRez」を同日公開する。新規ユーザを含む視聴者からのアクセスを見込んでいるという。

 このビューアについてリンデンラボの関係者たちはどう見ているのか。バーベック氏に尋ねると「(CEOの)フィリップも含めて、リンデンラボのみんなはとても喜んでいるし、楽しみにしているよ。Second Lifeの活性化に貢献できると思っている」と答えてくれた。

 リンデンラボは、もともとサードパーティによるサービス展開や活性化を視野にいれ、クライアント向けビューアーもオープンソースを公開している。エレクトリックシープカンパニーは、従来からSecond Lifeのオープンソースコミュニティーに参加し、Google Earth、Multiverse、Areaeといった技術との連携やユーザビリティーを検証しながら、アプリケーションの研究開発にも力を入れてきていた。

 OnRezの特徴をバーベック氏は、従来のリンデンラボによるビューアーと比較して「ダウンロードも簡単、一般ユーザにとって易しいインターフェースで使い勝手がいいものになっている」と述べる。

 同社は、セカンドライフ用の検索サービスをウェブ上でも提供しているが、彼らの技術による新ビューア上の検索システムがどれほどのものかも気になるところだ。また、最近、Second Life内の滞在時間が多いユーザーからは「ウェブ情報を中で見たい」という要望もあがっている。

 今回のビューアー上では、まさにウェブ上の情報も閲覧することができる。こうしたさまざまな観点からも、新ビューアー公開後のユーザ評価が大いに気になるところだ。



ソーシャルメディアの影響力を知っている


 ところでバーチャルワールドサミットの行なわれた翌日19日。セカンドライフ内の「OnRez Event Center」で、エレクトリックシープカンパニーの定例会が行なわれ、CSI:NY inSecond Lifeの担当プロデューサーであるダニー・オーデル(Danny Odell)氏による、制作秘話を含めたトークセッションが行なわれていた。

 ここでは少数のユーザーを相手にしたトークが繰り広げられるわけだが、コアなやりとりにより、信頼を築き上げる重要性や、口コミ力やブログなどでの発信力の強さを同社は知っている。ここまでの総合的なインタラクティブイベントをカバーしているところが、現在メディアエージェンシーとして成功を収めている企業だと言える。

 日本でも大手テレビメディアがSecond Lifeに次々と参入している。今のところアイドルの分身をインワールドに投入しファンとの交流を図ったり、アバターが中で歩き回ってSecond Lifeを紹介したり、といった内容程度に留まっている。

 エレクトリックシープカンパニーの事例を聞いて、新しいメディアとしての使われ方(それが検証段階であったとしても)や、既存メディアとバーチャルワールドをクロスしたメディアミックスへの試みは「日本に比べるとかなり先を行っている」と率直に感じた。

 アメリカからは、早くも企業のSecond Life撤退やユーザー数の減少といった話題も流れてくるが、こうした大手放送網がここまで力を入れて「トライ」している姿を見ると、やはりバーチャルワールドの次世代メディアとしての大きな可能性を感じずにはいられない。

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