ネットバブル期に一度流行したものの失速したASP。それが欠点を克服して再登場したものがSaaSである。ブロードバンド回線の普及とともに伸びていくSaaSは、初期費用をかけずにシステムを導入したい企業に歓迎されている。
SaaS・ASPとは?
「次世代ASP」と注目され、今や流行語になりつつあるSaaSだが、従来のASPとはどこが違うのだろうか。
「ASPもSaaSも、そしてオンデマンドと呼ばれているものも、根本的な違いがあるわけではありません。さらに、以前のASPとほとんど同じサービスを、時代に合わせてSaaSと呼んでいるベンダーがあったりするので、ややこしいのです」
というのは、野村総合研究所で主任研究員を務める城田真琴さん。城田さんはSaaSをはじめとするソフトウェア全般を専門とするITアナリストだ。
「簡単にいってしまえば、今までのASPよりも進化して使いやすくなったサービスがSaaSです。1999年から2000年にかけてのネットバブルのころのASPは、ブロードバンドが普及していない環境で、クライアント・サーバー型のアプリケーションをネット越しに使うものがほとんどでした。ネット経由で使うことを前提としていなかったアプリケーションを、遅い回線で使うのですから、ユーザーの不満が出るのは当然です。また、当時は顧客企業1社に対してサーバーやデータベースを1台ずつ用意するシングルテナントというタイプだったので、ベンダー側の負担も多く、格安の料金が提供できなかったという背景もあります」
ネットバブルの崩壊とともに、黎明期にあった多くのASPが姿を消したが、それは登場する時期が早すぎたことが原因で、ASPの基本的なコンセプトが間違っていたからではなかった。
「たとえばライセンス型のCRMソフトウェアは、千万単位、場合によっては億単位の初期費用が必要になります。しかしASP型のサービスであれば、初期費用がかなり低く抑えられます。部署単位で手軽にシステム化したいというようなニーズには、うってつけなのです」