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EOSユーザーに“最適化”されたポータブルフォトストレージ

【レビュー】MEDIA STORAGE M80

2007年08月07日 10時00分更新

文● 行正和義

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メモリーカードの大容量化&低価格化が急激に進んでいるとはいえ、デジタルカメラ自体の高画素化の流れも止まるところを知らない。特にデジタル一眼レフカメラや高機能コンパクト機を購入して写真にこだわり始めると、1枚あたり数MBとJPEGに比べてファイルサイズの大きなRAWデータで記録したくなるもの。となると、出先でのデータバックアップとしてデータストレージの必要性はこれからも高そうだ。


キヤノン(株)/キヤノンマーケティングジャパン(株)の『MEDIA STORAGE M80』は、80GB HDDを内蔵するポータブルフォトストレージで、特に同社のデジタル一眼レフカメラ“EOS”(イオス)シリーズとの併用を意識しているのが大きな特徴だ。

MEDIA STORAGE M80

キヤノンの『MEDIA STORAGE M80』

広視野角タイプの3.7インチ(VGA表示)液晶パネルをメインディスプレーとする操作性は、右にカーソルキーとズームボタン、左にMENU/INFO/ゴミ箱が並ぶなど、“EOS DIGITAL”シリーズに極めてよく似ている。さらにカメラであればシャッターボタンに相当する上面右側にもボタンが配置されている。惜しむらくはシャッターボタンの前に電子ダイヤルがない点で、画像の送り/戻しや拡大/縮小といった操作は、カーソルキーやズームボタンで行なう。ともあれ、電子ダイヤルがないのが不思議なくらい(手にすると人差し指がダイヤルを探してしまうほど)に、“EOSっぽい”印象のある操作系となっている。

M80の前面

レバー式の電源ボタン、カーソルや各種ボタンなど非常にEOSっぽいデザインとなっており、EOS DIGIALにもこれくらいのサイズの液晶が欲しくなるほどだ

M80の背面

本体背面部。というか、一眼レフカメラで言えば前面部。グリップモールドまで付いており、シャッターボタンの位置にはバックアップボタンもあってレンズマウントのないカメラ風となっている

ボディーサイズそのものは厚みの少ない一眼レフデジタルカメラといったところで、グリップ部にはホールド性を高めるためのラバーが巻かれ、両手で持ったときの印象は“一眼レフ機とコンパクト機の中間くらいのカメラ”といったところだ。ボディー素材は表面がEOSなどと同様の高強度樹脂(エンジニアリングプラスチック)。内部にマグネシウム合金のフレームが入っているのも、EOSなどと同様だ。これは内部HDDの保護のためだが、持ったときの“がっしり”とした感じは頼もしい。

電源は本体下部から装着し、ダルマ型断面の専用リチウムイオンバッテリー『BP-511A』を使用する。これはEOSシリーズ(5D、30D)と同じものなので、予備バッテリーや充電器も共用できる。

左右両側面

グリップのある右側には太めのストラップを付けることができ、手を通して握るため片手で持ったときでも落としにくい

基本操作は、本体下部にあるCFカードスロットもしくはSDカードスロットにメディアを入れ、メニューからバックアップを選択すれば、HDDにコピーされる。バックアップはCFスロット、SDスロットそれぞれ個別に指定できるほか、両方同時実行(カードが刺さっていれば)も指定できる。本体右上のカメラで言えばシャッターにあたるボタンが“両方ともバックアップする”機能なので、バックアップするのであればカードを入れて、カメラのようにシャッターボタンを押すだけの操作となる。

なお、設定で“バックアップ後にカード内を消去する”という動作はあるものの、メニューからカードのフォーマットや画像を消去する機能は用意されていない。これは不用意にデータを削除しないようにとの配慮だろう。

上面

上面にはコネクター部が用意され、USB、AV出力、DC入力端子が並ぶ

底面

底面にはメモリーカードスロットが左右に並ぶ

転送した画像は転送ごとにフォルダー分けされて記録され、液晶ディスプレーでの再生・表示でもフォルダーごとに表示される。再生時のズームや撮影時情報の表示、縦位置で撮影した画像の“90度回転表示”などの機能も、同社のデジタルカメラと同様だ。対応するファイルは、静止画ではJEPGとTIFF、EOS DIGITALシリーズで撮影したRAWデータ。さらに、動画ファイルのMotion JPEG圧縮AVIファイル、MPEG-1/-2/-4に加えて、音楽ファイルとしてMP3、WAV形式の再生も可能なほか、HDD内の画像をスライドショー表示する際に音楽をBGMとして再生することもできる。また、画面上のキーボード(ソフトウェアキーボード)を使ってフォルダーに名前を付けられる(アルファベット+英数字、もしくは“お気に入り”などの予約文字列の選択)ほか、フォルダー間のコピー、並べ換え、フォルダーサムネイル画像の指定などが行なえる。

このほか、USBでEOS DIGITALシリーズと接続することで、撮影画像を直接本機のHDDに記録する機能もある。これにはEOS側に『ワイヤレスファイルトランスミッター WFT-E2』(EOS-1D Mark III専用アダプター)を装着する必要があり、WFT-E2自体が手軽な装置ではない(10万5000円)のだが、カメラに接続できるとにかく大容量な記録デバイスとして利用できるのはプロ/ハイアマユースで大いに重宝するだろう。

操作画面

バックアップされた画像はバックアップごとにフォルダー分けされ、画面表示や撮影データ表示も可能。設定メニューで選択することにより、バックアップ時にカード内容を消去するかどうかを選択できる

やや大きめとはいえ平たいボディーや持って見ると意外と軽いため一眼レフ機と一緒に持ち歩くにも負担は少ないだろう。操作そのものはマニュアルレスでも使えるほど簡単で、とくに分秒を惜しむような撮影の現場では、電源を入れてメディアを挿入し、バックアップボタンを押すだけでコピーが開始されるのは非常にありがたい。

バックアップ速度はSDカードで毎秒約3.8MB、CFカードで毎秒4.1MBとなっており(いずれもメーカー公称値)、実際に約510MB分の画像データを40倍速のCFカードから転送してみたところ、約2分30秒でコピー動作は終了したのでほぼカタログ値といったところだろう。ただし、バックアップではデータ転送後に画像検証(ベリファイ)動作が行なわれ、こちらも転送とほぼ同程度の時間をとられるため、作業終了までの時間は約5分50秒かかった。

付属品一覧

製品には本体がぴったりと収まるセミハードケースが付属(このほかAVケーブル、USBケーブルが付属する)。充電器および充電池はEOS DIGITALなどで使用しているものと共用なので、すでに持っているユーザーのために本体のみのセットも欲しいところ

ポータブルストレージには、単にバックアップするだけのものからハイエンドなカラー液晶ディスプレーによってビューワー機能を重視したものまで、実にさまざまな種類がある。例えばセイコーエプソンの“P”シリーズでは各社のRAWデータやより広い色空間“AdobeRGB”(静止画向け)、“xvYCC”(動画向け)などに対応するという利点があるわけだが、本機の場合はカメラメーカーのキヤノンが発売するだけあってEOS DIGITALシリーズとの機能や操作の親和性は大変高く、一緒に持ち歩く際のデザイン的統一感も高い。EOSユーザーであれば「買い」の1台だろう。



MEDIA STORAGE M80の主なスペック
製品名 MEDIA STORAGE M80
記録メディア 1.8インチHDD 80GB(使用可能領域:約74GB)
ディスプレー 3.7インチTFT液晶(約30万7000画素、640×480ドット)
メモリーカードスロット CF TypeI/II(8GBまで)、マイクロドライブ、SD/SDHC、MMC
対応フォーマット 静止画:JPEG、RAW(キヤノン製品のEAWのみ)、TIFF
動画:Motion JPEG、MPEG-1/-2/-4
音:MP3、WAVE
インターフェース CFスロット、SDカードスロット、USB、AV出力、DC入力
電源 リチウムイオン充電池(BP-511A)
動作時間 約3時間21分(スライドショー再生)
本体サイズ 139.5(W)×33.5(D)×80.5(H)mm
重さ 約370g(本体のみ)


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