目新しくはないが、革新的な技術
現在のMacは、煩雑なTCP/IPの設定をしなくても、繋ぐだけでプリンターや隣のMacの一覧を見ることができ、一覧から選ぶだけで印刷したりファイル共有を行なえる。Macには“Bonjour”と呼ばれるネットワークの支援サービスがあるからだ。同じように Back to my macも煩雑なダイナミックDNS やポートマッピングの設定なしに、リモートアクセスを実現する機能となるだろう。
Bonjour自体は、インターネットの標準仕様にて定められたLinklocal Address、MulticastDNS、DNS-SDといった仕組みを集めたものになる。それぞれは確かに既知の技術だが、そうした技術を組み合わせることで、ネットワークでつながることによる利便性を、IPアドレスの意味も知らない普通の人に解放したという革新的な機能となった。
back to my macも、おそらくはダイナミックDNSなどの既知の技術を集めたものだろう。個々の技術はありきたりかも知れない。しかし、煩雑なリモートアクセスを1クリックで実現できるなら、それはすでに革新的な機能ではないだろうか?
アップルがアップルたるゆえん
これはMac OS X以降のアップルの技術全般に共通する話だ。
個々の技術の目新しさを競うのではなく、むしろ技術は他社から買う、オープンソースのコードを採用(そして自社の技術をオープンソースで公開)してでも構わない、それを用いた利便性や気持ちのよさをスマートに提供することにある。これはまさに、90年代のアップルが忘れていた“Rest for Us”の精神ではないだろうか?
Back to my Mac は そうしたアップルらしさの一つ──今頃、Expose'やファストユーザースイッチを模倣して悦に入っているディストリビューションには絶対真似のできない──アップルがアップルであることを示すにふさわしい機能であろう。
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