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薄型化の背景に、培ったレンズ技術――LUMIX2007年春モデル発表会

2007年01月31日 22時00分更新

文● 編集部 小林久

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松下電器産業(株)(パナソニック)は30日、デジタルカメラ“LUMIX”シリーズの新製品6モデルを発表した。価格はすべてオープンプライス。

LUMIX2007年春モ デル

発表会から。モデルが手にしているDMC-TZ3(写真上)とDMC-FX30(写真下)が、ラインアップの目玉だ

注目は薄さ36.7mmで、光学10倍ズームレンズを搭載した『DMC-TZ3』。本体が小型化したほか、同社が積極的に進めている“トリプルぶれ補正”(ジャイロ、高感度、動体検知)や“広角28mm撮影”にも対応した。

また、売れ筋ラインであるスタイリッシュコンパクト機(LUMIX FXシリーズ)には、DMC-FX07の後継で22mmとさらに薄くなった『DMC-FX30』も追加された。スタイリッシュコンパクトのカテゴリーには、FXシリーズの従来機と同等の携帯性を持ち、価格を抑えた『DMC-FS1』も追加されている。

これ以外にも光学12倍ズーム&EVF搭載の“LUMIX FZ”シリーズ、単3電池駆動に対応した“LUMIX LZ”シリーズ、“LUMIX LS”シリーズの新モデルも登場している。これらの製品の詳細に関しては、別記事にまとめたので、こちらも参照してほしい。

DMC-TZ3
薄さ36.7mmで光学10倍ズームを搭載した“旅カメラ”
予想実売価格:4万7000円前後、3月9日発売
DMC-FX30
DMC-FX07の後継製品。操作性の改善し、本体デザインもブラッシュアップ
予想実売価格:4万円前後、2月22日発売
DMC-FS1
DMC-FX30の下位となるスリムモデルだが、バッテリー寿命はCIPA測定基準で370枚とFX30を上回る
予想実売価格:3万円前後、2月9日発売
DMC-FZ8
DMC-FZ7の後継機。EVFと光学12倍ズーム搭載。ISO 3200相当の高感度撮影やRAWモード、11点AFなども新搭載
予想実売価格:5万円前後、2月9日発売
DMC-LZ7
DMC-LZ5の後継機。単3電池駆動に対応した6倍ズーム機。1プッシュで焦点距離を変えられる“イージーズーム搭載”
予想実売価格:3万3000円前後、2月9日発売
DMC-LS75
DMC-LS2の後継機。単3電池駆動に対応した光学3倍ズーム機
予想実売価格:2万5000円前後、2月9日発売


コモディティー化の波にどう対処するか


本日東京・有明のパナソニックセンターで開催された製品発表会には、同社パナソニックマーケティング本部 副本部長の平原重信(ひらはら しげのぶ)氏が出席した。

LUMIX2007年春モ デル

パナソニックマーケティング本部 副本部長の平原氏

発表会の席上で平原氏は「デジタルカメラの普及率が50%を超え、購入者の7割が買い換えや買い増しユーザーになっている」点を指摘した。LUMIXシリーズは2006年4~12月期に金額ベースで17%の国内シェアを示しており堅調。世界市場でも“グローバル10”(シェア10%)、年間800万台を目標に掲げ、昨年度(2005年4月~2006年3月)と今年度(2006年度)の比較で2~3%程度のシェア拡大が行なわれている状況だという。

しかし、デジタルカメラ市場はすでにコモディティー化が進行している。かつては日本企業の独壇場であった撮像素子などのキーデバイスも韓国/台湾企業が台頭し、安価な製品をリリースしている。ローエンド機では国内メーカーのブランドを冠していても実際には海外メーカーのOEM製品、というケースも増えている。純国内製と言える製品の割合は確実に減りつつあるのが現状だ。かつてはOEM生産でも国内メーカーから供給されるケースが多かった。

パナソニックは、LUMIXシリーズの強みとして、折に触れて“垂直統合モデル”を掲げてきたが、自社の強みある技術を製品パッケージにうまく盛り込んでいくという姿勢は、今回の製品にも生かされている。例えば、薄型の本体を実現するのに不可欠なコンパクトな光学系は、ガラスプレスによる非球面レンズ製造(ドロドロした状態のレンズ材料を型押しして作る製造方法)でトップクラスの力を持つ同社の技術があってのものだ。

例えば、沈胴式の光学10倍ズームを搭載したDMC-TZ3には“コンタクトレンズ並み”と言われる超薄型の非球面レンズ、高い加工精度が必要な高偏肉比・凹メニスカス形状の非球面レンズ”などを新開発した。また、広角28mm相当の撮影が可能でありながら、22mmと薄い本体を採用したDMC-FX30では、6群7枚のレンズのうち大半(5枚6面)を非球面レンズにするという他社ではあまり聞かない豪華な構成のレンズモジュールを使用している。

パナソニックの“LUMIX”シリーズは“光学式手ぶれ補正”という機能を市場に認知させた。ここ数年はこの“手ぶれ補正”を始めとして“高感度撮影”“顔認識”などが、撮影の失敗確率や利用シーンが大きく変わる機能として、消費者の選択を左右していた。しかし、今後は、こうした“あるか、ないか”の差別化が難しい時代になるのは必至だろう。その一方で、国内メーカーは、製品の価格が下がらない独自の付加価値を模索していかなければならない。

LUMIX2007年春モ デル

周辺落ちの少ない高いレンズ性能もウリのひとつ

LUMIX2007年春モ デル

光学10倍ズームを実現したTZ3のレンズ構成

LUMIX2007年春モ デル

実を結びつつある垂直統合の成果

それはデザインや携帯性かもしれないし、画質や使いやすさかもしれない。製品担当者の説明では、こうした付加価値の提供にパナソニックが培ったレンズ製造技術は大きく貢献するはずだという。いずれにしても、今後重要になってくるのは、技術をどうパッケージに生かすかという部分である垂直統合、国内生産に愚直にこだわってパナソニック。いままさにその実がコンパクトデジタルカメラの分野で、結実しようとしているのかもしれない。

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