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メタ、アップルというより“来るべきグーグル”対抗? 「Horizon OS」戦略の狙い

2024年04月25日 07時00分更新

文● 西田宗千佳 編集●ASCII

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アップルというより「来るべきグーグル」対抗?

 ではこれらの条件を考えたとき、メタと他のプラットフォームとの競争はどうなるだろうか?

 現実問題として、当面大きな変化はないと考えている。

 アップルは高品質な製品を作るが、明確なウォールド・ガーデンモデルであり、自由度はメタほど高くない。それは現状でも同じだが、Horizon OSとHorizonストアではそれがさらに明確になる。デバイスパートナーを広げるのも、1社でエコシステムを作るアップルに対し、より幅の広い顧客層にアピールすることで対抗する、という話だろう。

 要はWindowsとMac、AndroidとiPhoneで起きていることが、XRデバイスでも再現されるわけだ。

 ただ、違うのは、Androidに相当するプラットフォーマーが「もう1つ」出てくる可能性が高いことだ。グーグルはサムスンと共同でXRデバイスを開発中で、そこに新しいXRプラットフォームを構築する。OSのコアがAndroidであるという意味も含め、メタのやり方に近くなる。

サムスンのイベント「Galaxy Unpacked 2023」(2023年2月)より

 グーグルがどれだけの味方をつけてプラットフォームを構築する気なのかは判然としない。ただ、スタートの段階で、何年もじっくりとビジネス環境を熟成させてきたメタほどの広がりを持てるのかは疑問がある。

 だとすれば、メタが取りうる策は「グーグルよりも先に幅を広げる」こと。そう考えると、Horizon OSを軸とした施策は、アップルというよりもグーグルを意識したもののようにも思える。もっとも、初期に考えていたのはグーグル対策ではなく、PICOなどの中国系企業対策だったのかもしれないが。ただ、PICOなどは以前に比べてビジネス展開をスローダウンさせており、現実的な競合は「アップル」「グーグル」と考えていい。

 グーグルはGoogle Play Storeを持っており、ここが最大の差別化点になる。メタにもストアを提供することになればおもしろいが、それはちょっと望めそうにない。この点は展開を注目しておきたい。

 グーグルに懸念点があるとすれば「堪え性」だ。XRには何度も取り組んでいるが、サービスや製品展開に不調な点があるとすぐに止めてしまう。

グーグル「DayDream View」2016年から始まり、2020年にサポートを終了した

 XR業界は「まだ」絶好調ではなく、大きな収益を上げるまでにはまだ最低数年はかかる。メタは時間をかけ、ようやく、アメリカの若者を中心にユーザーベースを築きはじめた。アップルは初期にうまくいかなくても、「ここぞ」というジャンルでは粘り腰で改善を続けてシェア確保まで続ける。グーグルの次の展開は、粘り強く続けるものになるだろうか。

 

筆者紹介――西田 宗千佳

 1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。取材・解説記事を中心に、主要新聞・ウェブ媒体などに寄稿する他、書籍も多数執筆。テレビ番組の監修なども手がける。主な著書に「生成AIの核心:「新しい知」といかに向き合うか」(NHK出版)、「メタバース×ビジネス革命 物質と時間から解放された世界での生存戦略」(SBクリエイティブ)、「ネットフリックスの時代」(講談社)、「ソニー復興の劇薬」(KADOKAWA)などがある。

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