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磨き抜かれたPUREモードに注目!

デノン、超売れ筋サウンドバーの新製品「DHT-S218」を発売

2024年04月25日 11時00分更新

文● ASCII

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DHT-S218

 デノンは4月25日、サウンドバーの新製品「DHT-S218」を発表した。2019年発売の「DHT-S216」、2022年発売の「DHT-S217」に続く、エントリー向け新モデル。価格はオープンプライス、店頭での販売価格は3万6300円前後になる見込み。5月17日の発売を予定している。

DHT-S218

オーディオメーカーが作るサウンドバーを再定義したデノン

 DHT-S216はサウンドバー市場に新風を送り込んだ製品だった。まず機能をHDMIのARC/eARCを使った再生に絞ったシンプルなものとし、一方で音質の肝となるアコースティック部分の強化に注力した。さらにHi-Fiオーディオ機器にあるような「PUREモード」を搭載し、バーチャルサラウンドの実現に利用するDSP処理をスキップして、素の高音質に触れられるようにした。音質の監修は、デノンブランドの高級機も手掛ける山内慎一氏が手掛け、デノンとして一貫性のある高品位なサウンドが楽しめた。

DHT-S218

DHT-S218をテレビラックの上に置いたところ

 現在は多くのテレビが多彩なコンテンツ再生機能を持っているので、サウンドバー自体の機能は極力シンプルにし、HDMI(ARC/eARC)経由で受け取ったテレビの音声信号を高音質に再生するスタイルが主流になっている。しかしながら、当時のサウンドバー市場は過渡期でBlu-ray Discプレーヤーや各種ストリーマーなど外部機器を接続するハブ機能を持たせたり、サウンドバー自体が多機能なネットワークプレーヤーとして機能させたりなど、AVアンプ的な高付加価値路線も多く見られた。高音質をうたう機種は、それに見合った多機能を備え、結果、高価格になるのが普通だったのだ。

 そんな中、DHT-S216は入力を基本はテレビの音のみに絞り込む代わりに、音の部分にこだわって低価格を実現。その音もバーチャルサラウンドなど小手先の技術に頼るのではなく、Hi-Fi機器メーカーの発想で改善し、オーディオ機器として使えるものを目指した。必要最小限の機能に絞り込んで価格を抑える一方で、サウンドバーもオーディオ機器なのだから、そこの部分にコストと労力を掛けるというコンセプト。映画だけでなく、音楽にも適したサウンドバーとなった同機は市場でも支持され、デノンがサウンドバー市場でも存在感を示すきっかけを作った。

 2022年のDHT-S217では、このコンセプトがさらに深化。特に音質面での強化が進んだ。基本的な構造は踏襲しつつ、Dolby Atmos対応になり、Dolby TrueHDやリニアPCMの7.1chなどロスレスのサラウンドフォーマットも扱えるようになった。SoCの性能も強化され、Netflixなどで配信されている最新/最先端のコンテンツも機能も装備。

メイン基板部

 コンテンツを存分に楽しめる“エレクトロニクス面での完成を果たしたモデル”と言えるかもしれない。

5年間のノウハウが蓄積した三世代目の製品

 それでは、最新のDHT-S218では何が変わるのか?

 DHT-S218のコンセプトは「三」だという。これはDHT-S216から搭載しているPUREモードが象徴する「アコースティックデザイン」(素で音のいい商品を作ること)、DHT-S217で強化して完成した「エレクトロニクスデザイン」(電源やチップの強化)、そしてDHT-S218で磨いた「サウンドデザイン」という3世代にわたって取り組んできた内容が完成したことを示している。

 実はハードウェア面での改良点はほとんどない。その代わりに「音楽を奏でるサウンドバー」を完成させることを目的とした音の改善、つまり、サウンドのチューニングに大きな時間が割かれた。オーディオ機器としてのサウンドバーには常に制約がある。それはテレビ画面を遮らない、幅、奥行き、高さといったサイズの制約、コストの制約、そして開発期間の制約だ。これを乗り越え、サウンドマスター入魂の「音楽の一番伝えたいことを奏でられる製品」が完成したという。

 DHT-S217で完成したスピーカーとアンプを用い、音質検討に時間を掛け、ようやく「奏」のサウンドバーが完成。サウンドマスターの時間×情熱を反映した「三」世代を経た完成度を提供できる製品となった。楽曲の持つエッセンスをより濃く伝え、台詞に込められた思いをより濃く伝え、効果音の臨場感や空間表現をより濃く伝え、テレビのしたからだけでなく、全体の空間を再現できる音ができたとしている。

 また、LE Audioの搭載によって、スマホからBluetoothで音楽を再生する際の高音質化と低遅延化、ゲーム向けの機能であるVRR(Variable Reflesh Rate)やALLM(Audio Low Latency Mode)への対応による、ゲームの世界観への深い没頭なども特徴となる。

左右のブルーがアクセントになり、なかなかおしゃれ

 機能面では、DHT-S218はDolby Atmosやロスレスサラウンドに対応したサウンドバーとなる。

DHT-S218

上部のボタン

 Bluetoothの次世代規格である「LE Audio」への対応、ゲーム向けの機能であるVRR(Variable Reflesh Rate)やALLM(Audio Low Latency Mode)への対応といった特徴は持つが、ユニット構成や外観については基本的には同じだ。基本と書いたのは、サウンドバーを覆うメッシュ素材の透過率が少し上がったり、左右のポートのカラーリングが変わっているためだ。

DHT-S218

ウーファーは下側に向けられている。

 グリルカラーは濃い新色となり、材質も変更。音の透過率(薄さ)が上がっているという。これが抜けの良さにつながっている。すでに述べたように、デジタル回路、電源についてはDHT-S217(やその上位であるDHT-S517)と同等。ドライバーは合計6基を搭載する。フット形状もDHT-S216からDHT-S217に変わった際に改良されたが、それと同様だ。

DHT-S218

側面が青くなっているのに注目

DHT-S218

 デザイン面では側面のカラーが青くなったほか、グリル色なども変更しているが、サイズなどは従来機種を踏襲している。操作性の面では、HDMIケーブル1本で気軽に使い始められるほか、トグルのない(2回以上押すボタンがひとつもない)、リモコンも特徴となっている。

 接続端子はHDMI入力、HDMI出力(eARC対応)、アナログのサブウーファー出力、光デジタル入力、アナログのAUX入力など。Dolby AtmosやMPEG-4 AAC対応。MOVIE、MUSIC、NIGHT、PUREの4モードを備える。PUREモードはすでに述べたように音楽再生向けのモードで、DSPによるデコード後、サウンドモード/バーチャルサラウンドのための処理をスキップする。

DHT-S218

入力端子、eARC対応のHDMI出力のほか、光デジタル入力やアナログ入力、HDMI入力も1系統備えている。

前世代からの音の変化は? 高解像度で切れのある低域に

 デノンの試聴室で、全モデルDHT-S217との比較もできた。

 まずCD音源をPUREモードで再生するデモでは、テイラー・スウィフトの「We are never ever getting back together~私たちは絶対に絶対にヨリを戻したりしない」を使用。再生音はDHT-S217でも十分に良く、スピーカーやアンプの素性の良さを感じ取れた。

 しかし、驚いたのはDHT-S218のサウンドだ。音に関する部分は、ほぼ変わらないというのに、よりハイグレードな別の機種に変えたのではないかと思えるほど、透明感や抜け感がまったく違っていた。低音のパンチ感、切り込み感、沈み込み方なども全然違う。また、音数が一気に増える0:43付近からは音が印象的かつ大きく左右に広がる。楽器音の色彩感が増すし、弱音と強音の対比も楽しかった。

 次にMUSICモードとPUREモードの違い。MUSICモードでは低域の量感が増して、音も派手に。かつ広く広がる。パーティー的な楽しさを感じさせ、グルーブ感的なものをより強く演出する形だ。記者としては、リビングで音楽を楽しむ、オーディオファン的な使い方ではPUREモードがいいと感じたが、これは2:25付近のテイラー・スウィフトの声などがリアルだし、空間の響き(部屋の音とか)も良く分かるからだ。ただ、MUSICモードも鮮やかで分かりやすく音楽の良さを伝え、華美なほどの演出がないのはいいところだ。

DHT-S218の内部構造

DHT-S218

複雑なダクトを通じて、サイドにも音を届ける。

 映画「グレイテスト・ショーマン」の冒頭部分も聴いた。映画ならではの足音、残響、ステッキといった効果音、そしてボーカルの美しさが聞きどころだ。こちらも、DHT-S218では解像感や抜け感の良さに加えて、ワイドレンジ感、低域の切れ感が上がり、明瞭さが増す印象。DHT-S217で多少感じたボーカルが伴奏と混濁する感じや少しこもってしまう感じがまったくなくなり、声と伴奏がきれいに分離する。ちなみに、MOVIEモードは低域の量感が盛られ、かなり迫力が増す。映画館の雰囲気を伝えるため、声の近さ、低域の強調感や深さなどがマシマシになるが、過度な感じにはならない。DHT-S218は外付けのサブウーファーがない一体型の機種だが、スケール感は非常に高く、当然のようにテレビスピーカーでは出しにくい迫力がある。アクション映画などでは良いモードだ。

DHT-S217

DHT-S217のスケルトンモデル。色や質感が多少変わってはいるが、ほぼ同じ構造でここまで音の差が出ることには驚かされた。

 DHT-S217もDHT-S218もサウンドマスターの山内氏が手掛けた機種であり、基本的な内容も変わらないのに、ここまで違いが出るという点には本当に驚いた。

 デノンによると、Hi-Fi機器では1個1個のパーツにこだわって音質の調整ができるが、サウンドバーでは利用できるパーツの選択肢に加えて、コスト面での制約もあるため、サウンドマスターによる調整もパラメーターチューニングが中心になるという。一方でつなぐ機器が決まらないため、ニュートラルな調整が必要となるHi-Fi機器とは異なり、アンプもスピーカーも自前なので、全体のコントロールはしやすい。入口から出口までトータルの音作りができる点も特徴だ。

 PUREモードについては前モデルからやっているものだが、DHT-S216からDHT-S217への進化ではパーツの変更もあった。一方DHT-S218ではパーツの変更もないため、前進しかないという。この期間内にも、サウンドマスターの山内氏はさまざまな製品を手掛けており、その手腕の進化も感じられるできだった。「DHT-S217でも、まだ足りなかったところは何か」の認識から始めた、新しい視点のDSPパラメーター調整は、作品に没入したい、没頭したい。そう聞えないといけないというユーザーのニーズに確実に答えるものだろう。

 本機DHT-S218はコスト性能のバランスがよく、高音質なサウンドバーを探している人には強く勧められる製品だ。興味を持ったユーザーはぜひ店頭でDTH-S217との比較試聴もしてほしい。同じ部品なのになぜここまで変わるのか? というチューニングの妙味をきっと実感できるだろう。

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