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新車を買った情報2023 第123回

SUVと和解せよ

2023年11月12日 07時00分更新

文● 四本淑三

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昔の未来がちょっとある

 そんなことに加えてSUVとの距離がグッと縮まったのは、SJ5フォレスターに昔のシトロエンを思わせる部分があったから。今でこそ人目を忍んで暮らしておりますが、私は前世紀末までBX、CSと乗り継いできたシトローエン人でありました。以下、極めて狭い範囲にしか通じないマニアックな話になることをご容赦ください。

 「SRH OFF」って何? 何をオフにするんだこのボタン?

 実はフォレスターとの距離を一気に縮めてくれたのがこのボタン。調べてみると「ステアリング・レスポンシブ・ヘッドランプ」で略してSRH。これはステアリングを切った方向にヘッドライトの光軸が向くギミックで、同様の仕掛けを使ったクルマとしてはタッカーが有名ですが、私が知る限りこれを量産車に装備したのは1960年代のシトロエンDSが初めてだったはず。油圧でサスペンションやステアリング、ブレーキを制御するハイドロニューマチックシステムと相まって「未来からやってきたクルマ」と呼ばれた要素の一つでした。

 ところが日本ではヘッドライトが動くなどまかりならんということで、この機能は潰されておりました。同様のシステムを装備したSMなんかは、6灯ヘッドライトが4灯に改変されて、せっかくのカッコいい機能も見た目も台無し。まったく小役人ときたら。

 そんな曰く付きの昔の未来装備が、200万円台の大衆車にひっそり付いていたのだから驚きです。現在でもそこそこお高いクルマにしかない装備ですから、おおマジか、お前やるじゃん、ってなもんでした。世間ではこんなもん要らんなどと言う人もいるようですが、私は絶対にオフになんかしません。

 もう一つは「ステアリングアシスト」。アイサイトのプレ自動運転機能のようなもので、カメラで路上の白線を読み取り、コースから外れそうになると強制的にハンドルを戻してやるというもの。これも対衝突安全装置の付いた最近のクルマには装備されているものですが、10年前のこいつは動きは小さいものの結構グイッと強めに効く。この効き方、私には身に覚えがあります。

 それはシトロエンで言うところの「セルフセンタリングステアリング」であります。パワステを使って強制的にステアリングをセンターに戻し、軽く手を添えているだけで直進が維持できるという仕掛け。ちょっと切り足しているだけなのに起動して、意に反した動きをするのもそっくりで楽しい。

 そしてついでに燃費計。フォレスターにはこれでもかと言うくらい何パターンもの燃費表示画面が存在するのですが、そのうちの一つがこの円筒形のグラフィック。これがGSやCXの「ボビンメーター」にそっくりなんでありますな。シトロエンのは機械式のボビンが実際にクルクル回って速度を示すというトリッキーなものでしたが、このCGは残念ながらボビンは回らずオレンジの針が円筒上を行き来するだけ。それでも私はこれを見ているとつい和んでしまいます。

 思えばスバルはシトロエン同様、水平対向エンジン搭載の前輪駆動車を量産したメーカーでもありました。アイサイトのような先進的技術をファミリーカーに標準装備してしまうのも、ハイドロニューマチックを安価なGSにまで敷衍させた時代のシトロエンのように見えます。ただ大きな違いはスバルの運転支援システムは業界のリファレンスになり得たことです。

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